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前世の記憶が蘇ったので、異能の力で全てを飲み込む  作者: イノセス


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4話~それは出来ない~

「なんだ。目が覚めていたのか」


 情報収集の旅から帰って少しすると、部屋に若い修道士が入ってきた。

 入ってきて早々に随分な口調と視線だ。前川達以上に嫌悪の色が濃い。

 何故だろうか?


「食事を持ってきてやった。食ったら大人しくしていろ」


 修道士はそう言って、丸椅子の上に木のお盆を置いた。そこには、色のおかしなパン1つとコーヒー色の液体が入った小さな容器が乗っていた。

 カビた黒パンに泥水か?なんてご馳走だよ。


「これは、どう言った意味でしょうか?」


 俺は笑みを浮かべ、修道士に優しく問う。すると彼は、敵意剥き出しで吠える。


「文句があるのか?スキル無し。お前みたいな能無しが、こうして施しを受けられるんだ。しっかり、女神様とイリーナ様に感謝しろ」


 ふむ。どうやらこの世界、スキルを重要視する様子。

 確かに枢機卿も、俺がスキル無しと分かった時に態度を悪化させたし、平民レベルと零していた。そこから推測するに、高貴な人間はそれだけ、良いスキルを得られると言う事かも知れない。

 あくまで、俺の予測だがね。


 だがその予想は、間違っていないみたいだった。

 それから数日、俺の飯を持ってくる修道士はみんな塩対応だった。こちらが何を聞いても「黙れ」とか「エセ勇者が」とか吐いてくるし、外に出してくれと言っても無視された。何度か暴力を振るわれそうになったが、そこは何とか踏みとどまっていた。

 修道士だからか?それとも、まだ俺に能力があるかもと思っているのか。

 案外、この仕打ちもストレスチェックなのかも。負荷を掛けて能力を引き出そうとしていたり。

 もしもそうなら、ここを出て行く時に特大の火を放ってやるぞ?


 そう思う俺だが、今ではない。まだ情報収集が終わっていないからね。

 俺はベッドに潜り、シーツを被る。そこで亜空間を開き、キッチンから失敬した食べ物を食べる。

 

 こうしておけば、いきなり部屋に入って来られても大丈夫。カビパンで腹痛って風を装えるから。

 魔法で透視が出来るみたいだからね。念には念を入れておこう。


 食事を終えると、今度は読書だ。書庫から失敬した本や、前川達からパクった魔法書を読み漁った。

 俺には教育を受けさせないみたいだからね。日中はこうして、この世界の知識を蓄えていく。


 そして、夜が来たら本番だ。俺は亜空間を開いて、施設内を好きなように出入りし続ける。

 やっぱり、夜は良い。人も寝静まっているから動きやすいし、何より闇に覆われている。そして何より、亜空間を開く負荷が昼間とは比べ物にならない。幾らでも広げることが出来る。

 

 そうして俺は、表面上は弱った少年を装いながら、夜は着実に力を蓄えていった。

 そんな日々を数日過ごしたある日、イリーナの部屋で驚きの話を聞いた。


「勇者達が反抗している?」


 うぇっ!?

 遅れてきた反抗期?


「いえ、反抗と言う程では…。ですが、意欲が著しく低下しております。訓練にも身が入っておりませんし、消極的です。元の世界に帰せと言う輩も出てくる始末で」

「一体、何があったのです?」

「それが…」


 長々話すギヨーム司教の言葉を要約すると…現実を知ったらしい。

 彼らは先日、郊外で実践演習をしたらしい。そこで魔物と戦ったらしいのだが…生き物を殺す事に物凄い抵抗感を表したんだとか。中には、泣き出す子も。

 それを聞いて、イリーナは「はぁ…」と長いため息を吐く。


「魔物を倒す事に躊躇するなんて、一体どんな生活を送ってきたと言うの?王族ですら、10歳でホーンラビットを狩ると言うのに」


 はっはっは。それが日本人だ。最近ではカエルの解剖もしないんだぞ?

 これも、異世界人を拉致ったツケだ。存分に味わえ。

 イリーナの困り顔に満足していると、彼女は驚く指示を飛ばしてきた。


「分かりました。では、今軟禁している少年を使いなさい」

「えっ?あのEランクを?」


 おう。その残念な称号止めてくれ。

 それより、俺に何をさせる気だ?

