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前世の記憶が蘇ったので、異能の力で全てを飲み込む  作者: イノセス


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13/39

13話~行きますよ?それ!~

【ムムゥ〜】


 収容したビッグスライムは、消える様子もなくフルフルしている。

 ただ消えるまでに時間が掛かるなら、このまま放置でも問題ない。でももし、こいつが闇属性とかだったりしたら、ちょっと不味い。消えるまでに相当な時間が必要で、その間に悪さをするかもしれん。

 亜空間内の物資を食われたらちょっと嫌だなぁ。ならば、


「直接、俺が相手をしよう」


 俺は亜空間の彼方から、教会で頂戴した剣を取り寄せる。それを持って攻撃したいところだが、生憎俺は剣がからきし。手に持てばきっと、自分の腹に刺してしまうだろう。

 だから俺は、剣を持たない。ただ、そこに出現させるだけ。

 ここは亜空間。俺の世界。何処へだろうと、何処までだろうと動かせる。


「先攻は頂くよ」


 体を揺らすビッグスライムに、俺は剣を飛ばす。奴の核を狙って真っ直ぐに。その速度はかなりの物で、まるで弾丸の如くスライムの体を貫いた。

 だが、直ぐに止まる。スライムの体に深く突き刺さったそれは、核へ到達する前に停止し、スライムの体に包まれてしまう。そして、溶かされる。ジュゥ~という音を立てながら見る見る分解されてしまった。


 ふむ。1本では届かないか。

 なら、これならどうだ?


 俺は更に3本の剣を取り寄せ、1本ずつ連続で射出する。狙うは同じく、スライムの核だ。

 1本目。先程と同じ所で止まる。でも、そいつが作った道を2本目が進み、1本目の柄を叩いた。3本目も同じように、先人達を押し込む。幾ら奥深くに隠している核も、これには堪らず…。


【ムゥッ!】


 …剣先で貫かれる前に、核を移動しやがった。

 なんて野郎だ。単純な構造の体だからって、心臓の位置を変えるなんて。


「良いだろう。ならば総力戦だ」


 俺は、教会から奪った全ての剣を呼び寄せる。それを、全方位に配置する。剣先は全て、スライムに向ける。

 さて、


「逃げられるか?」


 俺は一斉に、剣を発射する。

 すると、スライムも反応する。ハリネズミの様に全身をトゲトゲに変え、そこから酸を吐き出した。

 

 剣を溶かすつもりか。なかなかやる。

 だが、無意味だ。


 俺は剣の前に亜空間を開き、酸が溶ける前にワープさせる。そして、奴の体の前に出口を作る。

 そこから今、無数の剣が飛び出して来た。

 

 フニュッ。フニュ、フニュ、フニュ。


 刺さる音こそ気が抜けそうだけど、無数の剣が深々とスライムを串刺しにする。余りの数に、スライムの体が白銀色に染まっていく。

 そして、その内の1本がスライムの核を貫いた。


【ムッ】


 短い断末魔。その後、スライムを形成していた液が一気に流れ出す。

 そこに残ったのは、他のスライムより濃く大きな魔石だった。


「終わりかな?」


 完全に倒した事を確認した俺は、外に出て地下道を見回す。

 汚泥もスライムも無くなったからか、臭いは随分と薄くなった。でも、臭い事に変わりはない。

 俺は念入りに見回った後、そこを後にする。そして、入口の木蓋を取り外そうとすると、それは勝手に動き出した。

 おっと、自動ドア?


「お帰り!クロード。どんな感じだった?」


 シアさんだ。彼女が外で待っていてくれた。

 俺は亜空間からスライム達の魔石を取り出し、彼女に見せた。


「群生していたよ。取り敢えず全部駆除出来たと思うから、暫くは安心だと思う」

「うわっ、すっごーい!こんなに倒したの?」

「ボスみたいのも居たよ。ほら、これがそいつの魔石」

「うわぁっ!おっきいー!」


 ボス魔石を持って、ぴょんぴょん喜ぶシアさん。

 気に入ったのなら、このままプレゼントしようか?


「じゃあ、シアさん。俺は報告に行くから」

「ベノムスライム討伐の報告?」

「いや、汚泥の方さ。ここでも大量に汚泥を回収したから、集積所に行って換金しないと」


 でも、スライムの方も報告しないとだよな。ランク外の仕事だけど、受け付けてくれるかな?

 心配していると、シアさんは目を丸くする。

 

「えぇ!?スライム退治だけじゃなくて、お掃除もしたんだ!クロードは強い冒険者なの?」

「いやいや。駆け出しだよ。でもそうだね、便利な"物"を持っているから」

「あっ!あの魔法のマントでしょ?何でも消せて便利だよね」


 シアさんは、俺のマントを魔道具とでも勘違いしていそうだ。

 こいつ自体は、ただの布切れなんだけどね。


 

 俺はシアさんと別れて、集積所へ赴く。

 彼女も来たいと言っていたが、お店を勝手に飛び出してしまったのを思い出し、慌てて戻って行った。

 正義感が強いのは良いことだが、程々にね?


