101.~鬼塚剛~ぶっ殺す②
「きた……」
神崎の声が、歓喜に震えていた。
「レベル999……」
神崎が、両手を広げた。
空を仰いだ。
「異世界レベル999……最強勇者だ!!」
絶叫が、空に響いた。
勝利の雄叫び。
だが——
「あれ?」
神崎の声が、変わった。
困惑。
「羽が消え……」
白い翼が、光の粒子となって消えていく。
浮遊していた体が、落下を始めた。
ドサッ。
地面に、尻餅をついた。
「いでっ!」
情けない声を上げた。
神崎が顔を上げた。
「あれ? 剛じゃん」
俺は、神崎に向かって歩き出した。
一歩。
また一歩。
「お前も敵だし、殺そうと思ってたんだよね」
神崎が立ち上がった。
服の埃を払った。
「聞けよ、レベル999になったんだ」
「シカト?相変わらずムカつくなお前」
「土下座でもすれば許して——」
ドゴッ!!!
全身全霊。
右ストレート。
拳が、神崎の顔面にめり込んだ。
歯が砕ける感触が、拳に伝わった。
神崎の体が、吹き飛んだ。
地面を転がり、瓦礫に叩きつけられた。
「うぅ……」
神崎が、顔を押さえた。
口から、血が溢れていた。
折れた歯が、地面に転がった。
「歯……歯がぁ……」
震える手で、口元を押さえている。
信じられないものを見るような目。
「許さないぞ……」
神崎が立ち上がった。
剣を構えようとした。
「ヘブンリーエッジ!」
光が——灯らなかった。
何も起きなかった。
「え、なん——」
ドゴッ!!
もう一度。
左フック。
神崎の顔が、横に吹き飛んだ。
「ぶぇっ!」
また転がった。
今度は、自力で立ち上がれなかった。
四つん這いのまま、俺を見上げた。
目が、揺れていた。
恐怖。
混乱。
そして——理解できないという絶望。
「ひっ」
這いずるように、逃げようとした。
俺は追いついた。
腹に、拳を叩き込んだ。
ドスッ!
「お゛ぉっ!」
神崎の体が、くの字に折れた。
胃の中身が、逆流したようだった。
もう一発。
ドスッ!
「が゛っ……!」
ビチャビチャ。
神崎が吐いた。
血と胃液が混じったものが、地面に広がった。
「い、いだい……!」
神崎が泣いていた。
涙と鼻水と血が混じって、顔がぐちゃぐちゃになっていた。
「くそぉ……!」
神崎が片膝をたてる。
逃げようとした。
俺から、離れようとした。
「逃げんなやゴラァッ!!!!」
俺は叫んだ。
その瞬間——
ガシャンッ!!
金属音が響いた。
金網に阻まれていた。
「なんだよこれぇ!!」
神崎が叫んだ。
金網に手をかけ、必死に揺すっている。
「出して!! 出してよ!!」
金網?
いつの間に。
……まぁいい。
好都合だ。
ドゴッ!
「ぶぉっ!」
ドスッ!
「お゛っ!」
夢中で拳を叩きつけた。




