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【コミカライズ①巻発売中】俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です  作者: シンギョウ ガク


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第83話 こんなとこにも日本人の影響が……。

 まぶしいくらいの青い空、白い入道雲、港から漂ってくる潮の香り――そして、沖に座礁した戦艦……!? 戦艦っ!? 待て、待て! 錆びて朽ちてるが、どう見ても金属製の船が座礁してるんだがっ!?



 リスタルポートの街に到着し、いったんヴィーたちと別れた俺たちは探索者ギルドを目指し、海岸の堤防沿いの道を歩いていた。



 堤防が切れ、視界が開けた時、さっきの光景が目に飛び込んできた。



「あー、あれですか? 前に父たちと一緒にこの街に来た時に聞いた話ですが、渡り人の作ったいくさ船らしいですよ。金属の船が海に浮いてたらしいです」



 俺の視界の先にあるものを察したアスターシアが、座礁して朽ちているモノの説明をしてくれた。



「座礁してるが、今は動かないんだよな?」


「ええ、あたしたちの来たクルリ魔導王国の空中浮遊都市との戦闘で損傷してから、機能を停止して座礁しているらしいです。空中浮遊都市が地上に落ちる直前だと聞いてますから、だいたい300年くらいは経ってるはずですが」


「300年か……。あの金属製の造船技術は今も?」


「いえ、今の船は木造船ですし、あのような大型の船を作る技術は、渡り人の死後、残念ですが失われてしまったらしいですよ」



 港に停泊している他の船にチラリと視線を向けてみるが、アスターシアの言った通り、木造船が大半であり、大きさも座礁している船の半分にも満たないものだ。



 技術の継承はされなかったという彼女の話は本当らしいな。



 空中浮遊都市はある程度、技術継承してたことを考えると、技術継承されなかった戦艦を作った日本人のギフト能力がよほど特殊だった可能性がある。



 まぁ、戦艦だと技術継承されたとしても戦争の道具にされてたわけで、アレを作った日本人には悪いが、そんな危ない技術が途絶えてくれてよかったと思う。



 ただでさえ、この世界でやりたい放題してイメージが悪いわけだし。


 

「アレは戦いの道具だから、技術継承されてなくてよかった」


「まぁ、そうなのですが……。いちおう、アレには派生の技術がありまして」


「派生の技術?」


「えーっと、アレです。アレ」



 アスターシアは港と反対側にある山の方を指さした。その指先を追っていく。



 はぁっ!? 空を飛んでる!? 待って、待って! 金属製の船が空を飛んでるって!? 現代日本でも船は海の上なんだがっ!?



「海の上は木造船なんですが、アレの派生で作られた魔導戦艦は、金属製ですが飛ぶんです。なんでも、クルリ魔導王国の空中浮遊都市が落下したあと、その技術者を保護しそちらも取り込んだという話もあります。おかげで、リ・エオー半島同盟国の所有する魔導艦隊は大陸最強の火力と言われてますね。1隻で都市一つ灰燼に帰す力があるとかないとか」



 それって、日本人が持ち込んだ技術が、めちゃくちゃヤバい方向に進化してるじゃん!? クルリ魔導王国の空中浮遊都市の比じゃないくらいやべえ!?



「その魔導艦隊って使われたことがある?」


「いえ、公式には出動したことは聞いたことがありませんね。見せかけの艦隊だと言う人もいますが……」



 マジで、見せかけであってほしい……。そんな危ない兵器が存在してほしくないぞ……。


 

