第14話 幼女の過去
「我と契約してもらう」
そう目の前の幼女は言った。
そして彼女自身のこと、彼女の過去を今から俺に話してくれると言う。
「この話を聞いてからでかまわん、聞き終わってから主がわれのことをどう思いどう感じそれでもなお我と契約したいというのであれば我は喜んで主を受け入れよう」
そう真剣な表情で答える。
「わかった聞かせてくれ」
俺も真剣な顔で一言そう言った。
多分だが話を聞き終わったとき俺は彼女の全てを受け入れるだろう。そんな気がした。
それから目の前の幼女は語り始めた自身の過去を・・・
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「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ドドドドドドドッッッ!!!
怒涛の声、蹄の音、金属同士がぶつかり合う音、乾いた空気、それに交じってこっちまで漂ってくる糞尿や血の匂い、そうこれは死臭だ。
今私は戦場のど真ん中にいる。
この戦争は種族同士の生存をかけた殺し合い。
異世界歴三十年四月一日のこと・・・
「魔導士様そろそろご準備の方を」
「ん、わかりました。それと私のことは魔導士様じゃなくてサリアーナでいいですよ」
「さすがに我が国の英雄であるサリアーナ様を呼び捨てにはできません」
「ん~そういうものですか?」
「はい、そういうものです」
「戦況は?」
「かなり危ういですね、わが軍は過半数を失い幹部の方々も負傷しており動けない状態、退路は断たれ逃げるすべもない、敵軍はこれを好機と見たか増援まで送ってきました」
「ふぅ~文字道理絶体絶命ってやつですか」
「恥ずかしながら・・・」
「この戦況を覆す一手はもうないのでございましょうか?」
「あります!」
私は絶対的な根拠と自信をもって力強く答えた。
それに対し先程から私と会話をしている執事服に身を包んだ初老の男性は流石ですといった様子で私の後ろに控えていた。
そうこれは戦争、この異世界であるユグドラシル・マグナで起きた世界を震撼させるようなそれこそ歴史の残るような大戦。
人族も魔族も獣人族もありとあらゆる種族を巻き込み世界各地で繰り広げられた醜き争い、そんな大戦の渦中に私、大魔法使いサリアーナはいた。
後に邪神と化し”漆黒”と呼ばれるようになる幼き少女の物語。
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今私の目の前には何千万の敵がいる。
勿論種族はまちまちだ。
我が人族の軍は壊滅寸前、この状況を打破しない限り人族に未来はない。
故にローランド王国の英雄である私、サリアーナが呼ばれた。
「さてと、まずは手始めに・・・」
「黒き眼は全てを見通し、汝が腕は勝利を掴まん、悠久の時を経てこの世界に顕現せし者、その者が歩けば台地が震え、声を発せば大海が割れ、その者が命じれば空をも漆黒に包ませる汝が真名は”カルター”」
「こ、これは!?」
「邪神です。召喚しました」
私は当たり前のように答える。
まぁ~普通の人からすれば神の一種である邪神を召喚するなどありえないことなのだが、私には造作もないことだ。
なんせすべての魔法において最強なのだから。
「——————————————————」
戦場に声なのかどうなのかわからないような無機質な音が響く。
それは完全に人がこの世のものが出せるような音ではない。
その音を聞いた瞬間敵軍は苦しみ始めた。
その隙に私は各自に指示を飛ばす。
「第一部隊は第三部隊を援護しつつそのまま撤退!」
「第二部隊は戦場の負傷者を担いで直ちに戦線離脱!」
「第五部隊はそれを援護!」
「第四、第六部隊は第七、第八部隊と合流!そのまま大隊αへと変更そのまま敵軍へ先行したのち殲滅!」
「残りの大隊は敵軍を各個撃破、余裕があるなら大隊αの撃ち漏らしを殲滅!」
