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神京都監査録 ~独立公文書管理審査機構 第六課~  作者: タツ梵
第1章

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第七話 追跡者

 車両は静かな区画を走り続けていた。

 交通量ゼロ。

 歩行者ゼロ。

 ドローンすら見当たらない。

 神京都とは思えないほどの静寂だった。


 ナミは端末を開いた。

 現在位置を確認する。

 通信状態正常。

 車両状態正常。

 貨物状態正常。

 表示上は何一つ問題がない。


「なにかおかしい気がするんだけどなぁ……」

 独り言が漏れる。

 誰もいない車内では遠慮する必要がなかった。


 その時だった。

 バックモニターが再び瞬いた。

 ノイズ。

 一瞬。

 本当に一瞬だけ。

 黒い影。


 ナミの表情が変わる。

 慌てて、窓を開けて後ろを見る。

「近い、噓、有人運転?」


 すぐに記録映像を呼び出す。

 だが。

 映像には何も残っていない。

 正常。

 異常なし。

 その表示だけだった。

「絶対おかしい……」


 背筋が少し冷える。

 車両AIへ問い合わせる。

「後方車両を確認して」

『後方車両は存在しません』

「いや、いるって」

『確認できません』

 機械的な返答。

 ナミはため息を吐いた。


 見間違い。

 疲労。

 錯覚。

 そう片付けることもできる。

 だが。

 肉眼で捉えてしまったので、そうはできない。


 窓の外を見る。

 暗い海。

 人工護岸。

 無人の道路。

 誰もいない。


 そして。

 数メートル後方。

 街灯の届かない暗闇の中。

 一台の黒い車両が無灯火で走行していた。


 都市交通網へは登録されていない。

 識別信号も発していない。

 通常であれば即座に警報が鳴る存在だった。


 だが。

 今夜に限っては違う。

 監視網は沈黙していた。

 通信記録は消去されていた。

 交通管制データも改竄されていた。

 誰かが。

 意図的に目を潰している。


 車内。

 複数の人影。

 全員が無言だった。

 前方モニターには一つの表示だけが浮かんでいる。


 PR-0001

 その文字を見つめながら、一人が静かに言った。

「目標確認」

 感情のない声だった。


「予定ルートへ誘導完了」

 別の声が答える。


「都市監視網は?」

「沈黙中」

「残り時間」

「三分」

 短いやり取り。

 それだけで十分だった。


 車内に緊張はない。

 慣れている。

 何度も訓練してきた。

 何度も想定した。

 そして今夜。

 計画は最終段階へ入ろうとしていた。


 前方では配送車両が走り続けている。

 何も知らないまま。

 PR-0001を載せたまま。

 追跡者たちは静かに距離を詰め、ついに仕掛けた。

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