37話 お迎え
「悪い。あたしのせいで……」
ひと悶着があった後、ランスディールとカーリージェリーはギルド職員から呼ばれて報告を終え、大通りを歩いている。
カーリージェリーは冒険者たちからの厳しい視線と言っても信じてもらえない悔しさに加え、一方的に責められたことで疲れきった表情を見せている。
「違うよ。最初に言いがかりをつけてきたあの彼だ。魔獣も見計らったかのように襲ってきた感じがする」
結局、身の潔白を証明しなければならない状況になってしまった。
ランスディールとカーリージェリーは黒うさぎのちびを保護してもらうために役所に行っていたので、一部始終しか知らない。
窓口で自分たちの報告を終えたあと、他の冒険者がどういう報告をしているのか気になって職員にいろいろ聞いた。やはり人為的な匂いがする結論になった。
「誰かがカーリーになすりつけようとしているのかもしれない」
なんで、とカーリージェリーは言う。
「あたしは前回の件をのぞけば、誰かに恨みを買うようなことはしていないけど……」
カーリージェリーの語気は弱々しかった。普段だったら言いきるだろう。できなかったのは、あくまでもカーリージェリーからの視点で、自分が知らないうちに誰かに恨まれるようなことをしているのかもしれないと、思いはじめたからだ。
「とにかく情報を集めよう」
ランスディールとカーリージェリーは十字路で立ち止まる。
ラミィと黒うさぎのちびを迎えに行くのに、返り血を受けた服のままいくのはよくないからと、お互い一度宿に戻ることにした。
「ああ。……悪いね」
彼女らしくない弱気な姿に、ランスディールはくすりと笑う。
「声をかけたのは私からだよ。それに、私たちはやっていない」
カーリージェリーは力強く頷く。
「現地集合でいい?」
「いいよ。役所の窓口だね?」
ランスディールは頷いて、また後でとカーリージェリーにそう言って別れ、ネネクの宿へと急いだ。
◇◇◇◇◇◇
『ランス! 遅い!』
『ランス!』
「ごめん、つ!」
着替えたランスディールとカーリージェリーは役所で合流し、窓口にたっている事務職員にラミィと黒うさぎのちびがいる部屋を聞き、その部屋の扉を開けた。
足音でわかったのだろう。部屋に入ろうと一歩足を踏み出したら、突撃するようにラミィと黒うさぎのちびがランスディールに飛びついた。
助走をつけて顔面に向かって飛びついてきたラミィに、ランスディールは海老反りになって倒れそうになったが、なんとか踏みとどまる。
ランスディールは腕を上げてラミィを抱きしめようとしたが、痛みを感じて顔をしかめる。
『ランス、怪我した⁉』
「腕をちょっと」
『早く言う!』
ラミィは急いでランスディールから降りる。
「ちび遅くなってごめん」
『痛い?』
ランスディールは足にしがみついている黒うさぎのちびに言う。
ちびは眉を下げて心配そうな顔をしている。
「少しだだから大丈夫だよ」
『ランス、そこに座る』
ラミィはランスディールの服を引っ張って長椅子に座るよう促す。
上着を脱いで長椅子に座ったランスディールの隣にラミィは座り、金色の角を光らせ癒しの魔法を唱える。ラミィの手から光がうまれて、痛みも傷も徐々になくなっていった。
「ありがとう。カーリーもお願い」
『わかった!』
ラミィはカーリージェリーの所へ歩み寄って、癒しの魔法をかける。
「きて早々に怖い思いをさせてごめん」
ランスディールは立ったまま様子を見ていた黒うさぎのちびの優しく頭を撫でる。
『大丈夫』
安心したのか、撫でられて嬉しいのか、黒うさぎのちびは幸せそうに口元を緩める。
ランスディールの手が黒うさぎのちびの漆黒の耳に当たるたび、ぴくりと動く。
「ラミィ、ごはんは食べた?」
『ちびと一緒にごはん食べた!』
ラミィは元気に金色の角を光らせた。
『ちびは普段通りに食べられた?』
『……ちょっと少ない』
黒うさぎのちびはランスディールに木の実がいくつ、果物をいくつ食べたかを念話で伝えた。
「じゃあ、帰りなにか買って帰ろうか」
黒うさぎのちびは嬉しそうな顔をして頷いた。
「ラミィはちゃんとちびの面倒をみていましたよ」
二人の面倒を見てくれていた女性事務職員が褒めると、カーリージェリーの治療を終えたラミィはえっへんと胸を反らした。
そこへ、検問所であった男性事務職員が顔を出してランスディールに声をかける。
「あの、本部から返答がありまして」
「あ、はい」
「エーデルロワーナ師団長がこちらに来られます」
「え⁉」
「やはり幼獣なので書類の提案だけでは判断がしにくいとのことです。契約の許可をだすかどうかは直接話を聞いてから判断したいとのことで」
男性事務職員は黒うさぎのちびを見て、明後日ごろに来るとランスディールに伝えた。
ランスディールはわかりましたと了承した。
「滞在のほうは大丈夫とのことです」
「ありがとうございます」
とりあえず滞在の許可はおりた。
ランスディールはほっと胸をなでおろした。
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