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前世の記憶が蘇ったので、異能の力で全てを飲み込む  作者: イノセス


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28/41

28話〜て、テスト?〜

 ネルトーク家に呼ばれた日は、結局1日がかりになってしまった。

 マリノス伯爵が紹介してくれた鍛治工房に大量の武器を発注して、その後は伯爵が晩餐会に誘ってくれた。

 身内だけと言う話だったが、随分と人が集まっていた。マルガレーテさんのご兄弟もご親戚もズラリと集まり、俺はその1割の名前も覚えられなかった。

 何故シアさんは、みんな覚えられたんだろうか。


 そして、今日の俺達は王都の中心、貴族街に来ていた。ここの学園を紹介してくれるとの事で、マルガレーテさんの馬車に乗せて貰っていた。

 昨日着た服をプレゼントして貰って助かった。そうでなかったら、この貴族街にも入れなかっただろう。

 

 俺は馬車から見える屋敷の数々を見て、そう思う。どの家もネルトーク家に匹敵する程の大きさと広い庭を持っており、商店に並ぶ物もキラキラして見えた。

 いや、実際にキラキラしとるわ。だって、宝石とか金とかふんだんに使われているから。


「着きましたわ」


 マルガレーテさんに促され、俺達は馬車を降りる。そこには、ここが王都の中と言うのを忘れてしまいそうなくらい、広大な芝生が広がっていた。

 緑の芝生に、色とりどりの実を宿す木々。そして奥には、お城かと思う程に立派な建物がボンッ、ボンッ!と建ち並んでいた。


 これが王国随一の魔法学校か。北海道の大学並に広いぞ。


 俺達はマルガレーテさんの背中に付いて行きながら、特異な空間に忙しなく視線を彷徨わせ続ける。

 向こうの方では、学生達が魔法の訓練をしている。反対側では、ラグビーみたいな競技をしながら、互いに魔法を撃ち合っていた。もっと向こう側では、トレントを相手に実技をしている生徒の姿もあった。

 凄いな。魔法学校ともなると、校内に魔物を飼っているのか。あっちではホーンラビットの飼育場みたいのがあるし。


「ねぇ、クロード。なんか、大きな岩の洞窟があるよ」

「うん?何処に?」

「あそこ、あそこ」


 どれどれ…本当だ。なんか、地下への階段が出来ている。その前にはギルドのクエストボードみたいなのが何枚か建てられていて、それを学生達が見上げていた。

 あれは、なんだ?


「ダンジョンですわ」

「ダン、ダダン!?」


 ダンジョンだと?この王都のど真ん中に?

 まさかそんなのまであるのかと、俺は驚き過ぎて舌を噛みまくった。

 それに、マルガレーテさんが肯定する。


「ええ。ですが、3階層までしかない簡易的な物です。定期的に先生方が最下層のダンジョンコアを浄化しているので、侵食も起きておりません。学生達が魔物に慣れる為の施設ですわ」


 なんだか、凄い事を一気に言われた気がするけど…先ずは、

 

「ダンジョンって、管理出来る物なんですね?」

「ええ。魔物が増え過ぎないよう、定期的に間引きしてしまえば溢れる事もございません。ダンジョンコアの魔力を弱めれば、ダンジョンが更に大きくなる事も、魔物の生成スピードも抑えられます」


 なるほど。

 逆に言えば、そのダンジョンコアが魔力を溜めすぎると、ダンジョンが大きくなってしまうと。それが、さっき言われていた〈侵食〉って奴だな?


「クロードさん。もしもダンジョンにご興味がおありでしたら、ダンジョン構造学を受けられてみてはいかがでしょう?」

「ほぉ。それは、学園の講義ですか?」

「さようです。タレイラン先生の授業でして、彼がここの管理者でもあります。もしもお試しになりたいのなら、先生の講義に参加するのが早いかと」


 俺がダンジョンに入りたいって、良く分かってるじゃない。マルガレーテさん。

 今から大森林のダンジョンに挑むからな。その前知識って事では、最適だろう。


 俺は彼女のご好意に甘え、講義を受ける許可を得に行く。

 でも、


「却下する。ミス・ネルトーク」


 講義を受けさせてくれと先生にお願いしたら、取り付く島もなく拒否された。

 まぁ、そうだよな。俺はここの学生じゃないし。


「何故ですか?タレイラン先生。座学であれば、外部生でも受ける事が出来る筈です」


 ありゃ?そうなの?

