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未来の娘がやってきて、隣の席の美少女が『通い妻』になった〜青い花が咲く日まで、俺たちはまだ気づかない〜  作者: リディア


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第39話 ちょっとだけ違う

 休日の昼下がり。


 ベランダから、みくの声が聞こえてくる。


「咲ちゃーん! こっちもさきそうだよ!」


「本当だ。すごいね、みくちゃん」


 網戸越しに見えるベランダには、洗濯物を干す咲と、プランターの前にしゃがむみくがいた。


 柔軟剤の匂いが、微かにリビングまで漂ってくる。


 俺はソファに寝転がったまま、その光景をぼんやりと眺めていた。


「かわいいねー。ピンクだねー」


 みくが、花びらをそっと指でつつく。


「みく、ピンクすき!」

「よかったね。もっといっぱい咲くといいね」


 咲が洗濯バサミでタオルを挟みながら微笑む。


「うん! いっぱーいさいてほしい!」


 みくはプランターの周りをぐるぐる回りながら、鼻歌を歌い始めた。


 俺はソファから身を起こし、ベランダへ出た。


 昨日咲いた一輪のピンク色の花。周りには、まだいくつかの蕾が控えている。


 みくが、ふとぴたりと動きを止めた。


 プランターの前にしゃがみ込み、花をじっと見ている。


「……あれ?」

「どうした」

「うーん……」


 みくは花と俺を交互に見比べた。


「なんかね。ちょっとだけ」

「ちょっとだけ?」

「ちょっとだけ、ちがう」


 洗濯物を干し終えた咲が、みくの隣にしゃがみ込んだ。


「違うって、何が?」

「わかんない。でも、ちがうの」

「色か?」

「ううん……いろもだけど……」

「じゃあ形?」


 咲が覗き込みながら言う。


「ちがう」

「何が違うんだよ」

「わかんない!」


 俺と咲が顔を見合わせる。


「においとか。かたちとか。なんか、ちょっとだけ」


 みくはもう一度花を見て、また俺たちを見た。


「……みくのしってるのと、ちがうの」

「どこで見たんだよ」

「えーっと」

「……わかんない」

「なんだそれ」


 みくはそれ以上うまく言えなくなって、「わかんない! えへへ!」と笑った。


「……そっか。でも、きれいだよ?」


 咲がみくの頭を撫でる。


「うん! きれい! みく、このおはなすき!」

「おえかきする!」


 みくはそう言って、リビングへ走っていった。


「じゃあ一緒にしようか」


 咲も後を追う。


 俺は一人、ベランダに残された。


 夕方。


 リビングでは、みくと咲がお絵描きに夢中になっていた。


 画用紙いっぱいに、ピンク色の花が描かれている。


「咲ちゃん、みて!」

「上手! ピンクいっぱい使ったね」

「ぜんぶピンクにするの!」


 二人の笑い声が、部屋の中に響いている。

 俺は一人、ベランダの手すりに寄りかかっていた。

 西日が、プランターをオレンジ色に染めている。

 風が吹いた。花びらが揺れた。


 部屋の中から、みくの笑い声が聞こえた。

 俺は振り返った。


 みくが咲に何かを見せている。咲が笑っている。クレヨンが転がった。

 俺はまた、花を見た。

 風が、もう一度吹いた。

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