「はい、つぎぃー!」


 集積所には、街中からドブさらいの人達が集まっていた。みんなはバケツや押し車で汚泥を運び、汚泥を置いて賃金を受け取っていた。

 お年寄りや小さな子供ばかりだ。この仕事、本当に人気が無いんだな。


「はい、つぎぃ!」


 子供達が受け取るお金もはした金だ。手押し車で銅貨数枚。バケツだと鈍色の貨幣数枚しか貰えない。

 ヤバいな。相場が相当低いのかも。こりゃ、全部を出し切らないと。


「つぎぃ!」


 俺の番になる。

 目が虚ろな役人が汚泥の山を指さし、そこに捨てるように無言の圧をかけてくる。そこに俺が立つと、目を開く。俺のバケツを凝視した。

 量を測ろうとしているのかな?じゃあ、とくとご覧あれ。

 俺はバケツの口を汚泥の山へと向け、構える。底の方に亜空間を開いて、排出の準備をする。

 その安全確認をしている最中、役人が呆れた声を出した。


「おい、全く取れてないではないか。何をやっていたんだ?貴様は」

「少々お待ち下さい」


 せっかちさんめ。見てろよ?

 俺は亜空間から、汚泥を呼び寄せる。


「もういい!とっとと失せろ!この無能…」

「行きますよ?それ!」


 ドバァアア!!

 俺が声を上げると、バケツから勢いよく泥が噴射する。弧を描いて、大量の泥が山となる。その様は、まるで鉄砲水の様であった。

 それを見て、役人が悲鳴を上げる。


「なっ!なんだこりゃぁあああ!!?!」

「「「うぉおおお!!」」」


 周りの人達も、声を上げて驚く。


「なんちゅう量じゃ…」

「すっげぇ!泥の噴水だ!」

「どうなってんだ?あのバケツは、アイテムボックスにでもなってんのか?」

「バカ言いなさんな。こんなとんでもない量が入るアイテムボックスなぞ、聞いた事が無いわい」


 皆さんが言うように、バケツは見上げる程に大きな汚泥の山を3つ作り、そこで排出作業を終えた。

 俺も一度、亜空間内を確認するが…うん。残存物ナシッ。ヨシッ!


「終わりました!」


 そう言って振り返ると…役人が腰を抜かして尻もちを着いていた。

 大丈夫ですか?


「おまっ、お前、それは…スキルか?それとも魔法か?」

「まぁ、そんなところです」


 面倒くさくて、適当に答える。

 そして、彼の方に手を差し出す。


「それより、日当を下さい」



 ドブさらいのお金を貰った俺は、街の公衆浴場に来ていた。亜空間で退避しながらとは言え、やはり悪臭は付いてしまった。

 加えて、予想外に報酬を貰えた事も大きい。

 大銀貨8枚に銀貨5枚。日本円で約85万円だ。これだけ儲ければ、少しくらい贅沢しても大丈夫だと、ちょっと良いお風呂屋さんに来たのだった。

 

 …いや、最初は安い風呂屋に行こうとしたんだ。でも、あまりに汚くて退散した。亜空間で覗いて見たら、お湯もドロっと変色していたし。

 だからこちらの高い方に来たんだけど…こっちは流石に綺麗。以前映画で見た、古代ローマのお風呂みたい。

 大丈夫だよな?湯船に飲み込まれて、テルマエに飛ばされたりしないよな?


「今日の下町は、どうしたんだろうな?」

「ああ、ドブ臭さが無くなっていたな」


 風呂に浸かっていると、そんな声が聞こえた。

 今日は街が臭くない。以前の様だと。

 

 ふっふっふ。もう、俺の仕事を気付いてくれる人が居るのか。そりゃ、今日一日で地下の汚泥は全て回収したからね。

 回収した汚泥も、今頃土魔法で混練されて、畑の肥料に生まれ変わっている頃だ。臭いが無くなるのは当然だろう。


 身も心も気持ち良くなった俺は、その足でギルドに向かう。そこで、ベノムスライム討伐の報告をしようとカウンターに並んだ。

 すると…。


「来たわね。問題児」


 何故か、クレールさんに睨まれてしまう。

 なんだろうか?


「行政から報告が来ているわよ。Eランクを語る冒険者が、たった1人で3ヶ月分の泥を回収したって。未知のスキルで、泥の山を幾つも築いたらしいじゃない」

「ええ…まぁ…」


 しまったな。やっぱり、亜空間をスキルなんて嘘ついたのが不味かったのか?

