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神京都監査録 ~独立公文書管理審査機構 第六課~  作者: タツ梵
第1章

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第十二話 侵入

 夜の倉庫街は静かだった。

 海風だけが吹いている。

 遠くで機械の駆動音が聞こえる。


 ナミは倉庫の陰を移動する。

 足音を消す。

 呼吸を整える。

 視線だけを動かして周囲を確認する。

 明かりの点いた倉庫を発見した。


 倉庫番号は消えかけている。

 使われていない施設のように見える。

 だが違った。

 入口付近に人影がいる。

 二人。

 武装。

 巡回ではない。

 警備だ。


「当たりか」

 小さく呟く。


 PR-0001はあの中にある。

 確信した。

 ナミは少し離れたコンテナの陰へ身を潜める。

 正面突破はできる。

 できるが騒ぎになる。

 荷物を回収するだけなら避けたい。


 周囲を観察する。

 監視カメラ。

 照明。

 非常口。

 搬入口。

 そして屋上へ続く外階段。

 数秒。

 数十秒。

 情報を頭の中で整理する。


「正面は無し」

 独り言。


 誰も聞いていない。

 ナミは倉庫裏へ回り込んだ。

 海側。

 錆びた非常階段が見える。

 立入禁止表示。

 今となっては意味を持たない。


 静かに登る。

 一段。

 また一段。

 金属がわずかに軋む。


 止まる。

 誰も気付かない。

 再び進む。

 屋上到着。

 倉庫内部を確認できそうな天窓を発見する。

 ナミは身を伏せたまま覗き込んだ。


「……何あれ」

 思わず呟く。


 PR-0001があった。

 倉庫中央。

 照明に照らされている。

 周囲には武装した男たち。

 十人以上。

 さらに。

 見慣れない機材が並んでいた。


 解析装置。

 通信機器。

 搬送設備。

 まるで何かの研究施設だった。


 ただ荷物を盗んだだけではない。

 最初からここへ運び込むつもりだったのだ。

 ナミは眉をひそめる。


 その時。

 一人の男がPR-0001へ近付いた。

 責任者だろうか。

 他の連中の態度が違う。

 男はコンテナ表面へ手を置いた。


「開封を開始する」


 倉庫内へ緊張が走る。

 ナミの表情も変わった。

『ちょっと待って…』

 思わず声が漏れそうになる。

 開ける?

 今?

 届け先へ持っていくのではなく?


 嫌な予感がした。

 これまでとは比較にならないほどの。

 男が認証装置を起動する。

 コンテナのロックが解除され始める。

 電子音。

 解除進行。

 あと数秒。


 ナミは考える。

 スニーキングでの奪還。

 それとも。

『いや、無理』

 即答だった。


 届け先へ届ける荷物を勝手に開けられる。

 配送員として見過ごせる話ではない。

 ナミは立ち上がった。

 静かに。

 だが迷いなく。

 スタンロッドを握る。


 そして。

 屋上から倉庫内部へ飛び降りた。

 着地。

 全員の視線が集まる。

 沈黙。

 数秒。


 男たちは呆然としていた。

 当然だ。

 誰も来ないはずだった。

 その沈黙を破ったのはナミだった。


「配送中の荷物なんですけど」

 スタンロッドを肩へ担ぐ。

「勝手に開けないでもらえます?」

 倉庫内の空気が凍り付いた。

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