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第9話 「同床異夢」――ターニングポイント①



――少し時は遡る。


同じ頃、B班とC班は移動中だった。

馬車は二台。森道を並走しながら目的地へ向かっていた。

班分けはされたが、「《《誰がどっちに乗るか》》」は自由。だからこの配置になっている。



〜C班側の馬車〜

刹那/エペ/みずき/ゼグレ

〜B班側の馬車〜

光月/クレイ


「暇なのだー!!」

ちびっ子みずきが短い手足をバタつかせる。

「みずきちゃん。我とカード遊びでもしましょうか!」

女尊男卑マスター・エペのささやかな気遣い。

「イヤなのだー!!!」



二班が一緒に動いてる理由は単純だった。

「ボクらB班だけ任務が曖昧だったからさぁ。ついてきたわけ」

クレイがいつも通りヘラッと言う。

エペが即座に噛みつく。

「言い訳はやめてください!どうせ男塵だんじんの考えることなんてたかが知れてます!我らの功績を横取りするつもりに決まってます!……ですよね、刹那ちゃん!?」


優雅な刹那は淡々と返す。

「今回の場合は、B班はワタシ達と行動したほうがいいんじゃないかしら。クレイくんの言う通りよ」

「せ、刹那ちゃん……!」

エペがわかりやすく悔しそうな顔をする。

クレイは嫌なドヤ顔。


みずきが暗殺者、ゼグレを横目で見る。

「……ずっと黙って景色ばっか見てるのだ。森ばっかなのに……変なやつなのだ……」

刹那が静かに言う。

「きっと集中しているのよ。あともう少しで着くから」

「でも……不気味です……」

とミス・女尊男卑。


刹那は少しだけ間を置いて

「それに、さっきワタシがお茶を配った時、——ゼグレさん、ちゃんとお礼を言ってくれたわ。悪い人じゃないと思うの」

みずきは目を丸くする。

「えっ、そうなのだ?」

エペがその瞬間、急に目をキラキラさせた。

「さすがです!女子の温もりというやつですね!!」

「当然よ」

刹那は当然の顔で頷く。


会話は全部、本人にも聞こえている。

それでもゼグレは、窓の外から目を逸らさず、何も言わない。顔色も変えない。


一方、もう一台の馬車。

手綱を握るミスターナルシスト・光月こうつきが、斜め後ろを振り返る。

「なァ……あっちの馬車、賑やかでいいなァ」

クレイは寝そべったまま、だるそうに言う。

「そう?ボクはサボれていいけどね」

「こ、このやろォ!オレ様が一生懸命手綱ひいてやってんのにィ!!」

「あは。がんばってねー」

冗談で笑う光月。

それにクレイもニヤッとする。

——案外、こいつら仲は悪くないのかもしれない。



二時間後。目的地に到着。

戦いはあった。

A班ほど異常じゃないが、様子のおかしい敵が混じっていた。

それでも任務は成功。

二人の捕獲・拘束に成功した。

この拘束で一番効いたのが、氷の男・ゼグレの氷魔術だった。


刹那が言う。

「無事に二人拘束できたわね。あなたのお陰よ、ゼグレさん」

ゼグレは頷きもしない。

ただ、視線だけが一瞬動いたように見えた。


横でクレイが血まみれのクレイモアを必死に拭いている。

「汚いなぁ……」


光月はふらついていた。

「はァはァ……つ、つかれたぜェ……おっと……」

水魔術の使いすぎで気力が底をついてる。

その時、みずきが手を添える。

「ほい!」

一瞬、眩い光。

「おおおおおッ!元気100%オレ様復活だァ!!」

「んふふー感謝するのだ!」

「ふッ……まぁこんなのなくても歩けたけどなァ!」

髪をかきあげる光月。

「むきー!ウザイのだー!!!」



「……何が起きている」

「キミしゃべるんだ。それ、エナジートレードってやつだよ。他人の気力を奪って、別の誰かに渡せる魔術」

「……エナジートレード」


クレイが捕虜へ視線を投げる。

「ほら。捕まえた二人、へとへとでしょ?

ちびっ子はあそこから魔力を奪って、ナルシストくんに渡したんじゃない?」

ゼグレは考えるように見えるだけで、無言。

クレイが楽しそうに笑う。

「……キミとは仲良くなれそうにないねぇ。つまらなくはないんだけど」




――で、帰路で揉める。

黒刃クレイが言い出す。

「——だからやだね。めんどくっさい。ボク、C班の馬車で帰るわ」

「はァ!?」

エペがキレる。

「これだから男塵は!さっさと降りてください!」

「いや、もう乗ってんだけど」

みずきが追い打ちする。

「たのむのだー!そいつをC班の馬車に乗せてってほしいのだ!いつもいつもエナジートレードの仕組み聞いてきてうざいのだー!」


刹那が困ったように笑う。

「困ったわね。こういう時、この二人は曲げないわよ」

ミスターナルシスト・光月が叫ぶ。

「クレイィ!女子に迷惑かけんなよォ!!」

「じゃああなたが引きずり下ろしてくださいよ!」

ナルシスト、詰む。


そこで、ゼグレが短く言った。

「……いい。俺がいく」

「おっサンキュー♡」

みずきは絶望顔。

「……なのだぁ」


つまりB班の馬車に光月・みずき・そしてゼグレ。C班の馬車に女尊男卑のエペ・優雅な刹那・そして嫌な男のクレイという形になる。


刹那が決める。

「仕方ないわね。じゃあワタシたちは予定通り帰るわよ。健闘を祈るわ」

こうして——


C班側の馬車:刹那/エペ/クレイ(誓刃校へ帰還)

B班側の馬車:光月/みずき/ゼグレ(A班へ合流に向かう)



みずきが叫ぶ。

「最悪なのだー!どうしてあの不気味な眉なしが乗り込んでくるのだ!」

光月もうるさい。

「しらねェよ!てかお前の声はでかいんだ!ヤツに聞こえるだろォ!!」

「光月の声は響くのだ!静かにするのだ!」

光月が腕を組む。

「てかよォ……オレ様たち、明確な指示出されてねぇわけだろォ?帰ってもいい気がしねェか」

「さんせーなのだ!さっさと帰——」


「——いや。A班の所へ向かう」

ゼグレの声が落ちる。

「はァ??」

「……なのだ??」

「俺が手綱を握る。馬車で休んでいろ」

「て、てめェ!勝手な真似はゆ、ゆるさねェぞ!」

「そーだ!そーなのだ!」


ゼグレは淡々と言う。

「ここで降りるか?」

二人、絶望(笑)


こうしてB班は、夕方にA班へ向けて動き出した。ゼグレの息が一瞬止まったことに気がつくものはいない。

ちょうどその頃、A班側では——ジャメラポムが「魔族の血」という線を引き当てていた。


◇◇◇


次回:幽灯の双呪


任務を終えたA班はバロロの判断により誓刃校へと帰還することになる。

その途中アズラル村という小さな集落に立ち寄るのだが、そこは異変だった。

紅い空。戦慄。そして魔族。

本格的なこの物語の黒い部分が明らかになる。


「宣戦布告」


◇◇◇

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