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『喧嘩無敗〜魔力0で追放された俺、魔法を拳でぶっ潰す〜』   作者: 緋村 獏


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93/108

93.精鋭部隊出撃


死者、三百二十七名。

重傷者、百名以上。

行方不明、十二名。

報告書の数字が、現実を突きつけていた。


「これが、本日の作戦で犠牲になった騎士の数だ」

クラウディアの声が、重く落ちた。

「作戦は失敗だ」


その顔が、深く曇る。

指揮官として、この数字を背負わなければならない。


「しかし、わかったこともあります」

ライナーが口を開いた。

「奴は強い騎士を避けています。その証拠に、高位の騎士に犠牲者はいません」


一拍、間を置いた。


「それに、貴重な情報があります」

ライナーの視線が、アルヴィンへ向いた。


「ああ」

アルヴィンが頷いた。

「奴は騎士を殺した瞬間、傷が塞がった。これは確実だ」


青い瞳が、暗く沈んでいた。

「『あがった』と叫んでいたが、意味はわからない」


クラウディアが腕を組み、考え込んだ。

人を殺すと回復する。

つまり、数で押せば押すほど、奴は強くなる。


「そうなると、精鋭のみで作戦を遂行する必要があるな」

クラウディアが顔を上げた。

「対神崎の精鋭部隊を編成する」


「私も行くからな」

アルヴィンが、静かに言った。

「そのつもりで組んでくれ」


「わかりました」

クラウディアが頷いた。


――――

 

翌日。


「神崎は」

クラウディアが尋ねた。

「北の廃教会に潜伏しています」

ライナーが答えた。


「わかった」

クラウディアが、騎士たちの前に立った。


五十名。

昨日の戦いを生き延びた精鋭たち。

全員が、真っ直ぐにクラウディアを見ている。


「聞け」


声は静かだった。

だが、全員の背筋が伸びる。


「昨日、我々は三百の仲間を失った」


沈黙が落ちた。


「数で押しても、奴には通じない。むしろ被害が増えるだけだと思い知らされた」


クラウディアの蒼い瞳が、一人一人を見渡した。


「今日は違う。貴様らは選ばれた五十名だ」

「狩りに行く」


剣の柄に手をかけた。


「包囲はしない。追い立て、逃げ道を塞ぎ、仕留める」


「死ぬかもしれん」


「だが、今日で終わらせる」


クラウディアが剣を抜いた。


「昨日死んだ仲間のために。これ以上犠牲を出さないために」


白刃が、朝日を反射する。


「全員、生きて帰れ。だが、臆するな」

「——行くぞ」


五十の声が、一斉に応えた。

「「「おおおおッ!!」」」


――――

 

廃教会前。

崩れかけた尖塔が、曇り空を背に聳えている。


クラウディアを先頭に、騎士数名が雪崩れ込んだ。

扉が蹴破られ、埃が舞い上がる。


薄暗い礼拝堂の奥に、人影があった。


「今日こそ貴様を捕縛する」

クラウディアが剣を構えた。

「抵抗するなら、容赦はしない」


神崎が、ゆっくりと振り返った。


「精鋭かな」


口元に、薄い笑みを浮かべている。


「ご苦労なことだね」


昨日とは少し違う。

自信のある振る舞い。


「でも無駄だよ」


「投降しろ、神崎ハルト」

「断る」


神崎が剣を構えた。


「むしろ——お前らが降伏しろ」


そして、自信満々に言い放った。

「レベル300の勇者に、勝てると思ってるの?」


その瞬間、神崎が剣を振り上げた。


「ヘブンリーアサルト!」


無数の光の剣が生成され、騎士たちに向かって放たれる。


だが——


光が、弾かれた。


精鋭部隊が紡いだ防御膜が、全ての攻撃を受け止めていた。


「……は?」


神崎の動きが、止まった。

目が見開かれている。


「なっ——」


精鋭部隊が、一斉に反撃に転じた。

剣が閃く。

魔法が飛ぶ。

連携された攻撃が、神崎に殺到する。


「痛っ……!」


神崎の体が、弾き飛ばされた。

腕を切られ、血が飛ぶ。


「なんで……レベル300なのに……」


神崎の声が、裏返った。


「昨日は楽勝だったのに……!」


クラウディアが、冷たく言い放った。

「並の騎士と一緒にするな」


「うるさい!!」


神崎が叫んだ。

剣を振り回し、光の剣を乱射する。


だが、精鋭部隊は連携して防いだ。

一人が盾を構え、一人が弾き、一人が反撃する。

無駄な動きが一つもない。


「なんで……なんでなんでなんで……!」


神崎の声が、悲鳴に変わっていく。


追い詰められていく。

壁際まで押し込まれる。


——そして、神崎は後方の壁を突き破った。


「逃げるか——!」


クラウディアが叫んだ。


「よし、行ったぞ!」


壁の外では、さらに精鋭が待ち構えていた。

結界が展開される。

ドーム状の空間が、神崎を閉じ込めた。


「こんなの効くか!」


神崎が剣を振るった。

「ヘブンリーエッジ!」


バリン。

結界が、ガラスのように砕けた。


神崎が外に転がり出る。


だが——騎士はいなかった。


代わりに、一人の魔術師が立っていた。

銀髪が、風に揺れている。


「凍れ——アイスバーグ」


アルヴィンの詠唱が響いた。

大気が凍りついた。

地面が、建物が、空気そのものが白く染まっていく。


大規模な氷結魔法。

周囲一帯が、一瞬で氷の世界と化した。


既に避難していた精鋭たちが、遠くから見守る。


「やったか……?」


誰かが呟いた。


だが——


「レベル300って言ったよね!?」


氷の世界の中から、声が響いた。


「外に出れば、こっちのもんだ!」


神崎が氷の世界から叫んだ


「ヘブンリーゲート!」


空に、黒い円が現れた。

一つ、二つ、三つ——

次々と増えていく。


空を埋め尽くすほどの黒い門。

その中から、何かが現れた。


翼を持つ人型。

弓を構えている。

天使だ。


無数の天使が、黒い門から溢れ出してくる。


「いけーっ!」


神崎が叫んだ。

天使たちが、一斉に散っていく。

空から、方々へ。


精鋭たちにも襲いかかる。


「なんだ、これは——」


クラウディアが剣を振り、天使を斬り捨てた。


「こんなのが奥の手か!?」


軽く処理できる。

数は多い。


「おかしいですね」


ライナーが、天使を叩き落としながら言った。


「弱いわけではないのですが、精鋭部隊なら余裕で……」


クラウディアの目が、鋭くなった。


「待て……こいつら, まさか——」


視線が、王都の方角へ向いた。


「待機している騎士を……」


「隊長!」


精鋭騎士の一人が叫んだ。


「天使が、退避した民間人の方へも向かっています!」


「なんだと!?」

クラウディアの目が見開かれた


天使が、王都中に溢れかえっていく。

黒い影が、空を覆う。


郊外へ避難していた民間人たち。

その上空に、天使が群がった。


弓が引かれる。

矢が——放たれた。


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