7.捜索
「改めて、お願いするわ。柳原杏を、見つけ出して」
燦が迷うはずもなかった。すぐさま護に目をやり懇願する。
「ボクもメンバーに入れてください!!」
肩をゆする燦を、護は慌てて制止した。
「わかった、わかったから!落ち着いて!君の班も捜索部隊に組み込むと約束するよ」
初めて見る燦の前のめりな様子に、双子は気圧される。
そんなこんなで、『柳原杏 捜索部隊』が結成された。メンバーは次の通りだ。
リーダーに衛。構成員に第二十一班の燦、天、一心と第十八班のロイ、阿良汰、朱音。後方支援組に来栖と宵。
燦は第十八班と顔を合わせるのは、これが初めてだった。
翌日の早朝、裏口にメンバーが集結した。
「よろしく、燦君。話は聞いているよ」
ロイが、大きな手を差し出す。握手をすると、燦の手は丸ごと包まれてしまった。そのガタイに見合った力強さを感じる。
「…どうも」
ロイの後ろから、覗き込むように少年が挨拶した。人見知りなのだろうか。
「すみませんねぇ、うちの阿良汰がぁ。あたしは朱音よぉ。よろしくお願いねぇ、燦くん」
長身の女性が頭を下げた。身長は百八十センチはありそうだ。
「やあ、揃ったかな?そろそろ行こうか」
「…!衛さん!」
衛が姿を現すと、阿良汰は即座に駆け寄った。どうやら、衛にひどく懐いているらしい。
「今日も阿良汰は元気そうだね」
衛は阿良汰の頭を撫でた。嬉しそうに、阿良汰は衛の左腕に抱き着く。そこが、阿良汰の定位置だった。
裏の波止場に向かいながら、衛が今日の予定を共有する。
まずは東京に赴いて外部協力者のサリオンと合流する。その後、杏の足取りが途絶えた場所まで向かい、彩礫の痕跡を辿っていく、という手筈だった。
燦がサリオンと会うのはこれで二度目だ。緋色の瞳を細めて笑う姿は、人懐っこい大型犬を思わせた。
道中の船の上はカオスだった。船の勢いにビビり散らかす一心に、それに対して操縦席から叱責する燕。ナゲットを船内にぶちまける燦に、優雅にワインを飲み干す朱音。それらを意に介さず筋トレし続けるロイに、ボディビル大会かの如く掛け声を叫ぶ衛。その横でただひたすらに衛の腕に抱き着き、それらを眺めている阿良汰。そして天は、全てを諦めたように横になって目をつむっていた。
「ちょっとあんたら!!そろそろ岸に近づくんだから静かにしなさいよ!!」
燕の声が飛ぶと、ピタリと先ほどまでの喧騒が止んだ。それぞれが黙って上陸の準備を始めるのを、燦はフライドポテトをつまみながら眺めていた。
とある人気のない岸辺に、モーターボートが止まる。遠くに、一つの人影が見えた。サリオンだ。
彼は手招きすると、とあるあばら家へ招いた。
「どうも、曙苑の皆さん。ここなら邪魔が入らないよ」
「ありがとう、サリオン。今回もよろしく」
衛とサリオンが握手をする。
「それで?今回は人探しだっけ?」
「ああ。燦の幼馴染の子でね。同じ年頃の少年を探しているんだ」
「なるほどね。あ、そうそう。同じ年頃といえば、こっちに紹介したい子がいるんだよ」
そう言うと、サリオンは後ろを向き、奥の部屋に声をかける。
「もういいよ。出ておいで」
暫くして、とある少年がそろりと姿を現した。全身黒の装束に身を包み、深く被ったフードで顔がよく見えない。
だが、燦はその立ち姿に既視感を覚えた。ぽつりと、言葉が漏れ出る。
「…杏?」
その言葉に、少年はぴくりと反応し、顔をそらした。
そう。そこにいたのは、これから探すはずの少年だった。
今回から第二章突入です!
燦と杏がどのような道を辿っていくのか、見守っていただければと思います。
そして改めまして、感想や評価をいただけると今後の励みになります。気になるキャラや好きなシーン、今後の予想などがあれば、ぜひ教えてください。
今後とも、よろしくお願いします。




