“親友”をやめよう。
~深瀬side~
9月4日(木)
相変わらずアイツのメールは後を絶たない。
だが、それに慣れつつある俺もいる。ヤバいっつの。
でもまあ実際自分の身は無事なわけだし、よくここまでもったと自分をほめたい。
そろそろ書くのも慣れて来たし、頑張れよ。
ps.文才上げろ。もう2ヶ月近くたつぞ。
「……よし。書けた。」
全く上達していない日記を書き終え、一息ついた。
あれから日記を書き始めて2ヶ月たった。
俺の文才(泣)は相変わらずだが、確かに吉本さんが言ってた通り前の出来事がすぐに思い出せる。
日記ってスゲエな。今更気付いた。
そして、日記への関心と共に吉本さんとの仲も絶賛進展中だ。
休みの日は2人で遊びに行ったりもしたし、ささいな雑談で盛り上がったりもした。
まさにリア充へと昇格した俺は今幸せに満ち溢れている。
「…くん、深瀬くん?」
「……あ、ゴメン。何?」
「いや、ボーッとしてたからどうしたのかなって。」
おっと、吉本さんの話を聞いてなかった。まさかリア充としての喜びに浮かれてたとは言えない。
「いや、何でもないよ。日記ってスゲエなって思ってただけ。」
「そっか。」
「うん。」
かと言って、どこぞのバカップルみたいにいちゃいちゃしたり馬鹿騒ぎするわけでもない。ただ、短い会話を交わし、側にいるだけ。
それでも、その空間が俺には心地よかった。
そして、長い間吉本さんと話し合った末、俺は決断した。
榊原の“親友”をやめよう。
もちろん全く迷わなかったわけじゃない。決断するまでにかなりの時間がかかった。
吉本さんに話した内容としては、
これ以上榊原からの被害を受けないために。
その方が、俺のためにも、榊原のためにもなるから。
例え親友をやめても、“友達”でいればいい。
「………そう。私は何も言わないよ。でも、それが深瀬くんの決めたことなら…。」
「うん。ありがとう。」
その日はそれ以上何もしゃべらなかった。
あの後吉本さんと別れ、家に着いた。
しかし、家に着いたものの、まだ家の明かりが暗いままだ。
「母さんまだ帰ってきてないのか……?」
母親の帰りが遅いのは珍しいことではない。女手ひとつで俺を育ててきた母さんは、夜遅くまで残業をし、早朝に帰って来ることだって幾度かある。今日も恐らく帰って来るのは遅くなるだろう。
家の鍵を取り出そうとカバンに手を伸ばしたその時、
ピピピピピピ……………
携帯が鳴りだした。
相手を確認しようとディスプレイを見て、俺は顔をしかめた。何故なら、そこに表示されていたのは“榊原”の名前だったから。
いつもは大抵無視しているし、今回もしようとすれば出来た。
けど、今回に限っては、何故かとらなければならない気がした。
ピピピピピ……………ピッ
「もしもし?」
『深瀬くん!?お願い!助けて!!』
突然俺の声を遮るように榊原の声が流れ込んできた。
「……榊、原?どうした、何があった!?」
『今すぐ、今すぐ来て…………。お願い…。深瀬くんにしか頼れないんだ…!はやく、はやく…、お願い……。』
最後の声を聞くこともなく、俺はカバンを提げたままその場を駆け出した。
もうその時には頭の中には『親友をやめる』という考えはとっくに消え去っていた。




