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50話 巨大な狼型の魔獣との戦い ②

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 上空に火柱が見えたのは広大な森の中を入っている時だった。その火柱が魔法だということをランスディールやカーリージェリー、ラミィも女王ヴィヴィも理解した。

 あんな魔法を発動させないといけない事態になっているのだ、と急いで森を抜けて崩壊した城門塔にたどり着くと、一変した世界に言葉を無くした。

 一月前まであった街並みは破壊つくされた姿に変わっていて、火柱によって飛んだ火種は木材を燃やしていた。

 あまりの変わりようにランスディールもカーリージェリーもラミィも立ちすくむ。


「……すごいね」

「ああ」

『なんて奴じゃ』


 カーリージェリーの荷物鞄を椅子替わりにして乗っている女王ヴィヴィは怒りをあらわにする。


ピカッ。


 突如、いくつもの白い閃光が目に映ったと思った瞬間、ドンという轟音が空気を震わせた。


『!』

「!」


 ラミィと女王ヴィヴィは身をくすめて耳を塞いだ。

 ランスディールとカーリージェリーは目をつぶって耐えた。あまりの衝撃音に身が固まった。


「今の雷かい⁉」

『そうじゃ。エーデルの雷の魔法じゃ』


 驚きを含ませたカーリージェリーの問いに女王ヴィヴィが答える。


「すごいね」


 カーリージェリーが感嘆の声を出す。


「さっきからすごいしか言ってないよ」

「あたしは魔法使いとは縁が薄いんだよ。そういうお前さんはさっきからびびってるじゃないか」


 ランスディールが突っ込むと、カーリージェリーがにやりと笑ってやり返す。


「別に。普段通りだよ」


 ランスディールは平情でいる姿を見せてから、急ごうと言って走り出す。

 この街に来てから問題と驚きの連続で、心身ともに疲れを感じているのは否定できないし、どんどん悪い方に向かっていき、想像の範疇を超えている現状には平常心を保つので精一杯だ。

 よりにもよって巨大な魔獣と戦うことになるなど、いったい誰が想像できただろうか。

 巨大な狼型の魔獣に踏み荒らされた石畳は粉々で、茶色い地面がむき出しになっている。つまずかないように注意しながら街中までくると、街に警鐘を鳴らし続けていた鐘楼は積み木の玩具が崩れ落ちたように倒壊していた。


「ひどい有様になっちまったね」


 走りながら言ったカーリージェリーにランスディールはちらりと見て、ああ、と短く答える。

 王都側の城門塔へ近づくにつれ、足元から伝わる地響きを強く感じる。

 また上空に白い閃光が走り、ドン、ドンと今度はたて続けに雷鳴が響いた。


『!』

「!」


 震える空気で倒壊した瓦礫から砂塵が地面に落ちるのを横目で見ながら、王都側の城門塔の手前までくると、倒れている老人を見つけた。

 老人の片足は半壊した城門塔の瓦礫に埋もれていて、苦悶した声がランスディールの耳に入る。


「大丈夫ですか⁉」


 ランスディールは背負っている荷物鞄を地面に下して瓦礫をどかす。

 カーリージェリーも荷物鞄を下して手伝う。


『ランスディールよ。我が治療する』


 ランスディールとカーリージェリーが引きずり出すように助け出した老人に、カーリージェリーの荷物袋から飛び降りた女王ヴィヴィが治療魔法をかける。


「ライナス、あそこにいるよ」


 カーリージェリーが固い声で言ったその先に、巨大な狼型の魔獣がいた。草原が残っている地平で地団駄を踏むように足を動かして地響きを起こしている。

 その巨大な狼型の魔獣を冒険者たちが囲み、隙を見ては足元へ攻撃をしていた。


「女王ヴィヴィ。治療魔法が終わりましたら、ちびたちの様子を見てきてもらえませんか? 私とカーリーは行ってきます」

『うむ。わかった。必ず我もそっちに行くとエーデルに伝えてほしいのじゃ』


 ランスディールは伝言を受けて、銀槍を握って駆けだした。





「エーデルロワーナ師団長!」

「ランスディールか!」


 駆けつけたランスディールの声にエーデルロワーナは歓喜した声で返す。

 エーデルロワーナの近くにいた冒険者たちがその声に反応した。


「お待たせしました!」

「本当に待ったぞ。ヴィヴィは?」


 戦場の統率と魔法を使った反動からか、麗人の顔に明らかな疲れが見えている。


「そこの城門塔で怪我をしている住民の治療を。終わったら必ずこちらに来ると」

「わかった。ランスディール、ラミィを借りてもいいか? 怪我が重症な冒険者たちから治療魔法をかけてほしいのだ」

「ラミィ」

『ランスディールのお守りする』


 二人の話を聞いていたが、ラミィはランスディールを見上げて自分の果たすべき役割を理由に突っぱねた。


「ラミィ、怪我人を優先してくれ」

『……わかった』


 命はなにものにも変えられない。

 ラミィは渋々頷いて、冒険者たちのところへ走っていく。


「カーリー」

「ああ。わかっているよ」


 カーリージェリーはラミィの護衛として、ラミィを追いかけて行った。


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