休話3
吹奏楽部の演奏も終わった後、いよいよ生徒有志のライブが始まる。ライブ設営の為、舞台にはアンプが運ばれる。
「そういやケンは何でライブなんかを?」
「ああ、僕呼ばれたんだ」
暇なもので、私は自分の中にあった疑問を投げかける。
「誰に呼ばれたの?」
「もちろん夜宙だよ」
そんなの今更じゃないか、みたいな顔でそう言うケンに少し驚いた後、私の中の疑問は全部吹き飛んだ。そうじゃなかな、とは考えていたけど、やっぱり心の中で引っかかったままだったからもどかしかったのだ。
そうこうしているうちに、舞台にはライブをやる設備が整っていた。誰の?もちろん彼女の。誰の為の?
もちろん彼に、だ。
―曲が、始まる。
「新宝島かよ!?何考えてんだ!」
流れたそれは、とあるグループのここ最近で一番有名な曲。わたしは思わず声を出して驚いてしまった。
しかしこれで、体育館の中にいるお客さんの心をつかむことに成功したのだった。それまでは、ちらっとスマホを覗き込むもの、隣の人とおしゃべりをする人。興味がない人やらがいたのに、その出だしだけで人を魅了してしまった。
そして現れた彼女たちの真ん中に立ち、わたしに見せたギターを持ってる真ん中の女の子は、やっぱり見間違えること無く、夜宙だった。
―曲が、終わる。
観客のこれでもかと言う拍手。普通に歌ったらこうはならないだろう。それはやっぱり、夜空の歌声に秘密があるのだと思う。
人の心に入りこむような声。直接心臓を握って、直接脳みそに感覚をぶち込まれているような、そんな感じ。なおかつ、丁寧で、稚拙な感じで、応援したくなるような。わたしたちと同じような声を出すのだ。
彼女だけじゃない。ドラムの人も、ベースの人も、ギターの人も、キーボードの人も。皆みんなプロ以上のうまさを、演奏にぶつけていた。
わたしは一曲目を聞き終えたとき、夜宙の事を誤解していたことに気がついた。
わたしは夜空を夜空としているものを全く見れていなかった。
今まで夜空がどれほど苦しんでいたか。あの電話の時、声以上の情報をどれほど心に潜ませていたか。
なんでかできない、なんていうのは簡単だ。言うだけならば。
だが本当に苦しんでいる、周りは出来ているのに自分だけ劣っている。自分だけ稚拙である。認めたくない、認めたくないけど、わたしはこの中で一番下手なんだ。そう言う気持ちを夜宙はもっていたはずだ。はずなのに。
それを必死で隠していた。
わたしは分からなかった。
いつの間にかそれが解決していたことにさえ気づかなかった。
今言うべきじゃあないけど、ぱちるの件だってそう思うのだ。分からないので声をかけません、どうしていいか分からないからどうもしません。わたしたちは今この状態をさまよっている。
わたしは全く気付いていなかった。感受性がなかった。こんなことで小説家になれると言うのか。
「どうもー!わたしたちは―‼こんぎつねでーす!」
わたしのそんなちんけな考えは、夜空のそのマイク越しの声に掻き消された。
「次にやる曲は―‼恋する女の子の曲でーす!オリジナルよー‼」
観客はオリジナルと聞いた時、それまでとなくざわついた。きっと、期待する人たちの方が多いのだろうが、やはりオリジナルが不安だと思う人もいるようだった。
まぁ、ヤソラはギターなんて初めてですからね。歌うか弾くか、片方しかできないのです。しかし、夜宙は無茶をしてました。どっちもやろうとしてましたよね。
それはきっと、自分と同じチームになった人たちが、めちゃめちゃうまかったから。みんなが夜宙をボーカルにした理由は、ギターじゃないのにね




