第十三話 配送員の仕事
沈黙は長く続かなかった。
「侵入者だ!」
誰かが叫ぶ。
同時に数人が武器へ手を伸ばした。
ナミはため息を吐く。
「だよね」
話し合いで済むとは思っていない。
だが一応言うだけは言った。
配送員としての礼儀である。
次の瞬間。
ナミは動いた。
最も近い男へ踏み込む。
スタンロッドが唸る。
脇腹。
手首。
顎。
三連撃。
男が床へ崩れ落ちた。
さらに横。
振り下ろされた警棒を回避する。
身体を半歩ずらすだけ。
空振り。
がら空きになった腹部へ一撃。
呼吸が止まる。
男が膝をついた。
「二人」
数える。
配送件数を数えるように。
淡々と。
武装集団が一斉に動き出した。
倉庫内に怒号が飛び交う。
包囲。
確保。
排除。
聞き慣れた言葉だ。
ナミは中央へ踏み込んだ。
相手が多いなら囲まれる前に崩す。
それだけだった。
左。
右。
前。
後ろ。
視界の隅で全員の位置を把握する。
最短。
最速。
最小。
無駄な動きは一つもない。
男たちは困惑していた。
目の前にいるのはお役所下請け配送員のはずだった。
それなのに。
まるで訓練された工作員だった。
スタンロッドが振り抜かれる。
火花。
悲鳴。
転倒。
数秒後には五人が床に倒れていた。
とはいえナミの目的は戦闘ではない。
PR-0001。
それだけだった。
倉庫中央。
開封作業は中断している。
責任者らしき男が後退していた。
コンテナの横。
まだ間に合う。
「返してもらうよ」
ナミは一気に距離を詰める。
その時だった。
責任者の男が笑った。
初めて表情が動いた。
不自然なほど落ち着いている。
「なるほど」
男が呟く。
「報告通りか」
「何が?」
ナミが問い返す。
男は答えない。
代わりに視線だけを向けた。
倉庫奥。
巨大な搬入口。
重い金属音が響く。
嫌な音だった。
巨大なシャッターがゆっくりと開き始める。
嫌な予感がした。
夜風が吹き込む。
外の闇が見える。
その向こう。
大型車両。
武装した人影。
増援。
「……また?」
ナミは思わず呟いた。
今日は本当に運が悪い。
責任者の男は笑みを浮かべたままだった。
「君は予想以上だった」
「だから予定を変更する」
その言葉と同時に。
倉庫内の全員が一斉に後退した。
戦うためではない。
時間を稼ぐためだ。
PR-0001を逃がすために。
ナミは即座に理解する。
そして舌打ちした。
「それ、配送事故扱いになったら面倒なんだけど」
誰も笑わなかった。
当然だった。
次の瞬間。
倉庫全体の照明が落ちた。
暗闇。
非常灯だけが赤く点灯する。




