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零度優 #2〜零度優の秘密〜

今回から話数の表示を無くしてみました。

まだまだ慣れないのでお見苦しい所もありますがお許しください。


次回からは本編で細かく語られない設定などを前書きに書こうと思っております。

「ねぇ、魔王」

家から御影第三高等学校に向かう途中の人通りの少ない通学路で優は隣を歩く元の世界で魔王と呼ばれていた弟を呼んだ。

「真央と呼べ。我の知らぬ記憶では魔王と呼ばれるのは腹が立つらしい」

「じゃあそう呼ぶ。その代わりわたしのことは『お姉ちゃん』って呼んで‼︎」

ユウと元の世界で呼ばれていた少女優は『お姉ちゃん』の部分を妙に強調させてそう言った。

「我も記憶通り優と呼ぶ。構わないな?」

「良いけど、一つだけ約束して」

「約束?」

「その、我って言うのはやめて。姉としてと、言うよりこれから一緒に暮らす身としては恥ずかしいから」

「優がそう感じるのならこれからは俺、と言うようにしよう」

真央は間違えた文字を消して書き直すかのようにあっさりと自分の一人称を変更した。

そんなやり取りをしているうちに二人の通う御影第三高等学校に到着した。

「職員室に寄るように言われたから一緒に来て」

学校に着くと自宅での頭のネジが抜けた様な発言がウソだったかのような振る舞いを見せた。

「姉の様に振る舞い俺をリードしてくれているところとても言いにくいのだが、職員室なら真逆の方向だ」

優は真央にそう指摘されると訓練された兵隊のように方向転換して職員室に向かった。その時真央の目に映ったのは顔を真っ赤に染め上げた優だった。


優の学年の学年主任に姉弟揃って説教を受け、俺たちは職員室を出た。

「それじゃあ、俺はこっちだからまた放課後にな」

「うん、じゃあね」

俺の知らない記憶では優の学年と俺の学年では教室のある階層が違うらしく優の教室がある階層で優と別れたのだが、優はなんとなく寂しそうな表情をしていた。

何がそんなに寂しいのか、元々人間ではない俺にはわからないが。

「遅れました」

授業中だったので教室の後ろから入り授業の邪魔にならない程度の声でそう言うと、数十年前のこの世界で起きた出来事をその時代に生きていなかった少年少女に教えていた担任教師が人間の文字を書く手を止めた。

「零度」

担任教師が教室の後ろにいる俺を見て優の名字と呼ばれる名で、俺の名字にもなった名を告げると授業を受けていた少年少女も俺を見た。

「とりあえず座りなさい」

「はい」

俺は担任に遅刻届を提出し俺の席だと思われる空席に着席し、中断されていた授業を十分だけ受けた。

「おい、真央どうしたんだよ」

「零度くんが遅刻なんて珍しいよね」

授業が終わり昼休みに入ると少年と少女が俺のもとにやって来た。俺の知らない記憶では少年の方が山東博、少女の方は吉良冷利という名らしい。

「恥ずかしい話だが、姉弟揃って寝坊をした」

「お姉さんも来てるの?」

「おかしなことを聞くな。優もこの学校の生徒なのだから登校しているに決まっているだろう」

俺は人間の学生として正しいと思う答えを言ったはずだが、博と冷利は喜怒哀楽では表せない複雑な表情を見せていた。

「お前、何も知らないのか?」

「何のことだ?」

「あくまで噂なんだけど、零度くんのお姉さん、優先輩がイジメに遭っているって」

「優がイジメに?」

俺は自分の席から思い切り立ち上がり冷利に聞き返した。

イジメという言葉の意味は俺の知らない記憶から探すまでもなく魔王としての俺が人間に関する知識として知っていたが、優がイジメに遭っているという話は俺の知らない記憶を端から端までくまなく探しても記憶されてはいなかった。

「零度くん?」

冷利の声が聞こえた時には俺は教室を出て、何故だか優たち第二学年の教室がある北教室棟へと足を進めていた。




同時刻 御影第三高等学校北教室棟 第二学年女子トイレ

「あの、なんですか?」

優は五人の女子グループに囲まれていた。

優の知らない優の記憶ではこの五人はほぼ毎日のように零度優をイジメの対象にしているらしい。

「零度さん、お弁当忘れてるよ」

五人の中心に立つ最も派手な少女は優に弁当箱が包まれた可愛らしい弁当袋を持っていた。

優は登校用の鞄に弁当を入れてきた記憶はなかったがおせっかいな弟が入れてくれたのだとすぐに気がついた。

「お弁当はトイレで食べるものじゃないけど……」

「えっ? 何か言った?」

「だから、お弁当はトイレで食べるものじゃないって」

「零度さん、いつもここで食べてるでしょ?」

優は思い切り否定したかったが、自分の知らない記憶ではトイレで弁当を食べるのが日課だと記憶されているので否定出来なかった。

「ここに置いて置くから残さず食べてね」

五人のリーダーだと思われる派手な少女は優の弁当袋を開け、弁当箱を取り出すと弁当箱を逆さにし、トイレの床に弁当の中身を放った。

「ひどい」

優の知らない記憶で何度もこのような経験をしたのは本当の優ではない優も知っていたが実際に体験すると悔しくて涙が流れた。

「泣いてるよ」

「最高」

「こんな目に遭うのは自分のせいだからね」

「そうそう」

派手な少女の取り巻きの四人は床に落ちた弁当の中身を見て涙を流す優にそう言った。

「わかってると思うけど、教師に言ったらあんたもあんたの親友みたいにこの学校に居れなくするから」

派手な少女は優にそう言うと女子トイレを出て行った。それに続いて四人の取り巻きもトイレを後にした。

「もったいないな」

1日を乗り切るだけでも大変な貧しい村で育った優はそう言って床に落ちた弁当の中身に手をつけた。その光景を見てこの少女が別世界で魔王と対峙する勇者だとは誰も思わないほど今の優はとても哀れな姿だった。


別作品の方が更新頻度が高くなるかもしれませんがこちらをメインとして活動しますのでよろしくお願いします。



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