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絶対に負けない。

~深瀬side~


結局あの時のことが頭の中を巡り、スッキリしないまま時は過ぎた。

このまま考え続けても仕方がないと悟った俺は、日記を書き始めることにした。




7月10日(木)

とりあえず日記を書き始めた。

けど何を書いたら良いか全く分からない。

が、まあとりあえずは、サボんなよ、俺。



「………自分で書いといて情けね。」

マジで何を書いたら良いか分からない。

吉本さんもこれを見るわけだからな…。

ま、慣れて行くしかないか。


…てか、誰か俺に文才分けて。割と本気(ガ チ)で。




7月11日(金)

今日も朝からメールが大量に来ていた。

どうせ学校で嫌でも会うのに、しつこすぎる。

学校に着いたら着いたでスゴいベラベラ話しかけてくるし。

今度会ったらメールのことだけでも忠告しておこう。




7月12日(土)

またアイツから遊びの誘いが来たが、あえて断った。

俺が意図的に距離をとったらどういう反応をするか確かめたかった。

やっぱりというか、スゴく残念がっていた。

なんか、俺もどこか悲しかった。




「………まぁ、こんな感じ、かな……。」

吉本さん、必死にフォローしなくても良いよ。

分かってるから。俺の書き方がドヘタなことは。

だから目を泳がせないで。ホントお願い。俺の涙腺の弱さ知ってる?

「べ、別にその日あったことさえ分かれば良いから、大丈夫だよ。」

「そういってくれるだけでもありがたいよ…。」

俺の顔面が崩壊しかけているのを読み取った吉本さんは、やっぱり必死にフォローしてくれた。

「で、あれから榊原くんに何か変化、っていうかエスカレートしたことは?」

「あぁ、それなら大丈夫。メールとか着信は相変わらずだけど。」

「そっか…。じゃあ、このまま書き続ければ良いよ。」

「うん。ありがとう。」

「じゃあね、バイバイ。………あ、本当にその日のことが分かりさえすれば良いからね!」



………吉本さん、最後の最後に爆弾落としてかないで。
















~吉本side~


「……深瀬くん、日記書いたことないのかな…。」

伝えたいことは分かる。分かるんだけど、正直ちょっとアレで………いや、これ以上言うのは止めとこ。

私があれこれ言う権利もないし、まだ始まったばっかりだし、気長に見守って行こう。

「でも、もうちょっとアドバイスを…………あっ、」

参考書机の中に置いたままだった。今日宿題に使うのに。

気付いた私はすぐに教室に取りに戻った。




ガラリ


放課後の教室は当然というか誰もいなかった。

その静けさを少し気味悪く思いながら、真っ直ぐ自分の机に向かった。

そしてそのまま参考書を取り出そうとしたんだけど、


「あれ?ない……。」


え?これ私の机だよね。確かに入ってたはずなのに。どこかに置いていった?

それとも、誰かが隠した…………?


「あれ?吉本ちゃんじゃん。どうしたの?」

不意に声がした方を振り返ると、そこには榊原くんが立っていた。

何故か私の参考書を持って。


「榊原くん…?が、どうして私の参考書を……?」

「ん?あぁ、6時限目移動教室だったよね。その時吉本ちゃんこの参考書一緒に持って行ったでしょ?何か置き忘れてたみたいだからさ、届けに来たんだよ。」

「あ…そう、なんだ……。ありがとう…。」


あれ?私参考書なんか持っていったっけ…?まさか、本当に榊原くんが……?

ダメ。先入観を持ったらダメ。榊原くんは本当に届けてくれただけ。決してそんなことをしてなんか…。

必死でそう思い込ませてるのに、心の奥で彼を疑ってしまう。


「……ねぇ、吉本ちゃん。」

「!な、なに!?」

「吉本ちゃんさ、最近よく深瀬くんと一緒にいるよね。何かあったの?」

「え………?いや、何もないよ?」

「へぇ、それにしては随分仲良さそうじゃん。」

「…それは榊原くんが深瀬くんのことしか見ていないからじゃない?」

「………………まあいいや。届けるものは届けたからね。じゃ。」




榊原くんが出て行き再び静寂に包まれた教室で、私は自分の腕を抱くようにしてうずくまった。


怖かった。全く笑っていない顔で喋る榊原くんが怖かった。

それに、どう見てもあの目はあからさまに私のことを敵対視してた。榊原くんは恐らく私と深瀬くんの関係に気付き始めている。


それでも、

負けるわけにはいかない。

向こうがその気なら、こっちだって立ち向かえば良い。

彼にだけは絶対に負けない。

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