↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いと業火の娘  作者: 深月(由希つばさ)
第7章 悪魔と幽霊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/61

7-2

 新月の闇に包まれているはずの館。

 その三階にあるホールは昼間のように煌々(こうこう)と光を放っていた。

 静かに炎が燃え広がって煙で視界がきかない中、魔物たちの襲撃から少年たちが逃げ回っていた。

 先陣を切っていたダイス・グストフが、ハンカチで覆った口元で呻(うめ)いた。



「ゲホッ、ゴホッ……くそっ、出口どこだ?」


「アモルさん……お父様! どこ?」


「魔物に追われるうちにはぐれちゃったね……でも、今は僕たちの安全を確保しないと」



 不安がるティナを励(はげ)ましながら、しかし、マクウェルも不安を募(つの)らせるばかりだった。

 ベシルバードやエルバンス魔法学院の教師たちに対抗していたアモルは、異界のエネルギーを使って極限まで自分の身体を酷使(こくし)していた。

 ベシルバードが水龍の魔法を放ったときには、立ち上がることもできないほど疲弊(ひへい)していた。

 それは一方のベシルバードたちも同じだろう。

 異界のエネルギーを使ったアモルの攻撃に対して、自分たちの魔力を使って限界まで抵抗していたのだ。

 魔法使い協会の上議員長といえど、身体に蓄積(ちくせき)したダメージは相当だったはず……。



(無事でいて……アモル。頼むから……!)



「なぁ。今、この館にいる魔物たちが外に解き放たれたら、俺たち、どうなっちゃうんだ? 学校のみんなは? スラムのガキどもは? この世界は──……」



 いつになく切羽詰まった顔のダイスが言った。

 その背後、炎に紛(まぎ)れて、蛇(へび)の尻尾(しっぽ)をうねらせた怪鳥たちの群れが急降下で近づいてくるのを見て、マクウェルは叫(さけ)んだ。



「……っ! 二人とも、逃げ……!」



 異形の猛禽類(もうきんるい)たちがぞろりと牙(きば)を生やしたくちばしで若い新鮮な肉をついばもうとした刹那(せつな)。



「グギャアッ!」「ギャーアッ!」


「……!?」



 折れた机の脚でぶん殴(なぐ)られて、怪鳥たちが宙に飛び去っていく。

 ダイスたちをその身でかばったのは、白髪頭を引っ詰めた眼鏡の女教師だった。



「せ、先生……教頭先生! 背中から血が……」


「情けない声を出すんじゃありません。たいした傷ではありません……っ。それに──……生徒を守るのは教師の務めです」



 肩で息をしながら、フロリンズが言う。

 魔力切れを起こしかけて立っているのもやっとのはずだった。



「たとえこの世界が魔物の恐怖に脅かされたとしても、貴方たちのことは守ります。それが大人たる者、力ある者の責務です」


「……いやぁ、かっこいいね。いいとこ、取られちゃったな」



 場違いな拍手の音がした。

 見れば、こちらも満身創痍(まんしんそうい)の紳士(しんし)がたたずんでいる。



「お父様!」


「……ベシルバード! 生きていたのですか……」


「力ある者の責務(ノブレスオブリージュ)、ね。君、学級委員長のときも同じこと言ってなかった?」


「な、何十年前の話ですかっ」


「ベシルバードさん、アモルは?」



 マクウェルが勢い込んで言うと、ベシルバードは片眉(かたまゆ)を上げた。



「途中ではぐれてしまった……君たちの方に行ったんだと思っていたんだが」


「……っ! くそっ。どこ行ったんだよ、あいつ」



 ダイスが悪態をつくのに、ベシルバードが苦々しい表情をちらつかせる。

 だが、すぐにその苦渋(くじゅう)を引っ込めた。……後悔するのは、後だ。



「さて。君のように勇敢(ゆうかん)な女性は僕が守ろう」


「……っ! 相変わらず、浮ついたひとですね」



 手近な棒を掲げて怪鳥たちに向かって宣戦布告したベシルバードとフロリンズが背中合わせで共闘する。

 お互い、魔力が底を突いて、もうろくに魔法も使えない。

 それでも背中を守り合うことぐらいはできる。



「抗(あらが)いましょう……この命ある限り」



 フロリンズの年月を経ても凛(りん)とした声に応えて、ベシルバードが口元に笑みを刻(きざ)んだ。

 ひとと魔物──絶望的な彼我(ひが)の戦力差を知りながら……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=669333695&s
― 新着の感想 ―
[良い点]  オ、オジサマッ!  貴方もタラシなのですか、そうですかっ! 釣鐘眼鏡さんが急にヒロインみたいな言動を取り始めて、ちょっと笑ってしまいました。  個人的には、ベシルバードさんの株はそこま…
[一言] 「さて。君のように勇敢な女性は僕が守ろう」 「……っ! 相変わらず、浮ついたひとですね」 べシルバードとフロリンズのここ、狂おしいほど好き(*´ω`*) 老いてますます盛ん、おじさまかっこ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。