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Re:frey ―リフレイン― 虚器盈つる黎明譚  作者: 14to
第二章

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15.積雪

 二月の曙苑を、白銀の雪が覆っていた。深い場所では大人の腰ほどもある雪は、曙苑の広々とした広場一帯を白く染め上げている。

 この雪は天変地異――などではなく、降谷白雪によってもたらされたものであった。


「今年もやってきたーーー!!雪まつりだ!!!」


 朝食を終えるとすぐ、一心は身支度を整え、一番に駆け出していった。白いキャンバスに身を投げ、自身の跡を残していく。

 燦と天はその後をゆっくり追っていた。


「ううううう…さみぃぃぃ。絶対雪のせいでここらの気温下がってるよ」

「水筒にホットココア入れてきましたから、後でゆっくり飲みましょう」


 そう話し合う二人の後頭部へ、二つの雪玉が飛んできた。

 振り返ると、阿良汰がせっせと次の雪玉を作っている。


「雪合戦。雪国出身のおれを舐めるなよ」


 再度二人に向けて雪玉が投げつけられる。


「燦くん、どうやら仲直りしたいようですよ」


 天に耳打ちされ、燦は首をかしげた。仲直りとはこういうものだっただろうかと。

 そもそもの話、燦は別に阿良汰のこと自体はどうも思っていなかった。杏のことを悪く言いさえしなければ、どうでもよかったのだ。とはいえ、向こうが距離を作っていることも、周囲がそれを気にしていることにも気づいてはいた。


 まあ、向こうがそうしたいというのなら構わないが…。


 燦がそんなことを考えていると、再び雪玉が投げつけられた。


「どうした、二人とも。かかってこい」


「ちょっと待ってください!俺はなんの因縁もないのであなたに与します!!」


「ふっふっふ。良い心がけだ。さあ、燦よ、たった一人でどう戦う?」


 突如始まった雪合戦寸劇に、燦はただただ戸惑っていた。


「ちょおっと待ったー!!雪と言えばおれ!!この一心様を忘れるんじゃあないぜ!!」


 やけに意気揚々と現れた一心にウインクされ、燦は更に戸惑うばかりである。

 燦が立ち尽くしている間に、あれよあれよと陣営が決まり、壁が築かれていった。


「じゃあ、おれ&燦vs阿良汰&天で、男の意地をかけた天下分け目の大勝負、開戦じゃい!!!!」


 その掛け声と同時に、相手側から大量の雪玉が飛んできた。

 そのうちの一つを、見事顔面で受け取ってしまった燦は、後ろへとそのまま倒れこむ。


「おいおい、燦一等兵!なんだぁ?そのざまはぁ!もっとシャキッとせんかい!」


 どうやら、自分はいつの間にか一等兵になったらしい。

 燦は体を起こす。


「ねえ、一心」


「軍曹と呼べ」


「…軍曹。ボク雪合戦したことないんだけど」


 燦の言葉に、一心は暫し動きを止めた。


「なんだ、初心者かよ。しょおがねえなあ。おれが秘伝の技を伝授して援護してやるよ」


 一心の様子に、めんどくさいんだか嬉しいんだかわからんなと思いつつ、燦は一心の手ほどきを受けた。




 燦たちが雪合戦にいそしむ場所から数十メートル離れた場所で、来栖は何やら道具を色々と持ち出し、雪をブロック状に切り出しては積み重ねていた。


「なにしてんすか?ブロック遊び?」


 近くで大きな雪だるまを作っていた龍之介とロイが声をかける。


「違う。イグルー」


「いぐるー?なんすか、それ」


「海外版のかまくらみてえなもんだよ。氷とか雪をレンガみたいに積み上げるやつ」


「ろい、正解。簡易的な、イグルー作って、ここで、鍋する」


「お、何やらいい話してるねー」


 そこに衛が現れ、四人は鍋パをするべくイグルー作りに精を出した。




 その頃、雪合戦は決着がついていた。


「ぐぬぬ、降参…」


「はっはー!我らが勝利を収めたぞ、燦一等兵!この名誉を称え、貴君は上等兵に昇進である!!」


「わ、わーい。やったあ」


「ふははははは!!」


 一心のわざとらしい笑い声が辺りに響く。

 なんか勝ったし、楽しそうだからいっか、と燦はその場に腰を下ろした。

 そのまま後ろに倒れ、雪に体を埋める。

 ここに杏がいたなら、もっと楽しめたのだろうか。

 白い空を見上げながら、そんな考えが頭から離れなかった。






❖❖❖❖❖






 皆が雪にはしゃぐ姿を、第一医務室から見守る二つの影があった。


「護ちゃんも行ってきてもぉお、いいんじゃなぁい?」


 朱音の言葉に、護はコーヒーを啜る。


「僕はここに控えていないと。それに、寒いの苦手だし」


「そお?そういうところはぁあ、あんたたち正反対よねぇ」


 朱音はホットワインを口にしながら、窓の外の衛へ目を向けた。


「…護ちゃん、聞いたぁ?」


「蠱蛇教会のこと?」


「えぇ。衛ちゃんが言っていたのって…」


「ほぼ確定、と思っていいだろうね。百パーセント誘い出されているけれど、乗る以外に選択肢はない」


 朱音は、グラスを傾け中身を回しながら、眉をひそめる。


「あの子たちにはぁあ、まだ早いんじゃないかしらぁ?」


「ここ数年、蠱蛇教会は勢いを増している。そろそろ、子供たちも避けては通れなくなる」


「………」


「それに、今は大人の人手が足りない。殆どが出払っているのは、君も知っているだろう?」


「…そおねぇ。ごめんなさい、あたしの我儘だったわぁ」


「いいや、当然のことだよ。ありがとう」


 静まった部屋に、外の笑い声が響く。

 はしゃぐ皆の心模様とは相反して、空は重く垂れこめていった。


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