「今は近隣国との関係は良好ですし、よほどの国家の危機ではない限り、出動はないと思います」


「そうあってほしい。なぁ、ガチャ」



 抱きかかえていたガチャが、空に係留されている魔導戦艦を見て、レバーをギュイン、ギュイン回して怒った様子を見せていた。



 ガチャもあんまりああいう破壊兵器は好きじゃないみたいらしい。



「ですね。ああいうものは、使わない方がいいとあたしも思います。おっと、話していたら目的地を超えてしまいそうでした。探索者ギルドに着いたみたいです」



 海岸沿いに立つ石造りの建物には、探索者ギルドの看板が掲げられており、リアリーさんが経営してたホーカムの街のものに比べたら、十数倍も大きな施設だった。



 そして、建物に出入りする探索者の数もかなり多い。



 俺たちが建物に入ろうとすると、ギルドの制服を着た男性たちが声をかけてきた。



「見たことない顔だな? 新顔か?」


「悪いがタグペンダントを見せてくれるか?」



 首元にかけていたタグペンダントを出して、男たちに見せる。



 アリアーナもまた俺と同じように見せていた。



 男たちは手にしていたスマホ状の機器をタグペンダントに近づける。



「実績不足だな。クルリ魔導王国内でBランクダンジョンをクリアしてるらしいが、さすがにこの実績数では、ここの依頼を受けられない。あんたらは第二探索者ギルドの方だ」


「第二探索者ギルド?」


「ああ、あっち側だ。あっち」



 ギルドの制服を着た男が、海岸沿いの道の端に建っているボロボロの建物を指差す。



 今にも取れそうな看板には『リスタルポート第二探索者ギルド』と書かれていた。



「あっちで実績を積んでこれば、こっちが使えるようになるぜ。まぁ、あそこはごみ溜めだから頑張れればの話だがな」


「相方は口が悪くてすまないな。これも、このリスタルポートでの探索者の質を確保するための施策だ。我慢してくれ」


「以前は、このような施策はなかったと記憶しておりますが?」


「ここ最近、立て続けに国から依頼されたダンジョン探索に派遣したやつらがしたしくじってな。国からもダンジョン協会からも実力査定を厳しくしろとお達しがあったのさ」


「そういうことだから、あっちで実績を積んでくれ」



 男たちはそれだけ言うと、また入り口の前に戻っていった。



「ヴェルデ様、どうします?」


「まぁ、向こうの第二探索者ギルドで仕事を探してみて、微妙なら他の街に移動でもいいだろ」



 正直、身バレ防止の観点からガンガン仕事する気はないし、食い扶持を稼ぎつつ、ガチャのコイン集めて自分たちがレベルアップができるくらいの仕事ができればいい。



「それもそうですね。向こうは閑散してそうなので、ガチャ様を歩かせるのにはちょうどいいかもしれません」



 歩いていいと聞いたガチャが、俺の腕からスポンと飛び出すと、地面に華麗に着地する。



「いちおう、ハーネスにリードを付けさせてもらうからな。ホーカムの街とは違って大きな街だし、文句を言うやつがいるかもしれない」



 振り向いたガチャは『了解!』と言いたげに、レバーをギュインギュインと勢いよく回した。



 賢いガチャがトラブルを引き起こすとは思えないが、安全第一。



 ガチャが先導するように駆け出し、ボロボロの第二探索者ギルドに着くと、扉を開けて中に入っていく。



 ガラ悪っ!? みんながこっちを見てるんだが!? あと、酒くせえ! まだ、昼間だぞ! アスターシアを茶化すように口笛とか吹くなって!



「アスターシア、俺の後ろに」


「は、はい」


「ガチャ!?」



 ガチャは臆することなく、一番ガラの悪そうな四人組の探索者たちの前に駆け出していく。そして、構ってほしいと腹を見せてアピールをし始めた。



「なんだぁ、こいつ? オレ様にかまってほしいのか? 腹なんか見せやがってよ―!」



 ヤバい、ヤバい、絶対ヤバいやつ! 目が充血してて、酒くせえし! 絶対に絡んだらダメな奴になんで行くんだっ!?



「へへへ、こいつでストレスの発散をさせてもらうとするか」



 ヤバい、ヤバい、あの目! 絶対ガチャを痛めつけようとしてやがるっ! そうはさせ――



 スキンヘッドのいかつい探索者がガチャを優しく抱え上げると、自分の顔をガチャの腹に近づけてスリスリし始めた。



「くぁあああああっ! キマるぅう! やっぱ憂さ晴らしには探索犬だよなっ! はぁああああっ! 最高ぅ!」



 え? どういうこと?



 ガチャを助け出そうと動きかけた俺は、アスターシアと視線が合い、お互いに頭にクエスチョンマークが浮かんだ表情を浮かべた。



「あ、兄貴ぃ! 独り占めはズルいっすよ! オレもしてぇ!」


「待て待て、オレが先だ!」


「あたいが先だって!」


「まだ、オレが楽しんでるんだが――」



 いかつい男に優しく抱きかかえられたままのガチャは、男の手からスポンと抜け出すと、地面に降りて集まってきた探索者たちに、ハーネスに付いてる背中の小さなバッグを見せて、おやつをおねだりし始める。



