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前世の記憶が蘇ったので、異能の力で全てを飲み込む  作者: イノセス


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20/39

20話~これがその結果です!~

 回復薬の値段を下げる為に、俺は多額の資金を投じた。全てイリーナ達が溜め込んでいた金で、相当な額になる。

 それを全額投じたので、クエスト報酬も破格の物にすることが出来た。だから、今朝にはクエストの奪い合いが起きているだろう。

 そんな期待を込めてギルドに来ると、薬草採取クエは1つも受注されていないと聞かされた。

 

 なっ、なんで…?

 俺は立ち尽くす。

 まさか、教会の圧力が掛かったか?

 そんな不安が頭の中を過った時、後ろから声を掛けられた。

 

「そのクエストは受けるな、クロード」

 

 誰かと思って振り返ると、白っぽい簡素な布を着た男が立っていた。

 一瞬、修道士かと思ったが…。


「フィンさん」


 その人は、冒険者仲間のフィンさん。スタンピードで大怪我を負って、それからは暫く顔を見ていなかった。けど、歩けるくらいには回復したみたいだ。

 そんな彼は、自分の腹に手を当てて首を振った。


「薬草が多く生えているのは東の森だが、あそこは危険だ。生息しているのはゴブリンだけじゃねぇ、オークや、オーガの鳴き声も聞いた。実際に入った俺達だからよ~く分かんだよ」

「あっ…」


 そうか。フィンさん達はそこで、魔物に襲われスタンピードを起こしてしまった。ここに居るみんなは、それを知っている人達だ。

 あの森がそれだけ危険だという認識で、止まってしまっているんだ。

 あそこは既に、俺が全部討伐した後だけど、それはギルドに報告していないからな。脅威が消えた事は、俺しか知らない。だから、みんなクエストを受けてくれないのか。

 やっちまった。俺の尺度で計画を組んでしまった。


 考えが至らなかった事を反省していると、フィンさんが俺の肩に手を置く。


「俺はお前が居たから、命を救われた。けど、こんな奇跡は二度と起こらない。その恩に報いる為にも、俺は全力でこの危険な任務を阻止するぜ」

「あぁ…」


 フィンさん、変な使命感を持っちゃってる。余計にみんな、採取クエを嫌煙する訳だ。

 

 どうするか…。

 俺は考える。

 どうやって、みんなにクエストを受けて貰う?もっと金を詰んだとしても、危険に飛び込むとは思えない。

 となると、危険では無いことを証明するしかないが…。


「どうすんの?何か、別のクエストを受ける?」


 カウンター前で固まる俺に、クレールさんが問いかけてくる。彼女の後ろには、薬草クエの発注書が山積みで放置されていた。

 くっ…背に腹は代えられないか。

 俺は覚悟を決め、背を伸ばした。


「クレールさん。魔物素材の清算をお願い致します」

「清算?何か狩ってきたの?」

「はいっ!」


 俺はハキハキと答え、マントをバサリッ!とはためかせる。そうやって、周囲の注目を集めた。

 そうだ。見てくれ。今だけは、俺のすることをしっかりと見届けてくれ。

 普段は目立たないように立ち回るので、背に刺さる視線が気持ち悪い。でも止めない。俺は腰に下げていた袋に手を突っ込み、そこに亜空間を開く。次に手を引き抜いた時、そこには大量の魔石が掴まれていた。

 それを、カウンターの上に降らせる。魔石のシャワーに、クレールさんが眉を上げる。


「あんた…これ…」

「森で狩ってきました。魔物の魔石です」

「「「えっ!?」」」


 クレールさんだけでなく、周囲の冒険者も驚き声を上げる。近づいて来て、カウンターから転がった魔石を拾い上げて光に翳す。

 本物かどうかの、鑑定が始まる。

 そして、


「本物だ。本物の魔石だ!」

「血がこびり付いてる。こりゃ、どっかで買ってきたもんじゃねぇぞ…」

「おい!こっちの濃いのはCランクの魔石だ!ゴブリンやオークじゃねぇ。こいつはオーガのだ!」


 ガヤガヤと、冒険者達の声は時間が経つにつれて大きくなり、酒場で飲んだくれていた奴らまで集まり出した。

 そんな中、クレールさんが鋭い目で俺を見て来る。彼女の手には、一層濃い色の魔石が握られていた。


「あんた…これをどうやって手に入れたのよ。本当に森の中に入ったっていうの?」

「はい。東の森へ入り、全て狩りました。またスタンピードが起きるのは懲り懲りでしたので、やられる前にやってやろうかと」


 そう言いながら、俺はマントを外す。それを、床の上に広げた。

 魔石だけでは疑われると言うのは、前回で学んだからね。ここまで来たら、しっかりとみんなには理解してもらおう。

 俺が森の魔物を狩り尽くしたことを。もう森が安全であることを、広く知らしめてもらうんだ。

 その為の、アピールだ!


