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零度優 #1〜記憶にない姉弟〜

「想定外の事が起きて戸惑うのはわかるが、その様な状況だからこそ今は争っているべきではないと我は思うのだが」

「魔王を倒すことは何よりも優先するように言われたけどこんな事になったら一度きゅうせんをするしかないわね」

勇者は魔王の提案に納得して互いに剣だったモノを降ろした。

「ところで勇者」

「きゅうせんをしている間はそう呼ばないで。わたしはレイド・ユウって名前があるから」

「貴様がそう言うのなら遠慮せずにそのように呼ばせて貰おう。改めてユウよ、ユウにとって我はなんだ?」



「倒すべき敵」



ユウはそう言おうとしたが、ある記憶が邪魔をしてその言葉を発するのを躊躇させた。

「どうした?」

「わからない。魔王が、あなたがわたしの敵なのか今のわたしにはわからない」

「我もユウと同じ気持ちだ」

つい数分前まで殺しあう仲だった二人の気持ちを変えたのはユウと魔王の記憶にない自分の記憶だった。

「あなたはわたしの何?」

「ユウは我の何だ?」

「わたしはあなたの姉」

「我はユウの弟だ」

二人の記憶にない記憶で二人は勇者と魔王ではなく、姉と弟の関係だった。

「わたしに魔王の弟はいない」

「我に勇者の姉など居らぬ」

一分にも一時間にも感じられる一秒の沈黙が二人を襲った。

「何故黙る」

「そっちこそ」

沈黙はあと二秒続いた。その沈黙を解いたのはユウの腹の虫だった。

「空腹なのか?」

「あなたを倒したらお腹いっぱいご馳走を食べようと思っていたから」

「仕方のない姉だな。我が何か腹の足しになるものでも作ってやろう」

記憶にない記憶にはこの家の間取りも記憶されていてその記憶に沿って魔王は台所に向かい、記憶にない買った記憶のある食材で簡単な料理を作り数十秒ごとに腹の虫を鳴らすユウに箸と一緒に差し出した。

「毒とか入れてない?」

「今は休戦中だ、ユウを殺すつもりなどない」

ユウは魔王であり弟の言葉を信じて魔王の作った料理を口に運んだ。

「うっ」

ユウは唸った。その唸り声に魔王は僅かに動揺した。

「うまい、じゃなくて美味しいよ。あなた料理が得意なのね」

ユウの記憶にない記憶の中に魔王の料理は美味しいという記憶があったが、実際に食べるまでユウはその記憶を疑っていた。

「ユウは料理が苦手らしいな」

魔王は記憶にない記憶の中に記憶されていたユウに関する記憶を感じ取りそう言った。

「目玉焼きくらいなら作れるもん」

「我の記憶ではユウは目玉焼きを作ると毎回殻が入ると記憶されているのだが……」

「そ、その記憶は間違いじゃない?」

「その慌てぶりから見て本当に料理が苦手らしいな」

魔王は静かに微笑み小動物のように口いっぱいに料理を詰め込むユウを見た。


時計の短い針が10、長い針が12を示していた時、二人のいる家に二人の元いた世界では聞いたことのない『ピリリリリリ』という高い電子音が鳴った。

「もしもし、レイドです」

電話に出たのはユウだった。ユウと魔王がいた世界は手紙の交換による連絡方法が主流で電話というものは存在していなかったが、ユウは記憶にない記憶に記憶されていた電話の使い方を真似て受話器を取った。

『御影第三高等学校の者ですが』

ユウは御影第三高等学校という学校名は今初めて聞いたが記憶にない記憶の中にその学校名は記憶されていた。

『零度優さんと零度真央くんがまだ登校していないみたいなのですが』

「ちょっと待って下さい」

『もしかして優さんですか?』

相手の言葉を聞かず優と呼ばれたユウは受話器から手を離し、皿洗いをしている真央と呼ばれた魔王の所に向かった。

「今の音、電話とかいうものか?」

「そう、御影第三高等学校だって。って、そうじゃなくて。あなた、零度真央って呼ばれていたけど、どういう事?」

「我に名がないから本来の記憶とは別の記憶の中で我がそう呼ばれているのだろう」

魔王に根拠は無かったが、そんな気がしていた。

「そんなことより、まだ電話が繋がっているのではないか?」

「そうだった!」

ユウは急いで通話状態が続いている電話の所に戻っていった。

「呆れた姉だ」

魔王は洗い終わった皿を元あった棚の中に戻しながら呟いた。

「お、お待たせしました」

『優さん、もう授業は始まっているのですが、ご家族……ごめんなさい、真央くんの具合でも悪いのですか?』

「い、いえ。二人揃って寝坊してしまいまして。すぐに登校します」

『わかりました。学校に着いたらまず職員室に寄って下さい』

ユウは教師と思わしき電話相手の女性にそう告げられた。

「学校、行かなきゃいけないらしいな」

「勇者と魔王に勉強が必要だとは思わないけど」

「そんな事を言っているからユウはバカなのだ」

「バ、バカじゃない‼︎」

二人は本物の姉弟のように言い合いながら制服に着替えて、二人が通っている(ことになっている)御影第三高等学校に向かった。

次話は二人の初登校をお送りする予定です。


更新について

月に二、三度の更新になるかもしれませんが出来る限り早めの更新を目指します。


追記

タイトルの一部を変更しました。

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