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46話 緊急事態

投稿遅くなりました。すみません。

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 黒うさぎのちびを抱き上げたままのランスディールは足音を鳴らしてギルドに駆け込んだ。

 ランスディールはカウンターで事務処理をしている受付嬢に緊急事態です、とやや前のめりで声をかけた。


「巨大な狼型の魔獣が一体、白うさぎの里に現れて暴れています。自我を失った巨大な狼型の魔獣は怒り狂っていて、今、エルフ族の長が白うさぎの里で足止めしています。先ほど、精霊術師団長エーデルロワーナ殿が帰ってこないと王都から連絡があり、私たちは『獣人が住む森』との境界線まで行ったときに会い、知らせに来ました。エーデルロワーナ師団長から討伐の依頼を出すようにと」


 あまりの急展開にランスディールも顔が強張っている。できるだけ早口にならないように意識していた。

 エーデルロワーナが白うさぎの獣人たちを連れて役所に避難していることも伝える。


「わかりました。すぐに討伐の依頼を出します!」


 受付嬢は棚から依頼書を出して、インクをつけた羽根ペンを走らせる。

 ランスディールは巨大な狼型の魔獣の情報を、エーデルロワーナから聞かされたままを受付嬢に伝える。

 カーリージェリーが周囲見ると、周りにいる冒険者たちは聞き耳をたてるような姿勢をとっていた。

 そんな中、肩幅のある重装備の剣士がランスディールに声をかける。


「その巨大な魔獣はこっちに来るのか?」

「可能性は否定できない。白うさぎの里からここまでの距離と時間を考えると、王都の騎士団に要請して待つほどの悠長はないと。エーデルロワーナ師団長はすぐにでも冒険者総出で討伐したほうがいいと言っていた」


 ランスディールは顔を上げて、肩幅のある重装備の剣士に答える。

 ランスディールは実際に現場を見ていない。だから、エーデルロワーナから聞かされた情報をそのまま伝えるしかない。

 ランスディールに抱きかかえられている黒うさぎのちびは、気になって顔をあげて歩み寄ってきた冒険者を見る。

 黒うさぎのちびの顔の角度があがったことを、視界の端で気がついたランスディールは黒うさぎのちびの漆黒の角がばれないように、外套で隠しているちびの頭を手で掴み、ちびの顔を自分の肩へ押しつける。


「こりゃあ、大仕事だな」

「そうですね。こうときは誰か、熟練の冒険者にまとめ役を――」


 肩幅のある重装備の剣士が呟き、童顔の修道士が提案を口に出したその時。

 突如、地響きと魔獣の咆哮が同時に響いた。


『!』

「!」


 ラミィと黒うさぎのちびの耳が外套の中で反射的に動いた。

 ランスディールと肩幅のある重装備の剣士たちは振り返ってギルドの外を見る。

 カーリージェリーは警戒した顔でギルドの出入口を見て、いつでも剣を抜けられるように柄に手をそえた。

 咆哮に怯えた受付嬢がきやぁ、と悲鳴をあげる。

 熟練の冒険者や驚いた冒険者たちは状況を把握するために我先にとギルドを飛び出した。


「おい魔獣だ! でかい狼型の魔獣があそこにいるぞっ!」

「受付嬢さんよ。依頼書作成している場合じゃあねえ! 今すぐに冒険者たちを集めてくれ!」

「住民の避難が先だろう! 鐘だ! 誰か、鐘楼に行って警鐘を鳴らすように行ってきてくれっ!」


 ギルド内に状況を知らせる声や対応を求める声が飛び交う。


「おい、兄ちゃんよ。討伐依頼は後だ。弱点はないのか?」


 外から出て戻ってきた熟練の冒険者たちがランスディールを囲む。熟練の冒険者たちもさすがに相対したことはないのだろう。いつも余裕を浮かべている表情に若干の驚きと動揺が見えた。

 強靭な肉体と勲章ともいえる傷跡。いくつもの修羅場を乗り越えてきた熟練の冒険者は立っているだけで、周囲を圧倒させる空気をもっていた。

 カーリーより覇気があるな。弱腰にはらないものの、近衛騎士団に所属しているランスディールさえも、さすがに囲まれたら見えない圧に息をのむ。

 ランスディールはエーデルロワーナが教えてくれた情報を伝えた。


「そんなにでっけえのか?」

「倒しがいがなるなぁ」

「ここは定石通り、足を狙ってから頭だな」

「誰か! 魔法道具屋に行って、火属性の物を全部もらってきてくれ! 支払いはギルドがもつって言えばいい!」


 情報を得た熟練の冒険者たちは周囲にいる中堅や若手の冒険者たちに情報を伝える。


「肝心な精霊術師団長さまは加勢してくれるよな?」

「だと思います」

「白うさぎの女王が何とかって槍を持ってくるまでにどれくらい時間がかかる?」

「すみません。エルフ族の里がどこかは、私は知らないのです。師団長なら答えられると思いますが……」


 熟練の冒険者たちから矢継ぎ早に質問されたランスディールは、申し訳ない気持ちになり眉尻を下げる。


「まあ、とりあえずやるしかねえ」

「あたり前だ」

「おれたちがやらずに誰がやるんだよ!」


 その一択しかないだろうが、と熟練の冒険者たちが笑う。


「巨大な狼型の魔獣の討伐、金貨、五百枚出しますっ!」


 討伐の依頼書を書き終えた受付嬢が叫んだ。

 余裕で数年は遊んで暮らせる金額に、冒険者たちからおおという驚きの声があがる。


「うし! 行くかっ!」


 肩幅のある重装備の剣士が気合を入れた声をだした。

 それが、冒険者たちが戦いに赴く銅鑼代わりの合図となった。

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