案件21「次作のダンジョンをご期待ください1」
打ち切りとかは無いですよ?
ある程度の読者様がいらっしゃれば(白目
ガーデンロードを出て北東へ進む中、俺達は野良の魔族達と遭遇してしまった。
それについては、あまり問題はなく解決した。
「『ハンド・ヒート』! 『ストーン・ウェイブ』!」
溶岩が鉱山地帯を流れて行く。
触れたものを高温で熱する魔法も、その石を細かく分裂させて雪崩にすれば、多くの魔族を巻き込むことができる。
同時に二つの“マテリアル”を起動することはできないまでも、順番に行使することは可能なのだ。
俺の毒の“マテリアル”を除けば、仲間のほとんどがダンジョン攻略向けと言える。
そのため、どうしても火力を重視しない傾向があった。
「さすがエントラ。賢者と呼ばれるだけのことはあるわ」
「賢者殿のおかげで、戦闘が楽になったでござるな」
パーティの火力不足を補って、参謀を努めてくれるのがエントラだった。
俺達の称賛を受けても、エントラは顔色一つ変えずに踵を返した。
「さぁ、もう少しですよ」
溶岩にユルクリーチャーが飲み込まれて消えたのを確認した。そして、土の“マテリアル”ダンジョンへと向かう道程へ戻る。
内心では、小躍りしたいぐらい喜んでいるに違いない。
俺の腰の裾を掴む手を、大きく振り回したい様子だからな。
捲れちゃうし、それでなくともボロボロの服が破れるから止めてね。
この道中に、文句を言ったのはアサガオだった。
「私、疲れたッスぅ……。確か、飛んで移動できる魔法があったッスよね?」
言われてみれば、確かにそんな魔法もあったことを思い出す。
『ターン・ホーム』ではなく、もっと自由の利く飛行魔法だ。『ターン・ホーム』と違って時間が経過してしまうが。
「風の“マテリアル”だったはずッスから、兄者は使えないんッスか?」
「すまないでござる。覚えれば使えなくはないでござるが……あまり使いたくないでござるな」
「なんでッス?」
便利な魔法を覚えない理由などあるだろうか。
もしかして、結構危険な魔法なのか? 空を飛ぶんだから、制御に失敗すると墜落するとか?
「うむ。今、拙者達は前から勇者殿、賢者殿、アサガオ、自分でござろう?」
そうだな。
それがちょうど、緊急時においてモアベターな隊列だ。エントラにはもう少し離れて欲しいが。
「もしその魔法を使う場合、自分、勇者殿、賢者殿、アサガオあたりが妥当ではござらんか?」
「もしくは、ユウガオ、アサガオ、エントラ、私って順ね」
目的地によって変わるぐらいだ。
魔法により仲間を牽引しなければならないので、ユウガオは必ず前になる。
「だからなんだって言うのよ?」
俺が訪う。
「アサガオのお尻が見れないでござる」
なるほど、それは真理だ。
当然、そんな発言をアサガオが聞き逃すわけない。
「……誤射させろッス」
良い笑顔だ。
「戦闘は終了よ。さっさと行くわよ」
「うがぁぁぁぁぁッ!」
相当のストレスが溜まっているみたいだな。
いずれ解消させてやろうと思いつつ、俺達はダンジョンへと辿り着いた。
軽いトレッキングを終えた俺達を待っていたのは、覆面の男と向き合っているダンの姿だった。
皆さんご存知、『謎の覆面探索者マスクメロ』である。
後でサインを貰っておこう。
しかし、ダンも大胆なものだ。ダンジョンの外で殺された場合、復活できずに死ぬというのに。
「ダンジョンの外でマスターと死合えるとは光栄だ!」
「これでこそ戦士の戦いであろう! さぁ、かかってくるが良い!」
戦士のぶつかり合いに水を差すのは申し訳ないが、こちらも都合がある。
ダンが死んでも変わりの魔族が派遣されてくるのだろう。その魔族が、俺の計画を手助けしてくれるとも限らない。
そうなったらもうリリシアのところへ行ってしまうか。
などと薄情なことを考えつつも、俺は二人を止めることにした。
「勇者様?」
「エントラ。それと皆も、とりあえず私に任せておいて」
エントラにはダンのことを伝えて居ないので、この行動を怪訝に思ったんだろう。
細かくは後で――当たり障りのない部分だけ――話すとしよう。
「もうひとかたは……」
俺を止めるつもりはないが、『毒使い』の秘匿を心配しているらしい。
「大丈夫よ。可能な限り隠してるわ」
一部にはもう知られていることだが、この世界に存在しないユニークスキルなんてそうそう見せちゃダメなんだよな。
エントラに合う前までは、無警戒に使ってましたけどね。
こうしている間にも、戦いの火蓋が切って落とされる。
「うらぁぁぁぁぁッ!」
「ハァァァァァァッ!」
裂帛の気合と共に両者が駆け出した。
ダンが袈裟懸けに“バスターソードⅡ”を振り抜く。対するマスクメロは、“戦斧Ⅲ”で下段からカチ上げるつもりだ。
ダンの“バスターソードⅡ”が圧し折られて、切っ先が地面に突き刺さる。トドメを刺される。可能性は低いが、命を取られずに勝敗が決する。
そうはならなかった。
「そこまでよっ!」
『!?』
“戦斧Ⅲ”の柄を踏みつけ、その勢いを持って“バスターソードⅡ”を足裏で受け止める。
ダンが俺に気づいて斬撃にブレーキを掛けたのか、それとも“爆蹴ズⅢ”の強度故か、戦いは止まった。
下手をすれば上と下からズッポリと行きそうな体勢だ。
「なっ……!」
「元勇者……何故邪魔をする?」
マスクメロやダンが戸惑うのは無視した。
まずサインから。
「マスクメロさん、後でサインくださいね。ダン、争いはダンジョンの中でやりなさいよ。私が困るから」
と思ったら、しまった! サインを書いて貰えそうな物を持ってきてない……。