 随分とオープンな学校だなと驚いていると、先生の粘っこい視線が俺とシアさんを捉える。頭のてっぺんからつま先まで見た後、土気色の頬を少しだけ持ち上げて、彼は笑った。

 嘲笑。


「貴様らは平民であろう?」

「えっ?うん。そうだよ」


 シアさんが頷くと、先生は「やれやれ」と大きく首を振る。


「ミス・ネルトーク。レガリス学園は高貴な者が学ぶ為の学園である。平民などと言う下賤な者が、吾輩の講義を理解できるとは到底思えん」


 うわっ。出た。身分差別。

 やっぱ貴族って、こうでなくちゃな。


「ちょっと!それ、どういうこと!?」


 待て待て、シアさん。挑発に乗るな。

 俺が彼女を押さえていると、余計に笑みを深める先生。

 その彼の前に、マルガレーテさんが進み出る。俺を、手で指し示す。


「先生。クロードさんは私の恩人なのです。ボロック盗賊団から私と母を救い出し、かの賊を壊滅させる事に大きな貢献をして下さいました」

「であるからと言って、この学び舎に相応しいかは別である。卑しき血に変わりないのだからな」

「先生!」


 マルガレーテさんは憤慨するが、タレイラン先生は取り合おうとしない。

 40過ぎくらいのおっさんだもんな。もう自分の信念みたいのが凝り固まって、偏屈になってるんだろうな。

 何か、打開策は無いものか。


 俺は先生の部屋を盗み見る。すると、机の上に幾つか薬草やキノコが乗っているのが見えた。

 先生ってのは、研究者みたいな者だからな。何かの実験材料だろう。

 これは使える。


 俺は片目を瞑り、目を亜空間に飛ばす。次いでに、両手も後ろに組んで、同じように亜空間の中へ。

 そこで、教会から接収した薬草図鑑を開く。

 ええっと…これじゃない。これ、でもないな。こいつ…こいつだ。


「済みません、タレイラン教諭。もしや、自白剤を作られている最中でしたでしょうか?」

「…何故そう思う?」


 ムッと表情を固め、聞いてくる先生。

 俺は本の文字を追いながら、答える。


「その机の上に、自白剤の材料が並んでいるからです。困惑草と眠り茸、それにデッドスコーピオンの針。それらを3対2対5で50℃に加熱しながら調合したら、出来上がる薬剤でしたね?」

「…そうだ」


 先生は詰まらなさそうに呟き、俺から視線を外す。

 マルガレーテさんが「どうです?先生」と嬉しそうな声を上げた。


「講義を受けるのに、十分な素質ではありませんか?」

「…受けさせてどうするつもりだ?ダンジョンに挑むだけの素質を…魔術のスキルを、こやつらは持っているのか?」

「あたしが魔法使えるよ!」


 シアさんが手を挙げて、その先に炎を灯す。彼女の心の様に、暖かな光の炎を。

 それを見て、先生は笑う。


「その程度、道標にすらならん」

「うっ…」


 シアさんはビクッと肩を震わせて、手を下ろす。

 そうだった。最近は活躍ばかりの彼女だったが、火力が弱いことを悩んでいたんだ。

 だがそのお陰で、俺は大量の炭を手に入れた。完全燃焼してしまう他の火炎魔術では出来ない事を、彼女はやってくれているんだ。

 それを笑うとは…こいつ…。


 俺は前に出て、先生に手を差し出す。


「私はスキルを持っていません。魔法だけでなく、何も無いのです」

「そうか。それは、お可哀想に」

「いえ。問題ありません。スキルが無くとも、ここのダンジョン程度であればすぐにクリア出来ますので」

「……ほぉ」


 先生は口だけ笑みを浮かべ、目を鋭くさせる。

 調子こきやがって、このクソガキ…とでも思っているのだろう。

 そうだ。自分が管理しているダンジョンが貶(けな)されて、タダでさえ高い貴族様のプライドが許さないだろう。

 さぁ、食らいつけ。俺が垂らした怒りの釣り針に。

 俺達をダンジョンに叩き込め。


「良いだろう。吾輩が直接、貴様をテストしてやる」

「て、テスト?」


 思わぬ返しに、俺は言い淀む。

 それに、先生が大きな笑みを浮かべる。


「ああ、そうだ。決闘をするぞ、無能の少年」



 ところ変わって、ここは競技場。整備された芝生の上に、的やら白線が敷かれたフィールドが広がっている。そして、四方を観客席で固められていた。

 大きさは、サッカーコートくらいだろうか。今も何組かの生徒達が、魔法の練習をしていた。


「こちらで行う」


 先生は空いていた一角へと俺を誘い、決闘のルールを説明する。

 攻撃手段は自由。魔法を使うでも、野蛮に拳を振り回しても良いとの事。相手の背中が芝生に着けば、その時点で自分の勝ち。気を失っても同じだ。


「とは言え、吾輩も鬼ではない。死なぬ程度に手加減を行い、終われば回復薬を与えよう」


 先生はそう言って、俺から距離を取る。5m離れるのが決闘のルールだそうだ。

 でも、ちょっと待って。

 

