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『喧嘩無敗〜魔力0で追放された俺、魔法を拳でぶっ潰す〜』   作者: 緋村 獏


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74.瘴気葬槍


「瘴気葬槍」


ルシが言い捨てた。

その瞬間――空が黒く染まった。


頭上に無数の槍が生まれる。

黒紫の瘴気が凝固し、鋭い穂先となって天を埋め尽くしていく。


そして、降ってきた。

激しい雨のように。


いや、雨なんてものじゃない。

殺意を持った豪雨だ。


「全員、頭上に注意!」


レオンハルトが盾を掲げた。


ガキィィィン!


槍が盾に弾かれ、地面に突き刺さる。

一本、二本、三本――数える暇もない。


まだ降ってくる。

終わらない。


フィオラが剣を振るい、槍を弾く。

冷気を纏った刃が、黒紫の穂先を叩き落としていく。


ジャックが氷の壁を展開し、頭上を守る。

だが槍は壁を砕きながら、なおも降り注ぐ。


サラが結界を張り直す。

光の膜が槍を受け止め、軋む。


物量が、圧倒的すぎる。


無傷ではいられなかった。


槍がフィオラの頬を裂く。

ジャックの肩を掠める。

サラの腕に赤い線が走る。

レオンハルトの盾を持つ手から、血が滴り落ちる。


身体に傷が刻まれていく。


槍は容赦なく降り続けた。

さっきまで戦っていた瘴気の魔物も、まだ立っていたデカい奴の残骸も、まとめて貫いていく。


敵も味方も関係ない。

ただの殲滅だ。


「さっさと終わらせましょう」


ルシの声が、槍雨の向こうから聞こえた。


見上げる。


ルシの口が開いていた。

喉の奥が、青白く光っている。


あの光。

瘴気の魔物と同じ攻撃。


だが、桁が違う。

光の密度が、段違いだ。


避けなければ。


だが、槍に磔にされて身動きが取れない。


そして――放たれた。


コオオオオォォォーーーー!!!!


ルシの口から、扇状に青白い光が広がった。

広範囲。逃げ場がない。


四人全員が、光に呑まれた。


「うぅ……っ、頭、割れそう……!」


サラが頭を抱えた。

詠唱の声が途切れ、回復魔法の光が揺らぐ。


「めまいが……ぐあっ!」


ジャックがよろめいた瞬間、槍が足を裂いた。

血が飛び散り、膝が落ちる。


フィオラはよろめきながらも、なんとか槍を捌いていた。

だが動きが鈍い。目の焦点が定まっていない。


「くっ……サラ、なんとかヒールをかけ続けてくれ!」


レオンハルトが叫んだ。

盾を構えたまま、槍を弾き続ける。


「集中しろ、やられるな!」


檄が飛ぶ。


サラが歯を食いしばり、再び詠唱を紡ぎ始めた。

淡い緑の光が、四人を包んでいく。


そして――槍雨が、ふっと薄くなった。


終わりか?


違う。


頭上を見上げて、息が止まった。


槍が消えた代わりに、そこには”塊”があった。


黒紫の球体。

瘴気が圧縮され、歪んだ球となって浮かんでいる。


膨らんでいく。

重い。

禍々しい魔力が、球体から滲み出ている。


そして――落ち始めた。


「はい、おしまい」


ルシが、気怠げに言った。


次の瞬間。


ドオオオオォォォン!!


大爆発。

黒紫の爆炎が、全てを呑み込んだ。


衝撃波が地面を抉り、岩を砕き、瘴気の靄を吹き飛ばす。


全員が弾き飛ばされた。



静寂。


煙が立ち込める。

瘴気と焦げた臭いが混じり合い、視界を塞いでいた。


「はぁ……」


ルシが溜息を吐いた。

つまらなそうに、煙が晴れるのを待っている。


やがて、視界が開けていく。


そこに――レオンハルトは立っていた。

盾を構えたまま。


真っ直ぐ、ルシを見ている。


鎧は砕け、盾には亀裂が走り、全身から血が滴り落ちていた。

だが、立っている。


その背後で、フィオラがゆっくりと起き上がる。

剣を杖代わりにして、膝をついたまま、それでも立とうとしている。


サラが震える足で立ち上がる。

杖にすがりつきながら、なおも回復魔法を紡いでいる。


ジャックが片膝をついたまま、顔を上げる。

血まみれの顔で、それでもルシを睨んでいる。


全員、ボロボロだった。

だが、誰も倒れていない。


ルシの眉が、僅かに動いた。


「……五人?」


首を傾げる。


「いや、もう1人いましたか」


視線が動く。


その先に――リリィがいた。


杖を構えている。

持つ手が震えている。

顔は青ざめ、足はガクガクと笑っている。


それでも、立っていた。


「あ、あたしだって……!」


声が裏返る。


「サポートくらい、できるんだから……!」


リリィの杖が淡い光を放っていた。


さっきの爆発の瞬間、防御結界を張ったのだろう。

それが、全員を致命傷から守った。


「はぁ……」


ルシが溜息を吐いた。


「おかげで皆様、生きてらっしゃる」


怠そうに首を回す。


「仕切り直しますか」


ルシの視線が、一人に固定された。


「ヒーラーが邪魔ですね」


サラを見ている。


「!!」


ジャックが反応した。


サラはうずくまりながらも、エリアヒールを詠唱し続けている。

全員を回復させるために、自分の身を削って魔力を注いでいる。


無防備だ。


ルシの瞳が、冷たく光った。


「さようなら」


サラを見つめ言い放つ。


「スワップ!!」


ジャックが叫んだ。


その瞬間――ルシの目から、一筋の光が放たれた。

真っ直ぐに。

光速で。


ズッ。


肉が焦げる音がした。


「――がっ……!」


ジャックの声だった。


青白い線が、ジャックの身体を斜めに貫いていた。

脇の下から外側へ、焼け焦げた軌跡が走っている。


血が――遅れて溢れた。


腕が、力を失ったように垂れ下がる。

肩が抜けたみたいに、重い。


サラとジャックの位置が入れ替わっていた。


「ジャック!!」


サラが悲鳴を上げた。


「へへ……」


ジャックが笑った。

血の滲む唇で、それでも笑った。


「そう簡単に……やらせねぇ、っす……」


膝から力が抜ける。

視界が暗くなっていく。


「ジャック!!」


サラが駆け寄ろうとした。


「止血しなきゃ……!!」


リリィが先に動いていた。


震える手で杖を向け、淡い光を傷口に当てる。

血の流れが、ぎゅっと締まるように止まっていく。


だが傷は深い。焼け焦げた肉の臭いが、鼻を刺した。


「ジャック……」

レオンハルトの声が、掠れていた。


「器用な魔法ですね」

ルシが、感心したように言った。


「さすが最後のお客様方」


そして、指を持ち上げる。


「それでは、終わりにしましょう」


再び上空に瘴気が集まり始めた。

黒紫の靄が渦を巻き、槍の形を成していく。


「いいだろう」


レオンハルトが、盾を構え直した。


「終わりにしてやる」

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