父
眼を覚ますと、もう朝で、カレンダーを見ると土曜日だった。
気だるい体を起こして、リビングへ向かった。
「凛歩ちゃん、おはよ」
そう声をかけてきたのは、名前は知らないが、父さんと呼んでくれと言ってきた人だった。
「おはようございます」
私はそっけなく挨拶すると、相手はクスクス笑った。
「最初に会った時の君のお母さんそっくりだ」
そう言われて、いい気はしない。
が、似ていると言われてもおかしくないであろう。
理由は簡単、血が繋がっているから。
「まぁ、ちょっと話をしよう」
急に真面目な顔をして話し始めた。
「はい」
「君の母さんは、夜の女だった。
知り合ったのは、そこでね。
話をしたら娘がいると聞いた。僕は君の母さんに一目惚れをしてな。
もうずっと、一緒にいる。いたいと思ってる。
だから、君との約束。
君の母さんを働かせなくていいように、僕が一生懸命頑張る。
見守っていてくれるか?」
この人は、要するに、母さんを幸せにするから、結婚を了承してくれって言いたいだけなんだ。
「はい、母がそれで幸せなら別に結婚も反対しません」
私がそれを言い終わると、この人は、ため息をついた。
「僕口が下手だから、理解してくれないと思ったけど理解してくれてよかったよ」
さっきのため息は安堵のため息だったのだろう。
私は、居場所がなくなった気がして、胸が苦しくなったが、この人なら大丈夫かもしれないと思った。
なんでかはわからないけれど。