「先生。その回復薬は何処にありますか?先生が倒れた時に使いたいので、教えて下さい」


 俺が当然の顔でそう言うと、土気色だった先生の頬に朱色が差す。

 面白いくらいに煽り耐性ないな、この先生。

 でも、今のは本当に知りたかった事だ。でないと、俺のを使うハメになるから。


「…減らず口を。良いだろう、教えてやる。魔術の真髄を」


 先生は腕を振るい、ローブをたくし上げる。そして、俺に向かって杖を向けてきた。


「切り裂け!ソル!」


 そう叫ぶと同時、先生の杖に魔力が集まり、半透明の風のナイフが飛んできた。

 素早い攻撃。それを、俺は間一髪で避ける。風は俺の目に前を通り過ぎ、壁際の的に当たる。

 的に、大きな亀裂が走った。


 流石は先生。前川達とはエラい違いだ。あいつらなら、もっと長い詠唱でこれ程の威力を出せないから。

 だからこの先生、間違いなく玄人なんだろう。

 いけ好かないけどね。


「ふっ。逃げるのは得意の様だな」


 先生が鼻で笑う。


「では、何処まで逃げられるか試してやろう」


 先生が杖を振り上げると、彼の周りで土が浮かび上がる。その土が幾つかに纏まり、圧縮されて野球ボール程の岩になる。

 その鋭利な岩の先が、俺に向く。


「その者を貫け!ロックバレット!」


 浮いた岩が次々に襲ってくる。軌道が読み辛く、若干俺の方にホーミングしている。

 指向性を持たせられるのか?ここも、前川との違いだな。


「おぉ!すげぇ!決闘だ!」

「タレイラン先生が戦ってるぞ!」

「相手は誰だ?」

「外部生?」


 岩が的に当たって轟音を響かせると、周囲の学生が興味を持って近付いてくる。手前の観客席が、徐々に埋まっていく。

 それを見て、先生が眉を寄せた。


「…ふんっ。騒がしいものだ。すぐに終わらせてやろう」


 先生は素早く杖を上げ、周囲に岩を作り出す。先程の倍…いや、3倍程の量だ。

 それを見て、観客席の学生達が盛り上がる。


「うわっ、凄い数!」

「こりゃ避けられないよ」


 ああ、そうだな。こりゃ無理だ。

 もうちょっと、体を鍛えたかったんだがな。


「かの者に降り注げ!ロックレイン!」


 無数の岩石弾が迫ってくる。向こう側に見える先生の顔に、大きな笑みが浮かんでいた。

 もう逃げられんぞ?

 そうとでも言うような。


 俺はマントを体に巻き付け、亜空間を開く。そこに、岩石弾が着弾する。全て、亜空間に収納される。

 周囲の歓声が、急に小さくなった。


「わぁああ…あれ?何も起きない?」

「魔法が消えた?」

「先生が消したの?」


 困惑する観衆。それと同じくらい、先生も動揺していた。

 薄くなった目で、俺を睨む。


「何をした?そのマントは、魔道具か?」

「さて。ただの黒マントですよ」


 俺がヒラヒラマントを揺らすと、先生は「ふんっ」と鼻息を荒くする。


「道具などに頼っているとは、流石は平民である。品性の欠けらも無い」


 先生は杖を掲げ、詠唱を開始する。徐々に魔力が集まり、巨大な岩石を形成する。

 トラック並に大きな岩石。それを、横回転させた。


「良いか、愚民!これが我々、貴族の力だ!存分に味わうと良い!」


 先生の杖が、振り下ろされる。


「愚者を貫け!グランバレット!」

「クロード!」


 シアさんの叫び声と共に、隕石が向かってくる。

 俺は瞬時に、マントの中に作った亜空間の中へと退避し、そこから外の様子を見る。

 隕石は地面に激突し、濛々と土煙を上げていた。

 先生が「やれやれ」と首を振り、腰から瓶を1本取り出した。


「吾輩とした事が、少々力を入れ過ぎたか。たかが平民風情に」


 完全に倒したと勘違いし、慢心しているな。

 よし。

 

「いえいえ。入れて頂いて結構ですよ」

「うごっ!?!」


 彼の後ろで亜空間を開き、そこから出て声をかける。すると、先生は飛び上がらんばかりに驚く。

 生徒達も「「うぇえ!?」」と目が点になっている。

 動いているのは、諸手で拍手しているシアさんくらいだ。

 来ないのか?なら、こちらから行くぞ!


 先生に向かって、俺は走り出した。

 それに、先生も素早く反応する。杖を振り、「ソル!」と風魔法を放ちながら後退した。

 俺はその魔法を、奪う。黒手袋に亜空間を開いて、そこに収納する。

 そして、俺も手を大きく振って詠唱する。

 詠唱…したように見せる。


「切り裂け!ソル!」

「がぁっ!」


 奪った風を返すと、先生は避けきれず足に被弾する。地面に倒れ、困惑した顔で俺を見上げてくる。


「何故だ?何故、魔法を…スキル無しではなかったのか」

「無いですよ。ですが、それに見合う力を持っています」


 俺は先程奪ったロックバレットを取り出し、先生に見せ付ける。


「あまり、平民を舐めない事ですよ?教諭」

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― 新着の感想 ―
シアさん、営業職向き(対面での人名記憶)だな…バーガー店でクロード君はひたすら肉を焼くのが良さそうw マルガレーテさんはすっかり上流階級でのガイド役。クロード君が実績を挙げれば慧眼を称えられそうだが……
「道具などに頼っているとは、流石は平民である。品性の欠けらも無い」 その杖は道具じゃないんですかねぇ。秒でブーメラン刺さってますよ? と、煽ってみるw
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