「そして、これがその結果です!」


 俺は、マントの中に亜空間を開く。そこから、あの日狩った全てを吐き出す。

 ゴブリン、オーク、オーガの死体を山と積む。仕上げとばかりに、その山頂にはオーガの亜種を添えた。

 目と口を大きく開けたみんなが、それを見上げる。


「ゴブリン、オーガ、ブルーオーガまで…」

「この、ゴブリンの足に付いてる赤土。確かにこれは森の土だ」

「この量を、どうやって…」


 みんながこっちを見て来る。なので、俺は大きく頷き、魔物の山を手で示す。

 

「はいっ!これが、東の森に居た魔物の全部です!もうあそこに、脅威はありません!これがその証拠です!」

「「おぉおお!!」」


 冒険者達は歓声を上げた。確かな証拠を見て、目の色が変わる。

 そして、踏み出す。危険と思って踏んでいた二の足を、前へと進める。


「クエストを受けさせてくれ!薬草の奴だ!」

「俺も受けるぞ!」

「俺も!俺も!」


 カウンターに殺到する冒険者達。一度流れが出来てしまえば、みんながそれに乗っかる。さっきまで俺の方に「どうやって倒した?」という疑念の目を向けていた冒険者も、損をしたくないと波に乗る。

 そして、見事クエストを受注した冒険者は脱兎のごとく駆け出した。


「急げ、急げ!」

「月光草で大金持ちだ!」


 あっという間だった。気付けば、ギルドはもぬけの殻。なんとフィンさんまで、受注書を引っ掴んで行ってしまった。さっきまで「阻止するぜ」ってドヤ顔してたのに…現金な人だ。

 まぁでも、これでやっと作戦が始まる。後は彼らが帰って来るのを待つだけ…。


「ちょっと、あんた」


 俺も帰ろうとすると、呼び止められる。振り返ると、クレールさんがジト目でこちらを見ていた。

 そのまま、魔物の山を指さす。

 

「これ、ちゃんと説明しなさい」

「…はい」


 やっぱり、見逃してはくれないよな。

 それから暫く、俺は詰問を受けることとなった。



「そっかぁ。大変だったね」


 数日後のお昼。俺はまた、マダムのレストランに来ていた。そこで昼食を取っていると、シアさんが駆け寄って来た。

 一緒に変装した仲だからね。俺の作戦が気になったらしい。

 なのでギルドの話をしたら、シアさんが労いの言葉を掛けてくれた。

 そいつは有難いんだけど、座っていて大丈夫?まだお仕事中でしょ?


「それで、どうなったの?」

「ああ。まぁ、ギルドの方は、比較的直ぐに解放されたよ。ブルーオーガ以外の素材も、買い取ってくれたし」


 亜空間の事を聞かれるかと思ったけど、結局再鑑定するだけで終わった。そこで無能である事を再認識すると、クレールさんもギルド職員達も渋々引き下がった。

 冒険者は実力主義だからね。狩りのやり方とかまでは、追求しない様にしているらしい。それが最大の商売道具だからと。


「それじゃあ、薬草は集まったの?」

「ああ…(小声)随分と集まってきた。順調だよ」


 気合いの入った冒険者達は、日夜薬草採取に励んでいる。長年冒険者をやっているからか、採取状態はとても良い。月光草を何株も採ってくる猛者もいた。

 そうして集められた薬草は、クロヴィス男爵に変装した俺が回収し、ベルマン商会に卸している。卸すと言っても、殆どお金は取らない。その分、回復薬の価格を下げる様に言っている。


