↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の記憶が蘇ったので、異能の力で全てを飲み込む  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/39

24話~何か、近付いて来てるよ?~

「わぁ!広~い!これが外なんだぁ〜」


 馬車の帆に掴まって、シアさんが外の風景を見回す。既に街道も途切れたので、見えるのは踏み固められた轍(わだち)と、何処までも続く野原だけだ。

 それでも、彼女の目には新鮮に映るみたいで、小一時間くらいずっと外を見ていた。


「初めてなのかな?街の外に出るのは」

「うん!だって、街の外って危険だもん。魔物もいっぱい居るし、盗賊も出るって商人のおいちゃん達も言ってたよ」

「盗賊かぁ」


 魔物が蔓延(はびこ)る世界なのに、よくやるよ。人間同士で争っていないで、ダンジョンに潜れば良いのに。

 ダンジョンなら、お宝とかもあるんだろ?


「どしたの?クロード。盗賊怖い?」


 憤りを感じていると、シアさんが心配して聞いて来る。

 俺はそれに「まぁね」と返すと、彼女も「だよね~」と何度も頷いた。


「嫌だよね、盗賊。しかも、ここら辺に出る盗賊の中には、ボロック盗賊団って言うとっても大きな集団がいるんだって。それに目を付けられたら、これだけ大きなキャラバンでも全部取られちゃうって噂だよ」

「ほぉ。そんな大きな盗賊団が放置されているのか」


 王都も近いのに、何やってんだ。

 俺は呆れながらも、亜空間を開く。近くの森や飛んでいる鳥の影に出口を開いて、周囲を探る。

 うん。取り敢えず、周囲に敵影は無い。でも、注意は必要だ。特に日中は亜空間が開きにくいから。


「おっと、そうだった」


 俺はシアさんに向き直る。そして、1つお願いをした。

 それというのは、


「いざという時の為に、黒を増やして貰いたいんだ」

「黒?」

「うん」


 俺は彼女に、手のひらサイズの木片を1つ渡す。


「この木片を燃やして、炭を作って欲しい。ほら、スタンピードの時にやってくれたみたいに」

「あっ、あれね!」


 シアさんは早速、小さな炎を木片に灯す。

 この炭があれば、光が煌々と降り注ぐ場所でも亜空間が開けるだろう。トドとの戦いで、俺は初動が遅れた。ああいう事態を避ける為にも、先ずは闇を作り出す道具を揃える必要がある。

 俺は陶器の壺を置いて、そこに炭を入れるようシアさんにお願いをする。そして、周囲の監視に戻った。


 

「野営するぞ。お前らも手伝え」


 夕刻。

 キャラバンは道を外れて一纏まりになり、いくつかのテントが立ち並ぶ。俺達も駆り出されて、夕飯の準備などを手伝った。

 今日はただ座っていただけだからね。これくらいのお仕事はしないと。

 

「おーい。ミーティングだ」


 夕飯が終わると、俺達は厳つい男達の会議に呼ばれる。そこでは、今夜の見張りの順番について話し合われた。

 警備班のリーダー…有名な冒険者パーティーのリーダーで、ラルスというらしい。そのラルスさんが、商品箱から大きな砂時計を取り出し、地面に置いた。


「1班3時間。それを3班に別れて行う。異常があれば、この鈴を鳴らせ」


 俺達は2班に割り振られ、1番キツい真ん中の時間を担う事になった。

 俺は亜空間があるから良いけど、シアさんが可哀想だな。初めての夜間警備だろうし。


「シアさん。キツかったら寝てて良いからね?監視は俺に任せて」

「んーん。だいじょーぶ!」


 ホントかな?


「ほら、お前ら。よく聞けよ」

 

 心配していると、ラルスさんが手を叩いて注目を集める。


「最近のここいらは、魔物の出現率が異様に高くなってる。恐らく、大森林の魔物が溢れているんだろうが、毎夜襲撃があると思って警備しろ。良いか?」

「「うっす!」」「はいっ!」


 大森林か。それを聞くと、王都ではなく直でそちらへ行きたい気持ちが湧いて来る。

 でも、ダメだ。今の俺は物資不足だからな。スライムと聖騎士戦で武器の摩耗も激しいし、もっと上等な武器も仕入れたい。一度王都によって、ダンジョン攻略の準備を整えないと。