 怪しく笑うイリーナに、俺はついつい視線を送っていた。


 そして、それは翌日に分かる。


「出ろ」


 俺の部屋に入ってきた修道士は、まるで犯罪者の様に俺を引っ張り、陽の当たる裏庭に連れて来た。

 うぉっ、眩し。やめてくれ。こんな明るい所は嫌だ。俺に暗闇を…。


「おぉ!便所虫だ!」


 太陽の光に参っていると、向こうから前川の鬱陶しい声が響いた。

 目を凝らすと、クラスの子供達が勢揃いで芝生の上に座っていた。その前には、教師役の修道士が。

 ああ、以前見た魔法の実地訓練みたいだ。


「今日の訓練は、この少年と一緒に受けて貰います。皆さん、この数日で得た力を存分に見せつけて下さい」


 はぁん。なるほど。俺をピエロにしようって事だな?ここで出来ない奴を見る事で、子供達のモチベーションを上げようって魂胆か。

 随分と合理的で非道な考え方。江戸時代の身分制度みたいだ。

 この世界の道徳理念は、随分と低いのかもな。


「では先ず、初級魔法から」

「よっしゃ。見てろよ、便所虫!」


 意気揚々と出てきた前川は、得意気に剣を抜いて力み始める。その切っ先に特大の火炎弾を生成し、構える修道士へと放った。

 修道士は防御魔法で受け止めるも、周囲に火の粉が散って水魔法で消火する羽目になった。


「勇者様!今のは中級魔法でございます!」

「悪りぃ、悪りぃ。ちょっと本気出しちまった」


 口では謝る前川だが、ワザとやっているのは一目で分かる。みんなに拍手されて「うぇーい」と喜んでいるし。

 そんな奴に、先生も拍手を贈りだし、俺の方を向く。


「では次にEランク。Eランク、前に出なさい」


 出たよ。ピエロ作戦。

 俺は大人しく前に出て、ただ手を上げる。勿論、スキルも適正も無い俺は、魔法なんて撃てない。

 ただ突っ立って、みんなに笑われるだけだ。

 これで満足か?


「もう良い。才能の無い者は引っ込んでいろ!」


 出ろと言ったり、引っ込めと言ったり。理不尽な上司か、あんたは。

 俺はみんなに嘲笑されながら、元の場所に戻る。もう俺の番は終わったと言うのに、周りはずっと俺の話題を擦り続けた。


「あれはないよね」

「マジで笑った。初級も出来ないなんて」

「仕方ないじゃん。だって無能なんだもん」


 クスクス笑う彼らの様子は、随分と明るい物になっていた。

 だが、他者を蹴落として得た快楽に浸るとは、こいつらの将来は大丈夫なのか?

 いや、最初からか。この子達は最初から、黒井康介の窮地を見世物にしてきた人間。

 終わっている人間達だ。


 でも、子供である。子供の過ちを許すのも、我々大人の役目だろう。

 俺はそう考え、まだ比較的マシな委員長に近付く。


「なんだよ、黒井君。あまり近付かないでくれ。友達と思われるだろ」


 おう。こいつも大概だな。

 だがもう、このクラスで会話出来るのはこいつだけ。無理にでも聞いてもらうぞ。


「聞いてくれ、岸田委員長。君たちが置かれている状況は、あまり好ましくない。君たちは本当に、ダンジョンで魔物を狩るつもりなのか?教会が言うままに、生きていくつもりなのか?」

「何を言っているんだ。それがこの世界の為になるって、イリーナ様も言われていただろう。君は知らないだろうが、この世界は危機に瀕している。我々の力が必要なんだ。だから我々は戦う。この世界の為に!」


 おう。こいつ、たった数日で洗脳されよった。

 もしかして、子供を攫ったのってこの為なのか?

 子供って、ろくに社会にも出てないから絆し易いもんな。

 こりゃ、ダメかも。


「おい、便所虫」


 いつの間にか、前川達が俺の所に来ていた。

 彼は鼻を摘んで、ニヤッと笑った。


「臭いんだよ。どっか行け」

「ああ、悪い」


 俺は立ち上がり、離れようとした。

 ここ数日、まともに風呂も入れていないからね。水で体は拭いているけど、限度がある。

 そう思って退散しようとしたら、背中に当たる小さな敵意を感じた。なので避けると、前川の蹴りがすぐ近くを通過した。

 俺を蹴り飛ばそうとしたらしい。


「っと、こいつぅ」


 バランスを崩しそうになった前川が、俺を睨んでくる。

 いや、蹴ろうとして自滅したのは君だよ?癇癪を起こさないでくれ。

 呆れる俺に、前川が迫ってくる。


「おい、謝れ。土下座して謝れよ、便所虫」

「何についての謝罪だい?避けてごめんなさいとでも?」


 訳が分からんと聞き返すと、前川は顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。


「てめぇ…調子乗ってんじゃねぇ!」


 俺の胸ぐらを掴んでくる前川。


「勇者である俺が命令してんだ。這いつくばって謝れよ。地面に頭擦り付けて、両手と両足も泥まみれにして謝れ!」

「それは出来ない」


 そんな事をしたら、君は助長するだろ?勇者の肩書きをそんな風に振りかざしていたら、すぐに君はダメな人間になる。

 悪いけどここは、我慢しなさい。俺から君への、教育だよ。


「ああ、そうかよ」


 前川は分かってくれたみたいで、俺を放した。

 そして…。


「決闘だ、便所虫。今日の訓練が終わった後、お前をボコボコにしてやる」


 うん。全然伝わってなかった。

 疲れるなぁ。プライドの高い子供を相手するって。

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― 新着の感想 ―
成程、繋がりました。 まぁ元々、黒井君以外の連中が最悪なので違和感が仕事していなかったですがw これで公正公平な現地人とか、正義感溢れる委員長とか、優しい女子とかがいたら不自然な流れでしたね。 徹頭徹…
しめしめ、感想1話分先取りして楽が出来るゾ☆と思いきや、4話で旧感想の疑問が解消されてました^^; カビパンは大事に取って置きましょう。主客転倒で修道士に食べてもらう機会があるかもですし m9(^Д…
秒速の掌返し、上からくるか下からくるかは知らんけど「やっば」より「きっも」て声が出たわ。
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