32話 避難 ②
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役所ではどの部署も緊急事態に追い立てられるように誰もが忙しそうに動いていた。
役所についたランスディールは黒うさぎのちびを下して、精霊術師団の部署の窓口から女性職員をつかまえた。
声をかけることさえ困難にも見えるなか、ランスディールも悠長に待つことはできないので、近場にいた女性職員に声をかけ、検問所の応接室に来てくれた男性事務職員を呼んでほしいと切実な表情で頼む。
女性職員は上司から急ぎで頼まれた仕事とランスディールの頼みを脳内で天秤にかけ、葛藤の末、男性事務職員を連れてきてくれた。
「ライナスさん」
「忙しい中すみません。ちびを一時的に保護していただけませんか。城門塔に魔獣が押し寄せていて、一人でも多くの冒険者が必要なんです」
「ああ、そうですよね。わかりました。隣の部屋が応接室なのでそちらで。私は急ぎの案件がありましてずっとそばにいることは難しいので、代わりに別の者をつけます」
「わかりました、ありがとうございます。あの、契約の件はどこまで進んでいますか?」
「すみません。まだ返事が届いていませんので……」
ランスディールは手短にちびの保護と契約の状況を確認する。
男性事務職員がちびの面倒を頼めそうな誰かを探している間、ランスディールは片膝をつき、首に下げている懐中時計を黒うさぎのちびの手のひらに乗せる。
「またこれを預かってくれる? 必ず帰ってくるから」
『……』
黒うさぎのちびは朝日に照られた夜空を連想させる青い瞳を不安げに潤ませた。
「必ず迎えにいくから」
ランスディールは黒うさぎのちびに微笑む。
信じてほしいと黒うさぎちびの目を見て返事を待つ。
出会ってからまだ長くとは言えない時間しか経っていないが、それなりに信頼関係は築けていると思う。
懐中時計を渡したのは、不安を抱えている黒うさぎのちびの心の拠り所になるから。
ランスディールと黒うさぎのちびを繋ぐ信頼と希望の絆になるもの。
『……うん、わかった』
漆黒の耳は不安そうに垂れ、漆黒の角は弱々しい光だが黒うさぎのちびはしっかりと頷いた。
ランスディールから受け取った懐中時計をぎゅっと握る。
ランスディールは黒うさぎのちびの頭を撫でた。
「ラミィ、ちびを頼むよ」
ランスディールはちびのお守り役としてそのまま残るようお願いする。
『わかった!』
ラミィは任せてと、金色の角を光らせて胸をぽんと叩いた。
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