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神京都監査録 ~独立公文書管理審査機構 第六課~  作者: タツ梵
第1章

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第十話 喪失

 武装ドローンが降下する。

 銃声が響く。

 海風が唸る。


 ナミはスタンロッドを振り抜いた。

 火花。

 一機。

 また一機。

 ドローンが海へ落下する。


 だが数が違った。

 敵は減らない。

 次々と現れる。


 増援部隊は完全に役割を分担していた。

 ナミを足止めする者。

 周囲を警戒する者。

 そして。

 PR-0001を回収する者。


「させるか!」

 ナミは駆けた。


 黒装束を弾き飛ばす。

 一人。

 二人。

 進路を切り開く。


 あと少し。

 あと数メートル。

 手が届く。

 だが。

 間に合わなかった。


 コンテナ固定具解除。

 搬送完了。

 PR-0001は黒い輸送車両へ積み込まれる。


「くっ……!」

 ナミは歯を食いしばった。

 その瞬間。

 敵部隊が一斉に後退を開始する。

 撤退。


 目的達成。

 最初からそれだけだった。

 ナミを倒すことではない。

 PR-0001を奪うこと。

 それだけだった。


 遠くでサイレンが聞こえる。

 近い。

 かなり近い。

 海上道路の向こうに赤色灯が見えた。

 神京都警察。

 ようやく到着したのだ。


 だが。

 敵の方が早かった。

 輸送車両のドアが閉まる。

 エンジン起動。

 車列が動き始める。


「待て!」

 ナミは叫ぶ。

 当然止まらない。

 黒い車列は海上道路へ飛び出していく。


 数秒後には視界の向こうへ消えてしまうだろう。

 警察は来る。

 検問も張る。

 捜査も始まる。

 普通ならそこで終わりだった。

 普通の配送員なら。


 ナミは立ち尽くしたまま車列を見つめた。

 PR-0001。

 届けるはずだった荷物。

 何が入っているか知らない。

 誰が待っているのかも知らない。

 だが。

 届け先は存在する。

 それだけは分かっている。

 だから。

 失くしたままでは終われなかった。


「……警察じゃ間に合わない」

 小さく呟く。

 追跡対象は今この瞬間も離れていく。

 検問が敷かれる前に消える。

 証拠も消すだろう。

 訓練された連中だ。

 待てば待つほど追跡は難しくなる。


 ナミは振り返った。

 損傷した配送車両。

 警告灯が点滅している。

 状態は最悪。

 それでも走れる。

 まだ走れる。

 それだけで十分だった。


「残業延長かぁ……」

 自嘲気味に笑う。

 誰も聞いていない。

 夜風だけが吹き抜ける。


 遠くから警察車両が近付いてくる音がする。

 ナミは運転席へ飛び乗った。

 手動運転起動。

 損傷警告を無視する。

 エンジン出力上昇。

 車体が震える。


 前方。

 消えかけている敵車列。

 ナミはアクセルを踏み込んだ。

「届け先が待ってるんだよ」

 配送車両が急加速する。

 警察とは逆方向へ。

 誰にも報告せず。

 誰の許可も取らず。

 シガン・ナミは単独でPR-0001の追跡を開始した。

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