 その為にも、この仕事を完遂し、魔物を狩って資金を調達せねば。


 そう意気込んで始めた夜間監視だが、ヒマだ。周囲に魔物の気配は無いし、シアさんは開始5分で夢の世界だし。

 俺は暗闇が支配する平原を、両眼を飛ばして探し回った。

 傍から見たら、俺達2人とも寝ている様に見えるのだろうか?立って監視しているフリをしたいけど、シアさんが俺の肩でスヤスヤだからなぁ…。


「お~い。交代だぞ、ガキども」


 結局、何事も起きずに交代の人が来た。

 俺は眠ったままのシアさんを抱えて、馬車の方へと戻る。そして、引き続き周囲の監視を行った。

 最初の休憩で、ばっちり8時間休ませてもらったからね。俺は俺で、遠くの森の方を監視しとこ。


 そうして周囲に目を配っていると、やがて向こうの空が薄っすらと明るくなってきた。

 夜明けだ。もうすぐ太陽が昇る。


 と、その時。森の中から微かに足音がきこえた。次いで、奥の葉が揺れるのが見える。

 そしてすぐに、茶色の毛玉が俺の目下を通り過ぎた。

 森狼。

 それも群れで迫ってきている。


「この時間に来るとはな」


 俺は飛び起き、馬車の外に出る。周囲はまだ、魔物の接近に気付いていない様子だった。

 日が昇る直前ってのは、1番気が緩む時間だからな。向こうがそれを狙って来たんだとしたら、相当厄介な相手だぞ?


「狼だ!狼が来るぞ!」


 鈴は渡してしまったから、俺は声を張って危機を知らせる。すると、ラルスさんが馬車から顔を突き出し、怪訝そうな目をこちらへ向けた。


「なに寝ぼけてんだ?お前。ここに居て、どうやって襲撃が分かんだよ」

「寝ぼけてませんよ。東南東の森から、狼の群れが迫っています」


 俺が向こうを指さすと、ラルスさんは「やれやれ」と言いたげに首を振った。

 でもすぐに、俺が指さした方角で鈴の音が鳴り響く。次いで、「魔物だ!」と悲鳴が聞こえてきた。

 ラルスさんが目を点にして、俺を見てくる。


「なんで、お前…」

「そんな事より、早く迎撃に行きましょう」


 俺は走って、鈴の音の元へ向かう。そこに着いた時には、既に数頭の狼と警備員が戦っていた。振り回した槍先に、狼が食らいついていた。

 劣勢だな。


「たっ、助けてくれ!」


 おぉ。君はいつかのお兄さん。確か、ロイド君だったかな?君も同行していたのか。

 

「了解!」


 俺は狼のすぐ近くに亜空間を開き、そこから槍を出現させる。槍は狼の腹を貫いて、絶命させた。

 それを見た他の狼が、何だ?何だ?と驚いて尻込みした。


「なっ、なんだ!?何処から槍が?」 


 おっと。ロイド君も驚かせてしまったか。

 悪いな。でも、先ずは人命優先だ。


 俺は次々と亜空間を出現させて、狼を貫いていく。戸惑い、足を止めていた狼達は、格好の的であった。

 そして、踵を返す。こりゃ堪らないと、森へと逃げ帰った。

 残ったのは、20体余りの狼の骸達。


「おい!大丈夫か!?」


 狼の遺体を確認していると、ラルスさんが手に槍を持ち、仲間を連れてやって来た。その中には、フランツさんの姿もある。

 狼の死体を見て、目を見開くラルスさん。


「これは…これを全部、お前達がやったってのか?」


 彼に問われて、ロイド君がブンブンと両手を振る。


「違います!俺は何もしてません!狼に食われそうな時にこいつが来て、そしたら、急に槍が生えてきて、それが狼の体を貫いたんでさぁ!」

「槍が生えるだぁ?何を言ってんだ、お前は」


 ラルスさんはボリボリと頭を掻き、残念な奴を見る目でロイド君を見下ろす。

 そんな2人を、フランツさんが追い越す。座って狼の傷口を見た後に、俺を見上げた。


「お前か?」

「えっと、まぁ…」


 曖昧に頷くと、フランツさんは立ち上がってニヤリと笑う。

 何か言われるかと思ったけど、彼は何も言わずに「持ち場に戻れ!」と集まった人達を散らした。そして、俺を振り返って狼を指さした。


「それは全部、倒したお前の物だ。どうする?ここで買い取ってやってもいいが」

「いえ。冒険者ギルドに持ち込みます」


 もしかしたら討伐報酬が得られるかもしれないし、移動中の彼らより高く買い取ってくれるだろう。何より、皆さんの荷物になってしまうのは忍びない。

 そう言う意味で答えると、フランツさんは「そうか」と片手を振って馬車に戻って行った。

 20匹の狼を持ち運ぶって言っても、全く驚かなかったな。彼はもしかしたら、亜空間の性質を薄々勘づいているのかも。

 