「お、おやつあげたらスリスリしてもいいのか?」



 男の問いにガチャが頷いて答えた。



「オレが先だ! おやつやるぞ! ほら、ほら!」


「あたいが先だって! お肉がいいだろ!」


「魚肉もあるぞ。ほらー」



 ガチャ、商売上手すぎだろ……。



「はい、ガチャ様。皆様からのおやつの請求はダメですよー。今日は食べてますよね?」



 アスターシアの声に、ガチャがビクンと反応を示す。



 そういえばここに来る前に、おやつを食べてた気がするぞ。さすがに食べすぎはよくない。



「嬢ちゃん。この子の飼い主かい?」


「いえ、ガチャ様の飼い主はこちらのヴェルデ様です」



 最初にガチャを抱き上げたいかつい男の視線が、俺の方に注がれた。



「へぇ、貴族のボンボンって感じだな。メイド連れての探索者修行ってところか?」



 ガチャを吸って少し素面に近づいたのか、男は案外まともな様子で喋りかけてきた。



「まぁ、そんなところだ。とりあえず、ガチャはもうおやつを食べてるんで、今日はあげないでほしい」


「固いこと言うなよ。ガチャが欲しがってるんだしよー」



 男の言いたいことは俺にもよく分かる。俺もガチャには甘々だしな。



 でも、あんまりおやつをあげすぎると、世話係のアスターシアがお野菜てんこ盛りの食事をガチャに出すので、それは避けたい。



「すまないな。栄養管理はちゃんとしてるんだ」


「そうか……。それは残念だ。みんな聞いたか? ガチャへ勝手におやつをやるんじゃねえぞ! 大事な探索犬が病気になっちまうかもしれねえからな!」


「「へーい」」


「分かったよー」



 おやつがもらえないかもしれないと察したガチャが、いかつい探索者たちの足元に行くと前足で靴を必死に叩いておねだりする。



「くぁああ! ガチャちゃん、すまないねぇ! おやつがあげられねえのよ!」


「兄貴ぃ! オレ、つれえっす!」


「ダメだ! 見てらんねぇ!」



 もらえないのを確信したのか、ガチャはその場に倒れ込むと、弱弱しくレバーを回して哀れさを見せた。



「ヴェルデ、それとそっちの嬢ちゃんはアスターシアだったか? ガ、ガチャに一個だけおやつあげたらダメか? 見てられねぇえよ!」


「アレはガチャ様の手なので、ダメですよ」


「まぁ、たしかにそうだな……。でも、アスターシア、そろそろ昼食の時間じゃないか?」



 俺もガチャのあの姿にはとても弱いので、栄養管理強硬派のアスターシアに対し、妥協点を提案してみた。



 探索者ギルドに掲げられているデジタル時計に目をやったアスターシアが、しばらく無言で考え込む。



 やがて、肩をガクリと落として大きなため息を吐いた。



「しょうがありませんね。では、昼食としてカウントいたします」


「すまない」


「恩に着るぜ! 嬢ちゃん!」


「皆様、ガチャ様に甘いですね。まぁ、あたしも甘いですが……。ガチャ様、昼食ですよー。起きてください」



 床に横たわってレバーを弱弱しく回していたガチャが、ピンと立ち上がると、テーブル席のソファーの上に行儀よく座って、昼食が来るのを待っていた。



「賢いな。ガチャは……」


「まぁ、そうだな。うちのガチャはめちゃくちゃ賢いぞ」


「そういえば、あんたらは新顔みたいなだな。これも何かの縁だ。飯でも一緒に食おうぜ。奢ってやるよ。腹減ってるだろ」



 まぁ、空いてると言えば空いてるが……。ごちそうになっていいものだろうか?



 でも、見た目はヤバいけど、ガチャが吠えずにおねだりしにいったことからも、案外いいやつな気はする。



 ガチャから繋がる縁は、大事にしといて損はないだろう。



 それにここがごみ溜めって言われてる理由も知りたいしな。情報収集がてら飯を食うのもありだ。



 チラリとアスターシアの方を見ると、俺と同じような考えなのか、頷いてくれていた。



「じゃあ、遠慮なくおごってもらうとしよう。えーっとそういえば名前……」


「オレはジャイスだ。あっちがニー。そっちがローの兄弟。女はエフィって名だ。よろしくな!」


「よろしく頼む」



 俺たちはジャイスの勧めたテーブル席に腰を下ろすと、ガチャを交えて、みんなで昼食を取ることにした。

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