表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『喧嘩無敗〜魔力0で追放された俺、魔法を拳でぶっ潰す〜』   作者: 緋村 獏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/108

75.全力の反撃


「それでは、終わりにしましょう」


ルシが指を持ち上げた。

頭上の瘴気が、再び形を持った。

黒紫の靄が凝固し、一本、また一本と槍になっていく。


さっきより速い。

さっきより雑だ。

まとめて終わらせる。

そういう顔をしている。


「出し惜しみをして勝てる相手じゃない」


レオンハルトが静かに言った。


「皆、わかっているな」


「了解」

フィオラが頷く。


「……了解」

サラが、震える声で応えた。


「もう結構ですので」


ルシが、怠そうに言った。


「死んでください」

「瘴気葬槍」


呪文が紡がれる。

槍が――落ちてくる。


「聖域展開」


間髪入れず、サラが叫んだ。


光が弾けた。

丸いドーム。

鉄壁のように硬い光の半球が、全員を包み込んだ。


内側は静かだった。

外の音が一段遠くなる。

まるで結界の中だけが、別の世界になったみたいだ。


直後。


ドドドドドドッ!!


槍がドームに叩きつけられた。

光が軋む。

だが、割れない。


槍は弾かれ、滑り、外へ落ちていく。


サラの膝が、わずかに沈んだ。

顔が真っ白になっていく。


「……っ、重い……!」


声が震える。

魔力の圧が、上から押し潰してくるようだった。


ルシの“圧”が、ドームごと叩きつけている。


それでも――サラは杖を離さない。

唇を噛み、震えを殺し、光を維持した。


「さて、いこうか」


レオンハルトが短く言った。


そして――盾を置いた。

銀の盾が地面に立つ。


「フィオラ」


「ええ」


フィオラが頷いた。


レオンハルトは剣だけを握った。

肩の力が抜ける。呼吸が変わる。


守るための男じゃない。

斬るための男の目だ。


「守りは、今はサラに預ける」


そう言って、ドームの縁へ踏み出した。


槍雨はまだ降っている。

だがドームが受け止めている今だけは、前に出られる。


レオンハルトが一歩、外へ出た。


ガキィン!!


落ちてきた槍を剣で弾く。

二本、三本。


雨を斬って進むように、身体が滑る。


盾を捨てた分、速い。軽い。

銀の軌跡が、槍を切り裂いていく。


そして――ルシへ一直線。


ルシの薄い青灰色の瞳が、ほんの少しだけ細くなった。


「早く死んでいただけませんかね?」


レオンハルトは答えない。


距離が詰まる。


剣が閃いた。


ガン!

一撃。


ガン!

二撃。


ガン!

三撃。


レオンハルトの剣が、素早く、かつ力強くルシを斬り叩く。


ルシは手を刃物のように変形させ、応戦した。

だがレオンハルトの剣圧に押し込まれていく。


銀の刃が、ルシの胴を切り裂いた。

――はずだった。


ガキィン!


金属音。


刃は肉に届いていない。

分厚い魔法障壁が、ルシの身体を覆っていた。


「大したパワーだ」


ルシが、感心したように言った。


「だが無駄ですよ」


口が開く。

喉の奥が青白く光る。


コオォォォォ!!

 

光線が放たれた。


直撃した。

だが、レオンハルトは止まらない。


ガキィン!

ガキィン!


光を浴び鼻から血が吹き出す。

だがひたすら斬りつけ続ける。


魔法障壁が軋む。

少しずつ、剥がれ始めた。


だが――すぐに再生する。

削っても、削っても、元に戻る。


「無駄、無駄……」


ルシが呆れたように言った。


それでも、レオンハルトはやめない。

剣を振るい続ける。


スピードが上がる。

パワーが増す。

斬りつけるたびに、その勢いが加速していく。


やがて、もはや目にも見えない速度で剣が閃いた。


ガガガガガガガガガ!!


連続する金属音。

火花が散り、障壁が削れ、再生が追いつかなくなる。


そして――見えた。

再生しきれない綻び。


瞬間。


フィオラが動いた。


いつの間にか、レオンハルトの背後に回り込んでいた。


剣を構え、魔力を極限まで練り上げている。

刃が、黒く光った。


光を呑み込むような、漆黒の輝き。


シュパッ。


一閃。


綻びを縫うように、剣が走った。


胴から、真っ二つに。


ルシの身体が裂けた。


どさっ。


上半身と下半身が、別々に地面に落ちる。


「……ばかな……」


ルシの声が、掠れていた。

薄い青灰色の瞳が、信じられないものを見るように見開かれている。


「何か言い残すことは?」


レオンハルトが、静かに問うた。


「ははは……」


ルシが笑った。

裂けた身体で、それでも笑っていた。


「もう運命は決した」


声が途切れ途切れになる。


「貴様ら人類は滅びる」


血の代わりに、黒い粒子が溢れ出していく。


「感じるだろう……主人様のこの魔力……」

「全てが手遅れなのだ」


瞳が、狂気に歪んだ。


「死ね! ははは……ははは……!」


レオンハルトは無言で剣を振り下ろした。

ルシの頭を、貫く。


笑い声が途切れた。


ルシの身体が、黒い粒子となって崩れていく。

瘴気に溶けるように、やがて消えた。


後には、何も残らなかった。


静寂が落ちた。


「ふう……」


レオンハルトが息を吐いた。

剣を下ろし、振り返る。


「ジャック」


声が切迫した。


「ジャックは無事か!?」


聖域が解除され、光のドームが消えていた。

サラが膝から崩れ落ちる。

杖を支えにして、なんとか倒れずにいる。

顔は蒼白で、息が荒い。


「大丈夫! 大丈夫だよー!」


リリィの声が聞こえた。

ジャックの傍らで、必死に止血を続けている。

淡い光が傷口を覆い、血の流れは止まっていた。


レオンハルトが、ほっと肩を撫で下ろした。

フィオラと二人、仲間の元へ戻る。


「……団長、姐さん」


ジャックが顔を上げた。

血まみれの顔で、それでも笑っている。


「グッジョブっす」


「お前がな」


レオンハルトが拳を差し出した。

ジャックが、震える手で拳を合わせる。


コツン。


小さな音が、静かに響いた。


「……でも」


ジャックの表情が曇った。


「皆、切り札使っちゃったっすね……」


沈黙が落ちた。


レオンハルトの全力攻撃。

フィオラの極限まで練り上げた魔法剣。

サラの聖域展開。


どれも、一度使えば当分は使えない大技だ。


「魔力、厳しいかも……」


サラが掠れた声で言った。


「そうね……」


フィオラが頷いた。

彼女もまた、消耗が隠せない顔色だった。


全員が、限界に近い。


だが――まだ終わっていない。


北の空を見上げる。

紫がかった瘴気の向こうに、禍々しい魔力の気配が渦巻いている。

魔人は、まだそこにいる。


「それでも」


レオンハルトが、静かに言った。


「進もう」

【読者の皆様へのお願い】



ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もし「面白かった」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけたら



下にある【☆☆☆☆☆】から作品への評価をお願いいたします。



面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちもん大丈夫です!



ブックマーク登録もあわせてお願いします!



「評価」が更新の原動力になります。何卒よろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