第11話 少女達の心境(ルア・クリフィネア視点)
~ルア視点~
ドゴ――――――――――ン!!!!!
そんな轟音と共に誠様が巨大なドラゴンに吹き飛ばされてしまった。
何故吹き飛ばされたのか分からなかった。
だって誠様は作戦通りに屑身とかいう勇者の魔法を利用して間違いなくあのドラゴンに当てたはず。
なのに何故七聖滅失魔法級の威力を誇るヘルフレイムを受けてなお平然と立っていられるの。
訳が分からない。そんな意味のない思考が私の頭の中をぐるぐる回っていた。
そうだ、それより今は誠様の安否を確認しないと。
「誠様・・・」
私は自分の愛するご主人様の名前を無意識のうちに口にしながら観客席から闘技場の中に飛び降りようとする。
しかしそれは誰かの手によって止められた。
「待ちなさい。」
そんな声と共に私の腕をつかむ人がいた。
それはとても長く腰まで伸ばした綺麗な黒髪で、その凛とした顔立ちと賢さを感じさせる黒く澄んだ瞳のせいか年齢よりも少し大人っぽく見える。
私は混乱のせいで一瞬誰かわからなかったがその人が誰なのかすぐに理解した。
彼女は緋山パーティーの一人で、その表情一つ変えずいつも冷静沈着なことから「氷結の魔女」という二つ名まで付いた・・・そう名前を霧島雅。
なぜ彼女がこんなところに?
突然のことに私の思考は一瞬停止しかけるが今はそんな場合ではないと思い、つかまれている腕を振りほどこうとする。
「は、放してください!早くしないと誠様が」
そうこうしてるうちにドラゴンが誠様にとどめを刺さんと一歩また一歩と確実に近づいている。
このままでは間に合わないと思った私は覚悟を決めて腰の剣を抜こうとするしかしそれも霧島雅の次の言葉で思いとどまる。
「彼なら大丈夫。」
彼女はそう一言静かに言い放つ。
私と彼女のほかに私たちのやり取りを見ている者はいない、みな闘技場にの光景にくぎ付けだ。
「とにかくここは我慢して。そしておとなしく見てて。」
「彼を・・・信じなさい」
彼女は有無を言わさぬ物言いで私にそう告げ、その後は足早に去っていった。
私はと言うと誠様が心配で今にも飛び出していきそうになる衝動を必死に抑え誠様を信じて見守ることを決めた。
もしもの時は、この命に代えても誠様を・・・
~クリフィネア視点~
私は決闘が始まった瞬間何が起きたのか理解できなかった。
なぜ屑身様が召喚獣を?しかもこの王国の軍事用秘密兵器No5召喚獣:爆炎竜ガドラードを所持しているの?
この国にはNo1からNo5までの軍事用秘密兵器である召喚獣がある。それは大国や魔物の脅威から自国を守るための言わば防衛用の兵器なのになぜその防衛用の軍事用兵器が彼の手に・・・
と、とにかく今すぐにでもこの決闘を中止せねば!
早急に手を打たないと誠様が殺されてしまう。
そう思い決闘の中止を宣言しようとしたときに横から声がかかった。
「中止はなしですクリフィネア」
私は何事かと思い声のする方に顔を向けてみればそこには口元を吊り上げ愉快そうに笑うこの国の第一王女、そして私の姉でもあるララフィネアの顔があった。
私はこの状況で何を言っているのかわかっていない自分の姉に心底腹が立つが今はそのようことも言ってられないので冷静に問うてみる。
「何故ですか!姉様。このままでは誠様が死んでしまいます。」
「それに、いくら勇者様でも何故我が国の兵器を所持しているのですか!」
「姉様なら何か知っているのではございませんか?答えてください」
と言うか何故この状況下でお父様もお母様も何も意見なさらないの。
「勇者様に我が国の兵器を与えたのは他でもないこの私よ!」
そう私の姉は答える。
「なっ!?」
「なぜそのようなことを!これは立派な王国反逆罪に当たります!」
「王国憲法第3条軍事用秘密兵器の無断使用禁止条例に違反します!!」
私のその反論に姉様は自信たっぷりに答える。
「”無断”ならね・・・」
「ちゃんと現国王様の許可はいただいているわだから何の問題もないわよフフッ」
え?どういうこと訳が分からないわ何故お父様がこんなことを。
「それは本当ですかお父様!」
「ああ、誠だ真実だ私は許可した。」
そうはっきりとお父様は答えた。
それに対しお母様も異論はないようである。
「な、なぜ」
私は個人の決闘にしてはあまりにも行き過ぎているこの状況に頭が追いつかない。
勿論、決闘に際して召喚獣を使用してはいけないなどの取り決めはないしかし・・・
あの召喚獣は仮にも王国の軍事用秘密兵器それをなぜ...
