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『喧嘩無敗〜魔力0で追放された俺、魔法を拳でぶっ潰す〜』   作者: 緋村 獏


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99.フィオラの覚悟


 サラが死んだ。


その事実が、頭の中で繰り返される。


サラが、死んだ。


あの生意気で、強がりで、でも本当は優しかった少女が。


もう、いない。


だが——悲しむ時間はない。

立ち止まれば、次は自分たちだ。


「フィオラ!」


私は叫んだ。


「ええ、わかってる」


フィオラの声は、怒りで震えていた。

だが、剣を握る手は止まらない。


止まってはいけない。


私は神崎に向かって飛んだ。

空へ。


神崎は笑っていた。

涙の跡が残った顔で、笑っていた。


「レベル600だよ」


壊れた声だった。


「もう誰にも負けない」

 

剣が、光を帯びた。


「ヘブンリーアサルト!」


無数の光の剣が、降り注ぐ。

私は盾で弾いた。


ガキィン! ガキィン! ガキィン!


だが——威力が違う。

さっきまでとは、桁が違う。


腕が痺れる。

盾が軋む。

ヒビが入る音が聞こえた。


そして——ヒールが来ない。


当たり前だ。

サラは、もういない。

傷は、もう癒えない。


この先、どれだけ傷を負おうと。


私は奥歯を噛み締めた。


神崎に斬りかかる。

剣と剣がぶつかった。

火花が散る。


撃ち合い。


なんとか地上に引きずり下ろせれば。

フィオラのスピードを活かせる。


地上戦なら、まだ勝機がある。


消耗させるんだ。

時間をかけてでも——


だが。


剣を押し合う。

力比べ。

わずかに、神崎の力が勝っている。


押されている。

引きずり下ろされるのは、私の方か?


「ヘブンリーエッジ!」


神崎の剣が、光を纏った。


「うおおおおッ!!」


私は盾を構え、受け止めた。


衝撃波が、桁違いに大きい。

腕が軋む。

受けきるまでの、その一瞬が惜しい。


神崎が消えた。


いや——瞬時に移動していた。

私の脇に。


死角から、剣が切り上がる。

反応が、ギリギリだった。


ガキィンッ!!


剣をなぎ下ろし、相打つ。

衝撃で、互いに弾かれる。


空中だというのに。

なんというスピードだ。


レベルが上がって、さらに速くなっている。

まだまだ消耗させるには時間がかかる。


長期戦を覚悟した。

その矢先だった。


チッ。


神崎から、舌打ちが聞こえた。


「タンクは後回しだ」


神崎が、急速に降下した。

翼を畳み、矢のように落ちていく。


フィオラの方へ。


「フィオラ、気をつけろ!」


私は叫んだ。

後を追う。


だが、速度が足りない。

追いつけない。


フィオラは逃げなかった。

かかってこいと言わんばかりに、腰を屈めた。


「ダメだ!逃げろ!」


私の叫び声が響く。

だが届かない。


決意の眼差しだ。

静かに怒りに満ちている。

 

剣を構える。

刃が、漆黒に染まっていた。


全魔力を込めている。

真っ向から勝負をする気だ。


神崎が着地した。

その瞬間、二人が同時に動いた。


超高速の撃ち合いが始まった。


ガガガガガガッ!!!!


金属がぶつかる音が、連続して響く。

火花が散る。

残像が重なる。

二つの影が、交錯する。


撃ち合いながら、神崎が呟いた。


「よくも」


低い声だった。


「よくも僕の親友を殺してくれたな」


親友。

ルシのことか。

お前を操っていた、魔人の眷属を。


「ヘブンリーエッジ!」


神崎の剣が、光を放った。

フィオラが刃で受けた。


ガキィンッ!!


重い音。

まずい。


フィオラが押し込まれた。

足が地面を削る。


激しく後退させられる。

体勢が崩れた。


「ヘブンリーアサルト!」


神崎が、間髪入れずに叫んだ。


無数の光の剣が生まれた。

それが一斉に、フィオラを襲う。


光の雨。

逃げ場がない。


フィオラの体を、光が掠めていく。

腕に。

脚に。

肩に。


赤い線が、次々と刻まれる。

血が飛ぶ。


それでも、フィオラは倒れなかった。


神崎が、そのままの勢いで突っ込んできた。

剣を振りかぶる。


「死ねえええええッ!!」


フィオラは避けきれていなかった。

全身から血を流している。

それでも——剣を構えた。


迎え撃つ姿勢。


やめろ。


私は全速力で降下した。

神崎の背後。

剣を振りかぶった。


「やめろおおおおッ!!!!!」


私は全力で叫びきりかかる。

神崎は振り返りもせずに叫んだ。


「ヘブンリーエッジ!」


フィオラが、息を吐いた。


「ハァッ!!」


三人が同時に、剣を振り抜いた。


時が、止まった。


光が、閃いた。


フィオラの体が——袈裟に斬られた。

肩から、腰にかけて。


血飛沫が、舞った。

赤い髪が、揺れた。


同時に。


神崎の腹部から、血が吹き出した。

フィオラの黒剣が、腹を割いていた。


背中からも、血が噴き出す。

私の剣が、神崎の背中を深く斬りさいていた。


致命傷だ。

フィオラの一撃は、確実に内臓を抉っている。


ドン、と音が鳴る。

遅れてやってきた衝撃波がフィオラの体を吹き飛ばした。


カラン、と。

剣が、虚しく地面に転がった。


フィオラの体が、力無く転がり天を仰ぐ。


赤い髪が、血の海に広がっていく。


「フィオラ……」


駆け寄ろうとした。


その瞬間。

 

絶望した。


 

神崎の傷が、消えていく。

みるみるうちに、塞がっていく。


腹部の傷が。

背中の傷が。

まるで、最初からなかったかのように。


レベルアップ。


嘘だ…。


傷を負うことを見込んで。

フィオラを殺すことで、回復することを計算していたのか。


化物が。


神崎が、振り返った。

血に濡れた顔。

だが、傷は一つもない。


笑っていた。


「レベル750だ」


その言葉が、鳴り響いた。


 

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