38・兵士達 2
少し間があいてもうた…。
因みに気付いているか分からないですが、さりげなくマイン…女の子扱いされとる…。
僅かに残る子供の足跡を辿りながら、エクレス、ベクター、レアンは森の中を進んでいる。黒鷲鳥人であるエクレスは飛ぶ事が出来るのだが、残った二人や足跡を見失う可能性がある為、歩行で移動している。隊列はエクレスが先頭で、レアンが真ん中、狼獣人である為嗅覚に優れているベクターは殿という縦列で移動していた。
「ベクター大尉。後方の確認を頼むぞ。私は前方を確認しておく。レアン大尉は左右の警戒を行え!」
エクレスの指示に、二人は了承する。そして三人は森の中を進んでいく。
「なあ、レアン」
前を歩くレアンに、ベクターが小声で話しかける。
「何だ?」
「エクレス中佐って大剣を使っているけど…鳥人って弓とか槍を使うよな?」
「ああ…大体は俺と同じ様に槍を使うか弓矢だな…鳥人で大剣を使うのは珍しいな…」
二人の言うとおり、鳥人は基本的に槍や弓を使っての攻撃が主流だが、エクレスは背中に背負った大剣を使って攻撃を行う。あったとしても長剣の為、大剣を使うエクレスは珍しかった。
「…何かあるのか?」
僅かに聞こえたのか、エクレスが振り返らずに二人に尋ねた。
「あ、いえ…何でもないです…」
慌てて誤魔化す様にベクターが告げた。エクレスはそれ以上追求せずに、そのまま歩みを続ける。
「!」
すると突然、エクレスが足を止めた。
「? どうしたんですか中佐?」
「アレを見ろ」
そう言ってエクレスが示した先には、横転している馬車があった。
「盗賊共の馬車ですか…じゃああそこに盗まれた『アレ』があるのでは?」
レアンがそう尋ねる。
「盗賊の話が本当ならばだがな…ベクター、貴様は周囲を警戒していろ。レアンは私と共に盗まれた物を確認するぞ」
「「了解」」
指示を受けたベクターは、背負っていた斧を手に取って辺りを警戒し、レアンはエクレスに付き添って馬車の周りを探索する。
エクレスは破損した馬車を調べる。
「この様子だとモンスターの仕業の様だ…どうやら奴らの言葉は本当らしい」
エクレスは馬車の破損具合から、モンスターの仕業と断定し、盗賊達の言葉が罪から逃れる為の偽りの言葉ではない事が分かった。すると…
「エクレス中佐!」
ベクターが叫んだ。
「どうした?」
「此れを…」
ベクターが地面を示した。其処には長方形の空の箱が転がっていた。
「…『アレ』が封印されていた箱だ…」
「空という事は…奴ら本当は何処かに隠したのでしょうか?」
エクレスに対して、そう尋ねるベクター。
「分からん。モンスターが持ち去った可能性もある…」
「…『アレ』がモンスターの手に渡ったら、厄介な事に…!?」
すると突然、ベクターが何かに反応した。
「どうした、ベクター?」
「…中佐…血の匂いがします…」
※ ※
ベクターを先頭に、エクレスとレアンが後を追う様に、森の中を走って行く。
「こっちの方か!?」
エクレスが大声で尋ねると、ベクターは無言で頷いた。そして森の中の広い場所に出た瞬間、巨大な虫のモンスターの姿が確認出来た。
「ギガント・ホーン・インセクト…」
レアンが呟いた。エクレスは背負っていた大剣を抜いて、ギガント・ホーン・インセクトへと向かっていく。
「貴様達は武器を抜いて、其処で待機していろ」
そう告げるエクレス。ベクターとレアンはそれぞれ武器を抜いて構えておく。
エクレスはギガント・ホーン・インセクトに警戒しながら近づいてみると、ギガント・ホーン・インセクトの首は切断されていた。
「死んでいるようだ…」
エクレスが呟くと、ベクターとレアンが近づいてきた。
「誰かに倒された様ですが…村の子供が言っていた、『赤いドラゴンの女性』ですか…?」
「そうかも知れないが…別の者かもしれん」
ベクターにそう返すエクレス。
「エクレス中佐!」
すると何時の間にか別の場所を見回っていたレアンが、何を見つけて叫んだ。
「どうした?」
「此れを見て下さい…」
レアンが示したのは地面であり、其処には夥しい血が広がっていた。
「凄い血だ…俺が感じたのは、この匂いだ…」
ベクターが血を見ながら呟いた。エクレスはその血に触れてみる。
「…まだ乾いていない…つい先程の様だ…だがこの量…普通に考えたらならば致死量に値するが…竜族系は生命力が高い種族…恐らく『赤いドラゴン』の物であろう…」
「だとしたら、そのドラゴンは何処に…たとえ生きていても重傷では?」
レアンが周りを見回しながら呟くが、姿は何処にも無い。
「回復系ポーションを使ったか、回復魔法を使ったか…いずれか分からないが、一つだけ分かる事があるな」
「? 何ですか?」
エクレスに尋ねるベクター。
「ギガント・ホーン・インセクトを倒したのは、その赤いドラゴン…そしてその際に、盗まれた『アレ』…妖刀『闇月』を使ったという事だ…」
エクレスの言葉に、ベクターとレアンは驚愕の表情を浮かべる。
「バカな! アレは持ち主を呪う武器…所有者を死に至らしめたという逸話まである武器なんです…持っていて無事で居る筈が…」
「信じられない事だが、受け入れたという可能性もある」
ベクターの言葉に、エクレスが冷静に返した。
「ベクター大尉、レアン大尉。村に帰還し王都へと帰還する。この事を陛下へと報告するぞ!」
「はっ!」
「分かりました!」
三人はあの妖刀を使える者が現れたという、言い知れぬ不安を感じながらも、王に報告をする為に帰還をする為、元来た道を戻っていった。
マイン視点になるのは、もう少し先かな…。
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