 

 それからも、魔物はちょくちょく襲撃してきた。狼系の魔物や、ゴブリンなんかの小物が多かったが、中にはオークやレッドボアのような大物の襲撃もあった。

 オークの時は、みんなが起きている日中だったので、迎撃は他の冒険者さん達にお任せした。

 その分、夜間は俺が頑張った。全ての襲撃を事前に察知して、警ら隊が魔物と接触する前に狩り尽くした。


 レッドボアの襲撃時はヒヤリとした。10頭以上で突っ込んで来たんだけど、鉄の槍や剣では毛皮に刺さらずに折られてしまった。

 仕方がないので、ミスリルナイフで機動力を削ぎ、亜空間の中に落とした。けど、それを見たロイド君は「こんな所に落とし穴が…」と完全にビビってしまい、草の根を分けて歩くようになってしまった。


「なぁ、おい。お前。どんなスキルを持ってんだ?」


 逆にラルスは、俺に興味深々になってしまった。

 馬車に揺られながらシアさんと作業していると、態々馬に乗って来て話しかけるようになっていた。

 特に気になっているのが、俺の探知能力みたいだった。


「おい、どうなんだ?クロード。マビノギオンに入る決心は付いたかよ?」


 そして頻りに、俺を彼の冒険者チームに誘うようになった。

 俺が何度断っても「よく考えておいてくれ」って言われてしまって、結論を聞いてくれない。

 そんなに探索能力が欲しいのかね?もしかして彼らも、ダンジョン攻略をするつもりなのか?


「あれ?」


 ラルスさんからどう逃げようかと考えていると、シアさんが立ち上がり遠くを眺めた。

 危ないよ?シアさん。ここ悪路だから、何時馬車が揺れるか分からんぞ?

 

「見て、クロード。何か、近付いて来てるよ?」


 シアさんの腰を支えていると、彼女は遥か後方を指さす。なので見てみるが…なんも見えない。

 くそっ。黒板とタブレットばかり見てたからか。


「なんだ?嬢ちゃん。何が見えるんだ?」


 悔しがっていると、ラルスさんも疑問符を浮かべた。

 ほぉ。良かった。俺が弱視じゃなくて、シアさんの目が良いだけみたい。


「なんか、たくさん土煙が上がってるのが見えるよ?」


 土煙?

 俺は片目を瞑って、亜空間に飛ばす。草場の木陰に目を設置して、暫く見ていると…。

 馬だ。馬が駆けて来ている。先頭の馬には少女がしがみ付いており、縋るように馬を走らせていた。

 

 その後ろからは、多くの馬がいきり立って続く。まるで先頭の馬を追い立てるように、その馬上から罵声や笑い声が聞こえる。

 獣とも人とも思えない、下卑た笑い。

 それを吐き出しているのは、武器を持った男達。少女とは比べられない程に汚らしい格好をした男達が、華奢な少女を追い回していた。

 これは、盗賊か?


「どう?クロード」


 過ぎ去った馬群の背を見ていると、すぐ横でシアさんの声が聞こえた。

 俺は目を戻し、頷く。


「うん、盗賊っぽいね。少女が1人、追われているよ」

「えっ!?」


 シアさんは驚き、動きを止めた。でも直ぐに再起動し、俺の肩を揺すった。


「ちょっと、クロード!なんでそんな、落ち着いてるの!?早く助けないと!」

「分かった!分かったから、揺らさないでくれ!」


 危なく落とすところだっただろ。

 落とさなかったことに安堵して、俺は持ち上げた壺を彼女に差し出す。


「新兵器の出番だ、シアさん。一発、ぶちかましてくれ」

「おっけー!任せて!」


 シアさんが気合の入った声を上げて、肩をグルグル回した。

 頼むよ。投擲も、俺の苦手な分野だからさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
(町の)外に出た事無いとか、箱入りかよwと草生やそうとして、そ~いや自分が交通機関とか使わずに、最近 人力で自分とこの市区町村出たのいつだっけ?と思えば、自転車含めても結構前でした^^;  マビノギ…
盗賊討伐後の剥ぎ取りは、討伐者の権利ですよね? つなぎの武器調達に如何でしょう。 テンプレだと助けたお嬢ちゃんは貴族の御令嬢かお姫様なんですけど・・ 乗馬で逃走するワイルドさは違いますよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。