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第13話 簡単に金儲けができるそうです

「なあセネカ。あのパエトゥスという男は何だったんだ。」


 パエトゥスという男がいきなり告発しだしたのには驚いた。ファウストゥス・コルネリウス・スッラ・フェリクスというクラウディウスの従弟をブッルスと母を皇后に推したパッラスというクラウディウスの解放奴隷が皇帝に擁立しようとしていると言い出したのである。


「おそらくファウストゥスが仕掛けた罠だったのでは無いかと思います。」


「おいおい。ファウストゥスは皇帝に擁立されようとしていたと嘘を吐かれた被害者だろう?」


 アグリッピナとは対立関係を演じているだけなので2人で良く話し合ったところ、擁立したと告発された2人の弁護をセネカが引き受けさせることで、うやむやにしてしまおうということにしたのだ。そしてパエトゥスは追放した。


「いえ。この件でファウストゥスは単なる元老院議員から一時期皇位継承者と目された人物に変わりました。今後、ネルオに何かあった場合、真っ先に皇位継承者の名前に上げられることになるでしょう。それが狙いだったのでは無いかと思います。」


「そうなのか? じゃあ僕はまんまと罠に掛かったということか。全く本当に魑魅魍魎だらけだな。」


「このままネルオに何も無ければ数年後同じ手段を使うでしょう。そのときに難癖を付けて島流しにすればいいのです。単なる小物ですから、具体的に何もできません。安心してください。」


 難癖とか簡単に言うな。ヤクザじゃないんだから。


「じゃあパエトゥスという男は可哀想なことをしたな。」


「ネルオに取り入ろうとして、罠に嵌ったんですから自業自得です。彼は平民出身なので政務官として役職についても何かあるとすぐクビにされるんです。そこで一生役職にありつくために皇帝に取り入りたいんです。」


「貴族じゃないと幾ら優秀でも常に政にはたずさわれないのか。なんとかならんのか?」


 政務官はローマ市民の投票によって選ばれるのだが、大半が貴族に与えられ市民階級には僅かな枠しか無いらしい。


「今度行うつもりの粛清で空いた元老院議員の枠を市民階級に与えようと思っていたのですが、これで難しくなってしまいました。何か良い案は無いかと思ってはいるのですがこれがなかなか難しいのです。」


 何か案は無いかと質問しているのに逆に聞き返すなよな。自分で考えさせる癖をつけようとしているんだろうが、僕は小学生じゃないって。


「そうだ。属州の優秀な人間を入れてみたらどうかな。それに比例して市民階級の枠も広げられるだろう。」


 国内に居なければ、よそから持ってくればいいのだ。属州にも優秀な官僚の1人や2人は居るはず。市民階級へもバランス良く割り振れば、国内から批判も出ないだろう。


「そうですね。その案でいきましょう。」


 すぐさま飛びついてくる。そのくらいのことセネカも考えていたのだろうな。ここで授業しなくても良いだろうに。


「それにしてもパッラスって、何故あれほど莫大な財産を築くことができたんだ?」


 解放奴隷パッラスの調査結果をみると、解放奴隷とは思えないほどの額の財産があったのだ。クラウディウスの金庫番として有名だったので横領の可能性も詳しく調べられたが何も出なかった。


「まあいいじゃないですか。」


 珍しくセネカがはぐらかす。何か後ろ暗いことがあるらしい。


「何か知っているんだな。・・・もしかして金貸しか?」


「どうして、それが解ったんですか!」


 セネカが驚きを露わにする。


 パッラスから金貸し業の届けが出ている。


「パッラスの立場だと金を貸しても絶対に返ってくる相手がわかるだろう。まさか金庫から横領した金を貸し付けていたんじゃ無いだろうな。確実に返ってくることが解っているのであれば、戻しておけばいいだけだ。後から調べても絶対にわからない。」


「証拠が無いんですよね。それでは横領していないのと同じです。無理に暴こうとしないでください。」


 ははん。そういうことか。


「なんだセネカもやっているのか。セネカが儲けた分は何処にいったんだ?」


 セネカからも金貸し業の届けが出ていることは知っていた。受理したのは僕だからな。


 セネカの立場でも確実に返ってくる相手がわかるはずだ。だがセネカに莫大な財産は無かった。


「・・・だから、暴かないでください。」


 途端に声が小さくなる。セネカは貴族だから金庫から横領して貸し付けなくてもそれくらいの蓄えはあったはずだ。


「そうだな。セネカのことだから、飢饉や災害の際に施しができるようにプールしてあるとか。」


「・・だから、暴かないで・・・。」


 さらに声が小さくなる。答えは合っているらしい。


「真っ先に必要になるのは食糧だ。そうか! 儲けを穀物に変えて循環させているんだな。」


「・だから、暴くなって。」


 ズバリ当ったようだ。


「なんだ僕の提案した先物取引じゃないか。穀物相場の安定にも繋がる・・・というほどには買えないだろうがな。セネカ。止めておけ。そんなことをしても無駄だ。」


「何故ですか?」


「先物取引は提案したが現物を買えとは言ってないぞ。バレると買い占めをしていると誤解受ける可能性が高い。セネカの立場なら、エジプトの生産高とかもわかるはずだ。セネカが買い占めていると情報が流れたらローマがパニックに陥る可能性さえあるんだぞ。」


 セネカが蒼くなっていく。そこまで考えていなかったらしい。考えておけよ。


 相場安定のためというよりも金儲けのためのほうが人々が納得のいく答えだ。例えそれが間違いでも誤解や曲解が発生しないのが一番いいのだ。


「どうしたらいいのでしょう。」


 セネカが縋りついてくる。少しは自分で考えろよ。


「仕方が無いな。今の相場で僕が買ってやるよ。皇帝の備蓄としてなら誤解も受けないだろう。」


 皇帝が個人的に使える金なんか大したことは無いがカリグラ帝から相続した金が『箱』スキルに残っている。美術品とかは皇帝からの下賜の品として使えるがそんなに沢山は必要無いので金に換えているので結構な財産になっている。


「そ・・・そんなぁ。」


 今の相場よりも高いときに買ったのだろう。セネカはがっくりと項垂れてしまった。

次の更新は月曜を予定しております。

必ず完結させますので少々お待ちください

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