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『喧嘩無敗〜魔力0で追放された俺、魔法を拳でぶっ潰す〜』   作者: 緋村 獏


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97.最強パーティ狩り


「行くぞ」


私は地面を蹴った。

盾を前に、剣を構える。


フィオラが右に展開する。

挟み込む形。


神崎が笑った。


「二人がかりか」


余裕の声だった。


「いいよ、来なよ」

「まとめて殺してあげる」


剣を構え直す。

私は正面から突っ込んだ。


盾で押し込む。

神崎が受け止める。


その瞬間、フィオラが横から斬りかかった。


「おそいよ」


神崎が身を捻る。

フィオラの刃が空を切った。


反撃。


「ヘブンリーエッジ!」


光の斬撃が飛ぶ。

私は盾で弾いた。


衝撃が腕に響く。

重い。

だが、止められる。


「へぇ」


神崎の目が、少しだけ細くなった。


「さっきの女より、やるね」

「これならどうかな?」


神崎が剣を構え直した。


「ヘブンリークロス!」


光が、十字に広がった。

二つの斬撃が交差し、私に迫る。


「ぐっ……!」


盾で受け止めた。

先ほどの倍の衝撃。


腕が軋む。

足が、地面にめり込んだ。


だが——受けきれないほどではない。


私は歯を食いしばり、弾き飛ばした。

光が散る。


「えっ」


神崎の目が、見開かれた。


その隙を、フィオラは見逃さなかった。


「雷鳴……」


低い詠唱。

フィオラの剣が、背後から神崎の首筋を掠めた。


刃が、皮膚に触れた瞬間——


「ぎゃあっ!」


バンッ!


轟音と共に、神崎の体が痙攣した。

雷が、体内を駆け巡る。

紫電が弾け、火花が散った。


勝機。


フィオラの二撃目が、間髪入れずに襲う。

私は反対側から回り込んだ。


挟撃。

剣を振りかぶる。


「セイクリッドウィング!」


神崎が叫んだ。


その背中から、光が噴き出した。

白い翼が広がる。


神崎の体が、急上昇した。

二人の刃が、空を切る。


見上げると、神崎が宙に浮いていた。

白い翼を広げ、見下ろしている。


翼もあるか。

厄介だな。


「ヘブンリーアサルト!」


神崎が剣を振った。

無数の光が生まれた。


斬撃の雨。

それが、一斉に降り注ぐ。


ドォォォン!


激しい音と共に、砂埃が舞い上がった。

地面が抉れる。

瓦礫が吹き飛ぶ。


腕を見た。

少し削られていた。

血が滲んでいる。


なるほど。

強いな。


「ヒール!」


サラの声が響いた。

緑色の光が、私を包む。


傷が塞がっていく。

痛みが引いていく。


「ありがとう」


私は振り返らずに言った。


「クラウディアさんの容体は?」


「重傷だけど、命に別状はないよ」


サラの声は、落ち着いていた。


「大丈夫」


「長引きそうだが、いつも通り頼む」


「了解!」


私は風魔法を足元に集中させた。

体が浮き上がる。


空へ。

神崎と同じ高さまで上昇する。


「ヒーラーまでいるのか」


神崎が舌打ちした。


「面倒くさいな」


剣を振りかぶる。


「ヘブンリーアサルト!」


無数の斬撃が、サラに向かって飛んだ。


だが——


ガキン! ガキン! ガキン!


サラは素早く杖を振った。

ドーム状の結界が展開される。


光の斬撃が、次々と弾かれていく。

一つも通さない。


「隙だらけだな」


私は神崎の横に回り込んでいた。

剣を横薙ぎに振るう。


「っ!」


神崎が身を捻った。

間一髪、刃を躱す。


「あぶな——」


言い終わる前に。

私は横薙ぎの勢いを殺さなかった。


そのまま体を回転させる。

回し蹴り。


ドスッ!


神崎の腹に、踵がめり込んだ。


「がっ——!」


神崎の体が、弾き飛ばされた。

翼が折れ曲がる。


コントロールを失い、落下していく。


ドガァン!


監視塔の壁に、叩きつけられた。

石壁が砕け、粉塵が舞う。


フィオラが追撃に入った。

剣を振りかぶり、急降下する。


だが——


「ヘブンリーエッジ!」


瓦礫の中から、光が飛んだ。


ガキィン!


フィオラの剣が弾かれた。

体勢を崩しながらも、フィオラは空中で身を翻す。


民家の屋根の上に、着地した。

粉塵が晴れる。


神崎が、瓦礫の中から立ち上がっていた。


服が破れている。

頬に擦り傷。


だが——それだけだった。


「あぶないあぶない」


神崎が、笑った。

服の埃を払う。


「ちょうどレベル上がったよ」


その言葉に、私の目が細くなった。


回復したのか。

傷が、消えている。

さっきまであった擦り傷が、跡形もない。


誰を殺した。


周囲を見渡した。

この広場には、もう戦える者はいない。


クラウディアさんは後方でサラが治療している。

私たちは誰も死んでいない。


ならば——


天使か。

神崎が召喚した天使が、どこかで民間人か騎士を殺したのか。


それで、レベルとやらが上がったのか。


拳が、震えた。


ふざけるな。


「貴様は勇者ではない」


私は言った。


低い声だった。

自分でも驚くほど、冷たい声だった。


――――

 

斬りつける。


弾く。


また斬りかかる。


何合打ち合っただろう。


我々と神崎の戦力は拮抗していた。


神崎の顔から、余裕が消えていた。


「なんで……なんで当たらないんだよ……!」


私は息を整えた。

フィオラも、まだ動ける。


だが——決定打がない。


奴は疲弊しようと負傷しようとレベルが上がる度に回復する。

 

しかし、それはこちらも同じだ。

サラの補給がある限りは戦い続けられるだろう。


 

長い戦いになった。


攻めては守り、また攻める。その繰り返し。

 

月が沈み、空が白み始めていた。

 

夜通し戦い続けた。

それでも、決着はつかない。


そう、思った時だった。

 

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