 どう弁明するか考えていると、クレールさんが手を出してくる。

 ええっと…この手は?


「他にもあるんでしょ?あんたが可愛い女の子と、地下道に潜ったって目撃情報があるのよ」

「それは、それは」


 街の情報網は侮れんと痛感しながら、俺はカウンターの上に両手を乗せる。その影に亜空間を開き、魔石を山と積む。

 周りがザワザワする。


「マジか、これ」

「青色の魔石…間違いない。ベノムスライムの魔石だ」

「1個、宝石みたいに綺麗でデカイのがあるぞ?これはなんのだ?」


 ビッグスライムの魔石を眺める冒険者…確か、俺にお酒を奢ってくれたフィンさんだったか。彼が、唸りながら査定する。Cランクの魔石で、大銀貨数枚の価値があるとか。

 本当なのだろうか?

 俺はおクレールさんを見る。でも彼女は、口をパクパクしているだけだった。

 そして、


「また、明日にでも来てちょうだい。取り敢えず今日は、休ませて…」


 そうですよね。貴女も働き詰めだ。

 俺も休むように言われ、ギルドを後にした。



「本日は、どのようなご要件でしょうか?」


 言われた通り休もうと、俺は宿屋を尋ねた。あまりに安宿だと盗難や騒音等の問題があると思った為、ある程度グレードの高い宿を選んだ。

 クレールさんからもお墨付きの宿だ。取り敢えず、クエスト報酬で大銀貨5枚を頂いたので、絶対にここを使いなさいと言われたのだ。


 でも、間違いだったかもしれない。いや、この場合は場違いと言うべきか。

 俺の周りは、ドレスや上品な布の上着を着た紳士淑女が出入りしており、俺のような麻のシャツを着ている者は1人も居ない。高級宿は、貴族の魔窟になっている様だった。

 …そりゃそうか。


「失礼しております。何泊かさせて頂きたく、こちらに参りました。しかし、ドレスコードを誤ってしまったみたいですね。出直します」


 俺がそう答えると、受付のジェントルマンは少しだけ目の鋭さを緩め、「結構ですよ」と俺を引き留めた。


「ここには、上級冒険者の皆様もいらっしゃいます。身分の差で、ご宿泊をお断りする事はございません」


 おや、そうなのか。


「ですが、それなりのサービスを提供させて頂いていると自負しております。ですので、それなりのお代を頂戴しているのです」


 ああ、なるほどね。俺の支払い能力に疑問があると。

 そこは、大丈夫だと思うけど…?


「お幾らでしょうか?」

「一番お手頃なお部屋で、1泊大銀貨1枚を頂いております」


 10万か。安宿のタコ部屋が300円とかだから、相当なお値段だ。

 でも、それくらいじゃないと怖い。あっちはノミもシラミもいるだろうし。


「ではその部屋を、7泊取らせて下さい」


 俺は、大銀貨7枚をカウンターの上に置く。

 受付が目を少し見開き、直ぐに頭を下げた。


「承りました。こちらに、必要事項をご記入下さい」


 普通に、羊皮紙と羽根ペンを渡してきたな。ここに泊まる奴は、字が書けて当たり前なのか。

 俺は慣れない紙質に苦戦しながらも、何とか名前と冒険者Eランクな事を書き終える。それを読んだ受付が、目を丸くした。

 悪いな、Eランクで。


「失礼ですが、お客様は掃除屋のクロード様でいらっしゃいますか?」

「掃除、や?」


 何それ?と聞き返すと、ジェントルマンはしっかりと頷く。


「左様でございます。大変有用な魔道具とスキルをお持ちで、街中の悪臭を一瞬で消してしまった冒険者だとか」

「あぁ…ドブさらいの事です?」

「左様でございます」


 受付はそのまま、深々と頭を下げた。


「そうとは知らず、大変な失礼を致しました。ご容赦ください」

「いえ、とんでもない」


 そもそもだね、もうそんな2つ名が付いてる事にびっくりだよ。

 俺が肩を落とす前で、受付は鍵を差し出す。そいつには〈スイート〉の文字が刻まれていた。

 ええっ!?

 驚いて見上げる俺に、受付は優しい笑みを浮かべる。


「どうぞ、お受け取り下さい。当ホテルからの、心ばかりの品でございます」


 ええ…。良いの?

 あまりの急展開に、鍵を受け取る手が震えてしまった。

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― 新着の感想 ―
おいクレール、休んでないで徹夜で査定しろよ。
清潔で小さくて水色とかで可愛らしいスライムなら仲間への道もあったかも知れないが、雑菌持ちはアカンw 魔法のマント…女神教会と政治的取引が必要になる際、イリーナ様に返却して聖遺物とか喧伝されたりも?w…
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