自由とは
顔合わせもすみ、それぞれの家に帰ってきたあと、俺は男鹿さんに電話を貰った。
「早乙女さんでしょうか?すみません、夜分遅くに」
「あー全然いいですよ」
コイツ……こいつらが、柳瀬さんを縛っているのか……??いや、だとしても男鹿は関係ないだろう。
「早速ですが、配信についてです」
「あー言ってましたねなんか」
「はい。実は千葉さんに無理を言って早乙女先生の書いた小説を読ませてもらったんです」
千葉……??千葉って……
「えっ!?千葉さんって僕の担当の千葉さんですか!?」
「はい」
いやハイじゃないでしょぉぉおおおお……
「それでですね……先生の小説はその……凄いですね。すごい考え方でした」
「あ、お、おう……そ、そうか、うん……」
なんだよこの気持ち。痒い。
「あの考えとかを、配信とかでも出すつもりですか?」
「え?いや、その……うーん、まぁだすなと言われたら出しませんけど……」
いやでも待てよ?確か男鹿さんは言ったはずだ。自由にしていいと。
「早乙女先生。私は自由にしていいと言いました。それは、小説のことも言っていいし、その先の展開も言っていいです。しかしそれだけではありません。私たちはその先生の考え方も、配信でふれていいと言ったんです」
「ということはつまり?」
「はい。討論するのも、反論するのも自由です。何もを喋ってもらっても構いません」
「……何でもは喋らないですよ。俺だってそこら辺はわかっているさ」
「……??どういう事ですか?」
「いーや。なんでも。まあ言われなくても鼻からそのつもりだったよ、男鹿さん。ただまぁ許可を取れたのはでかいけどね」
「はい。では失礼します」
男鹿さんはそう言うと電話を切った。
なんでも話していいと、許可が出た。
俺は、柳瀬のことを話そうか。
話さない。確実に話さない。だろうも付けない。
なぜ話さないのか。こんな企業の闇のような話。俺は好きなはずだ。いや、そう言うと私が女になったから、話さないようになったと勘違いされそうだな。
もし俺が男のままだったとしても、柳瀬のことは話さない。何故か。
彼女が1番悲しむからだ。本気で嫌なら、彼女はとっくに諦めているさ。
頑張っている人の邪魔はしない方がいい。
自分勝手に彼女のことを言わない方がいい。
自由とは、なんでもしていいということでは無いのだから。