「お父様、召喚獣でも軍事用秘密兵器ではやり過ぎです!今すぐ中止せねば取り返しのつかないことになります!」
私は必死に反論する。しかしそれも次の言葉で無駄だとわかる。
「今更この決闘を中止になんぞしてみろ国民が不満を抱くぞ。ただでさえ魔王の脅威におびえ続ける毎日にのせいで娯楽がほとんどなくなり国民が不満を抱かずにはいられないこの状況で今この決闘を中止してみろどうなるかは考えなくてもわかるだろう。」
「それになにも心配することはないこの闘技場には決壊が張ってある、故にこの闘技場から一歩外に出れば我々が用意した変わり身の人形に全てダメージがいき当の本人は無傷だ。」
そうお父様は答える。
変わり身の人形とは持ち主の傷や怪我などを肩代わりしてくれるという魔道具の一つだ。
だからなのだろうお父様もみな安心して決闘を見ている。
違うみんな何もわかっていない!魔法や魔道具に詳しい私ならわかる変わり身の人形は確かにダメージを肩代わりしてくれるだろうであれば今の状況は私にとってとてもおかしなものに見える。
現に今もダメージを肩代わりしてくれているはずなのに誠様の体には無数の傷が残っている。確かにお父様は闘技場から一歩外に出ればきれいさっぱり傷はなくなるといったがあくまでもそれは重傷の場合だ。
怪我が大きい程治りも遅い、だからもともとあの魔道具は結界を展開しそこから出れば傷も一瞬にして治るという決闘用の仕組みになっている。
しかしあの道具にはもう一つ仕組みがあるそれは小さな傷程度なら決壊の中にいても自動で治るという仕組みだ。
それは以前もっと長く戦っていたいとのどこかの戦闘狂からの要望で追加した仕組みだ。
だからあの程度の傷が治っていないということは誠様の魔道具は機能していない。
まずい本当にまずいこのままでは本当に誠様が死んでしまう。
私はそのことを伝えようとお父様のもとへ行こうとすると突然さっきまで黙っていた私の姉様が突然口を開いた。
「余計なことはしないで頂戴もし今あなたがやろうとしていることをすれば即座にあそこで戦っているクソ勇者を殺すわよ」
そのように小声で私に脅しをかけてくる。
「な、なにを言ってるんですか姉様誠様を殺す?一体どういうことですか?」
私は姉様が何を言っているのかわからなかった。
「これを全部仕組んだのは私よ全部知ってる、魔道具の仕組みのことも今あのクズ勇者の魔道具が機能していないことも、ね・・・」
私はそれを聞いた瞬間言い現わしようのない怒りが全身を包んだ。
しかしそれも一瞬で抑えなくてはいけなくなる。
「クリフィネア、だから言ったでしょ余計なことはしないで頂戴?じゃないと彼本当に死んじゃうわよフフッ」
我ながらなんて最低な姉だろうと思った。
「私はねあの黒川誠とかいう勇者が気に食わなかった弱いくせに何の能力もない無能のくせに訓練ばかりはクソ真面目に受けてそれにこの決闘に勝てば緋山様と一緒にダンジョンに行くのでしょう?」
姉様はそのように私に問うてくる。
「え、えぇ確かそんな約束をダスト団長としていたと小耳にはさみました。」
しかしそれが何だというの?わけがわからないわ。
「気に入らないのよ弱いくせに緋山様の足を引っ張るだなんておこがましい。どうせダンジョンに行ってもすぐに死ぬだけですわ下手をすればあいつのせいで緋山様にまで被害が及ぶかもしれませんしね。」
「だからここで始末しておこうと?そういうことですか姉様!」
私は本気で怒っていた誠様はこの一週間本当に死に物狂いで訓練をしていたそれこそ常人では不可能に近い程の無茶な訓練の仕方だった。
私だって最初は止めようと思い声をかけたが彼は言った。リア様を守りたいんだど。
たった一人の女性のためにあそこまでできる殿方は少ないだろう。
だから私も誠様を応援することにした。陰ながらですけど・・・