「回復部隊直ちに戦場に赴き負傷者の手当てを、回復約一人につき戦士二人は護衛につけなさい!」
「それでは各自迅速な行動をお願いします!以上解散!!」
私はこの戦況での最善策を各部隊の伝令役に伝えすぐさま戦場に戻る。
そして私自身も召喚した邪神と共に敵部隊を屠っていく。
しかしながら敵の数が多い、なんとしても人族の軍が撤退する時間を稼がないと。
本来なら敵味方関係なく極大魔法をぶっ放せば即解決なんだけど、このローランド王国の英雄である私がそんなことをするわけにはいかない。
なのでとにかく今は邪神の召喚で時間を稼ぎつつできる限り敵軍の戦力を減らしながら自軍の撤退を行っている。
言葉で説明するのは簡単だが、実際にやってみるとなるとこれがまた難しい、まっ、私には造作もないことだけど。
そうこうしているうちに伝令兵が息を切らしてやってくる。
「大魔導士様全部隊の退却終了いたしました!戦場には敵軍しか残っていません」
「わかりました、では今から極大魔法を発動します、魔法部隊の準備は整っていますね?」
私は伝令兵にそう問いかける。
「はい、ご命令道理に準備は整っております」
伝令兵から元気のいい返事が返ってくる。
それを聞いて私はさっそく自分も準備に取り掛かる。
こんなこともあろうかと私が手塩にかけて育てた魔導士たちに頼んで極大魔法発動用の魔方陣を組ませていたのだ。
その場所に向かう。
伝令兵の言葉通りにそこには巨大な魔方陣がいくつも描かれていた。
私が彼女たちのもとへたどり着くと皆とても嬉しそうな顔で迎えてくれた、中には安堵して涙を流す子もいた。
そんな私の弟子たちにねぎらいの言葉をかける。
「みんな、ご苦労様準備は整ったみたいね」
「はい!サリアーナ様」
「よしよし流石は私の弟子たちだ」
「えへへへ~」
私の誉め言葉に皆嬉しそうだ。
実際私の今の年齢は12歳だ、そして弟子たちは当然私なんかよりも年上。
なら何故こんなにも幼い私が慕われているのかと言うと私が大魔導士だからである。
この世界では年齢など関係ない。
実力あるものが偉く、そして上に立つ。
それがこの世界の全てだった。故にこんな幼い私でも師として仰いでくれる子たちがいる。
だからこそこの戦争は負けられない何が何でも負けられない。
私の可愛い弟子たちを守るために。
私は覚悟を決めて魔方陣の中心に立つ。
「いよいよ始まるんですね、伝説が・・・」
そう私に話しかけてきたのは私の右腕でもあるカミラと言う若い女性。
年齢は18歳腰まで伸びた銀髪に黒の眼帯をしている。
体はよく引き締まって鍛えられているということが一目でわかる。
しかし出ているところは出て引っ込んでいるところはちゃんと引っ込んでいる。
いわゆるボッキュボン、ナイスバディと言うやつだ。
幼女体系の私からすればうらやましい限りだ。
私も彼女に一言だけ返す。
「そうだな私たちが伝説を創るんだよ」
そう決然とした眼差しで彼女を見つめる。
それに対し彼女もコクリとうなずく。
そして私は弟子たちに指示を飛ばす。
「我が弟子たちよ、よく聞け!今これより極大魔法を発動する。」
「しかしながら敵の戦力は増すばかりそんな中での詠唱は困難を極める、故に諸君らに命ずる我が詠唱が完成するまでの間近づく敵を排除せよ!」
『魔道は我にあり!!!!』
私の命令に弟子たちは魔導士たちに長年受け継がれてきた決意の言葉を口にする。
その言葉を受け私は詠唱に入る。
それと同時に敵軍は極大魔法を発動させまいと迫りくる。
それに応戦する我が弟子たち。
この後は私の極大魔法発動と同時に弟子たちは転移石でこの場を離脱する。
そして私を中心とした半径一万キロの中にいる敵は全滅。
魔力を使い果たした私は動けないのでカミラに担いでもらいながら一緒に転移する。
そういう手はずだ。
そして私は紡ぐ極大魔法を発動させるための言霊を。
この先に待っているであろう悲劇のために・・・