「もう少ししたら、格安の回復薬が出回るよ。最初は冒険者や衛兵を中心に売らせて貰うけど」


 ベルマン商会にはお抱えの薬剤師も居るからね。トドに搾取されずに回復薬を市場に流せる。

 医療費が高くとも、取り敢えず回復薬が出回れば冒険者も衛兵も動ける様になる。街も正常に動き出すだろう。


「そっか。でもやっぱり、お医者さんは高いままなんだね…」


 シアさんが俯く。

 うん。確かにそうだ。医者の方も下げないといけない。そもそも、このままトドが黙っているとも思えないから。

 こちらから何か、仕掛ける必要があるだろう。あいつがまた何か、良からぬ事を働く前に。


「俺も、何か良い手が無いかは考えているんだがね…」 

「そっか。分かった!」


 シアさんが胸を叩く。


「あたしも考えるよ!お客さんから、いっぱいお話聞いて」

「おお。そいつは助かる」


 飲食店は様々な人が集まるからね、酒場並に情報を得やすいだろう。ここは酒の提供もしていることだし。


「なら俺も、本腰を入れるか」

「こし?」 


 不思議そうに聞いてくるシアさんに、俺は「こっちの事」と誤魔化して仕事へ戻るように促す。



 そして、その日の深夜。

 俺は亜空間の中に居た。そこから、教会の支部を覗く。夜遅くと言うのに、煌々と灯りが灯るその部屋の隅で目を光らせていた。

 そこは、


「なんだ!この報告書は!」


 トドの部屋だった。

 トドは怒って、部下の修道士に向かって羊皮紙を投げ付けていた。

 何が書かれているんだろう?流石にここからだと読めないな。


 中身が見えないかと目を凝らしていると、それを修道士が拾ってしまう。

 震える声で、彼は弁明する。


「ですが、ブルトッド支部長。これが現状なのです。医者に掛かる者がめっきり減ってしまい、今月の収益は大幅に下がる予測でして…」

「バカ者が!儂は、その理由を聞いておるのだ!」

「理由としては…その…安い薬草が出回っているようで…」

「なんだとぉ!?!」


 トドは真っ赤になって怒鳴り散らす。どうしてそうなった、誰の差し金だと、矢継ぎ早に修道士を詰問する。

 そうして全てを聞き出すと、持っていた金ぴかの扇子をグギギと折り曲げる。椅子から降りて、たるんだ頬を震わせながら指を振る。


「今すぐその、クロ何とかという男爵をここに呼び出せ!神の名のもとに、儂が処刑してやる!」

「それが、そんな人物は街の何処にも居なくて…」

「だったら、それを売買している商会を潰せ!神を冒涜したとかなんとか言って、この街から排除するのだ!」

「そんなことしたら、街から何もかも無くなってしまいます!街の流通の大半を、あそこが担っているのです」


 ほぉ。そんなに大手だったのか、フランツさん。

 俺が胸を撫で下ろしていると、トドは脂肪だらけの頬を引き上げる。


「ならば、冒険者から税金を取るのだ。商人と同じ様に、採取した薬草にも多額の税を掛けろ」

「ええっ!?冒険者にですか?そんな事をしたら、この街の冒険者は居なくなってしま…」

「それがどうした!」


 トドが吠える。


「冒険者などと言うゴミ屑は、居ても居なくても同じだ!それより金だ。金が無くなる方が問題だ!奴らが違法に手にしているのは、儂の金だ。儂が得る筈だったものが、下民共に流れておるのだ…」

「支部長…分かりました。ですが、かなり時間は掛かるかと。冒険者ギルドも大きな組織。そこの仕組みを変えるとなると、先ずはギルド本部と領主、それから国王陛下の許可が必要に…」

「これを使え」


 トドはドシドシと絵画に近付き、その一部に手を添える。すると、そこがガコッと奥に押し込まれ、壁の一部が空いた。そこに入っていた宝箱を空けると、中からは金貨が溢れんばかりに入っていた。

 そんな所に隠し金庫が。


「こいつで領主と役人を買収しろ。外まで手を回す必要は無い。それで、一月の内に法を変えるのだ」

「そんな…バレたら大変なことになりますよ?ギルドにも。それに、イリーナ様にも…」

「大丈夫だ。儂に考えがある」


 トドはそう言い張って、修道士を下げさせる。

 彼が出て行った扉を見て、トドはニヤリといやらしい笑みを浮かべた。


「もしもバレたら、お前がやったことにすればよい」


 …どうやらそれが、トドの秘策らしい。

 呆れる俺の前で、トドは隠し金庫の金貨を掬い上げる。


「お前ら下民の代わりなど幾らでもいる。お前らは勝手に沸いて来る蛆虫(うじむし)だからな。だが儂は違う。儂はこのような下賤な世に居てはならん。もっと高みへ行かねば。正しい世界に。その為の金だ」


 ほぉ。こいつの目的は、ただの金集めじゃないのか。

 俺は、出そうになっていた手を引っ込める。見つけた金貨を全て奪ってやろうと思っていたが、止めた。

 それでは同じだ。こいつは、また金集めに奔走する。今より酷い仕打ちを、街の人達に強いるだろう。

 別の方法が必要だ。何かもっと別の方法で、こいつを陥(おとしい)れなければならない。

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― 新着の感想 ―
元々破綻していたようにも思えますが、無能無名のまましがらみ無く情報収集路線の完全なお亡くなり… スタンピード予備軍の駆除の一方、ボロい儲けの薬草関連依頼には手を出さない辺りで察されているか?w 金集…
現在のイランと同じく、政府の上に宗教がある国は碌な事になりませんね。 女神も女神像にべそべそ泣き顔させてないで、憤怒の表情をさせれば良いのですよ。 そしてイリーナを完全シカトですね。
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