正直誠様は他の人は少し変わっていた。
他の勇者様達は俺が魔王を倒すからその暁には俺の女になれだなんていう人もいた。
他にも自分のメイドに酷いことをしている勇者様もいた。
しかしこの世界ではそれが当たり前なのだが私にとってはそれは当たり前ではなかった。
――――――――――――
私は元奴隷だ。
今私がここにいるのは養子としてお父様に引き取られたからだ。
このことを知っているのは私とお父様そしてお母様しかいない。
私は本当の家族ではないのです。そして元奴隷であるので勇者様方のメイド達の気持ちも痛いほどわかります。
ですから自身のメイドに酷いことをしている勇者様方とは中々打ち解けることはできませんでした。
しかし誠様だけは違いました。たとえ奴隷だとしても自分と変わらず接しているお姿を見て好感を持ちました。
確かに最初はそれだけでしたが次第に誠様のことを目で追うようになりました。
そのころからでしょうか私は自分の気持ちに気づきました。
私は誠様のことが好きなのだと。誠様なら私が元奴隷だと打ち明けても変わらず接してくださると思ったから。
しかし誠様にはすでに心に決めた人がいると知り私は身を引くことを選びました。
しかし身を引いたからと言ってこの気持ちがなくなるわけではありません。
今私は心底腹が立っていますしかしこの状況どうしたらと考えているといきなり轟音と共に観客たちの熱狂が私の耳に届いてきました。
どうしたのかと闘技場の方に目をやると誠様が瓦礫の下敷きになっていました。
その瞬間私の体は勝手に動きました。もちろん誠様を助けようと闘技場に降り立とうとしたのですがそれを誰かに止められました。
「お待ちくださいクリフィネア王女」
そう声をかけ私を引き留めたのはダスト団長だった。
「何故お止になるのですかダスト団長!」
私は軽くパニックに陥っていた。
「落ち着いてくださいクリフィネア王女。いま貴方が出ていくのは非常にまずい状況です。」
ダスト団長は剣呑な顔つきで周囲を警戒しながら私にそう言ってくる。
「どういうことですかダスト団長?」
私は聞き返す。
自分で聞き返してからすぐに気づいた・・・
「殺気ですか・・・」
私が感じ取った殺気はとても小さなものだった。それこそかなりの実力者でない限り見抜けないようなわずかな殺気。
瞬間私はこの殺気の真意に気づく。
そう、この殺気は誠様に向けられたものだ。
今までの状況から察するに姉様が放った刺客なのは間違いないだろう。
とことん誠様を殺したいらしい。
我が姉ながらなんと下劣な。
もしここで私が余計な行動をとれば即座に潜んでいる刺客たちが誠様の命を奪いに来るのは目に見えている。
しかし今の私にはどうすることもできない、ただ誠様の無事を祈るしかないのだ。
「申し訳ありませんクリフィネア王女」
この状況で何もできない歯がゆさを感じているのは私だけではなかった。
苦虫を噛み潰したようにダスト団長は私に謝罪する。
ダスト団長はいつか私に話してくれた、黒川誠は今でこそ何の力もない弱い存在だが彼は将来、誰よりも強くなると。
その時、私はダスト団長の言葉がとてもうれしく感じられた。
だって自分以外に彼の内に秘めたる可能性を見出したのだから。
「信じましょう誠様を。」
私はダスト団長にそう言った。
「はい」
私の言葉に団長も覚悟を決めて一言うなずく。
大丈夫。必ず誠様はこの決闘に勝ってみせる。私はそう信じています。
しかし、もしもの時は私の命に代えても誠様を・・・
「ぐっ、かはっ!」
空気と共にのどに詰まっていた血を吐き出す。
自分はどれくらい気を失っていた、あいつはどうなった・・・
それよりもなんだこの変な感覚は、さっきまで何か夢を見ていたような・・・
ダメだまた意識が・・・
その時、俺はまだ気付いていなかった自分の体にまとわりつく無数の影の存在を・・・




