命をかけてでも。
~深瀬side~
「さ、榊原…」
「やあ、深瀬くん。家にいなかったからさぁ、心配したよ。どこに行ってたの?」
「今日は委員会の仕事があるって言ってただろうが。」
「うん。だから迷惑にならないように少し遅くに来たんだけどね。来たは良いものの誰もいないからさ、不思議に思っちゃってね。でさ、深瀬くん。さっきの子は誰?」
怖い。淡々と喋るヤツは全く笑っていない。
でも、このまま何も言わなかったら、きっと誤解し続ける。そうすれば吉本さんにまで危害が………。
「……お前も知ってるだろ?同じクラスで、俺と同じ委員会の吉本さん。今日は行事の企画を考えるってことで来てもらったんだ。」
「ふーん………。でもさぁ、ただの話し合いなら何で買い物に行ってたの?」
「な、何でそれを!?」
「その手に持ってる袋が何よりの証拠だよ。あ、決してあとをつけたとかそういうのじゃないから。」
安心してね?
出来るわけがない。
まさかコイツ、もしかして買い物をしていた時もずっと……?
「そんなことより、何を買ったの?」
「見りゃ分かるだろ。ノートだよ。」
「何のために?」
「…………!そこまで聞く必要があるか!?」
「だって僕たち“親友”じゃん?」
「………………!!」
やっぱりコイツは完全に“親友”の概念を勘違いしている。しかも、榊原自身それに気がついていないっていうからよりタチが悪い。
「…別に、ただ家に宿題用のノートがなかったから買っただけだ。」
「なぁんだ。それだけか。」
「それだけって何だよ。」
「いや、何も。僕はてっきり2人で交換日記でもするのかと思ったんだけどね。」
「!!」
ヤバい、ほとんどあってる……!
コイツ勘良すぎるだろ!
「…あのな、人を疑い過ぎだ。本当に宿題のためのノートだっつうの。」
「へぇ……。だったら良いんだけど。」
何が良いんだよ。
「ま、明日も遊びに来ようとは思ったんだけど、あいにく用事があるんだ。残念だなぁ。じゃあね、また学校で!」
アイツはそれだけ言って帰っていった。
榊原が帰って行った後、俺は自分が尋常ではないほどの汗をかいているのに気がついた。
マズい。
2人きりで買い物に行ってたことがバレた。
あの時の会話は聞こえてたのか…?
だが、何にせよ日記のことはバレていない。
だったら幸いだ。このまま書き始めれば良い。
家で書くから、見られることもないだろう。
そこまで考えて、俺は急にとてつもない悲しみに襲われた。
今はまだ大丈夫だ。だが、もしこれがエスカレートして、本当に警察を呼ぶ羽目になったら……?
自分の身は守らなければならない。でも、初めて俺に親しくしてくれたアイツを、大事な親友を失いたくない。
俺は、どうしたら良いんだよ……!?
~榊原side~
なんだ。ただのノートだったんだ。
僕も最近ちょっと思い込み過ぎかな。
でも、宿題用ならなんであの吉本って子が選ぶ必要があるの?
やっぱり何かあるよね……。
ま、今はまだ知る必要ないかっ。
今は、まだね…………。
ただ、最近深瀬くんそっけないからな…。
もう少しぐらいそばにいてくれても良いのにね。
僕たち“親友”なのに。
もし、彼がこれ以上僕から逃げるのなら、いっそ…………
~吉本side~
うわぁ……どうしよう…。
まさかOKくれるとは思ってなかった。
今でも思い出すと恥ずかしい。正直死ねる。
でも、これでもっと深瀬くんの近くにいられるわけだよね………。あ、顔熱い。
告白のこともそうだけど、それより今は榊原くんのことだよね。
気づいてたよ、ショッピングモールであとをつけていたの。
はっきり言って榊原くんを近づけたくない。私も榊原くんが怖い。
彼はいつ行動を起こすか分からない。
だから、それまで深瀬くんを守ることが出来るなら、
私が出来ることなら、最善を尽くしたい。
命をかけてでも。




