28話 登録できない?
荷物を置いて各々休んでいると扉が叩かれた。
ランスディールが席を立って扉を開けると、精霊術師団のローブをきた男が鞄を手に提げて立っていた。
「あの、ライナスさんでよろしいでしょうか?」
「はい。お忙しいところ申し訳ありません」
「いえ、これも我々の仕事ですから」
そう言った男は街の役所にある精霊術師団の部署に在籍していることを証明する証をランスディールに見せた。
ランスディールは申し訳なさそうに言って、男の事務職員を長椅子へと勧める。
ランスディールはちびを隣に座らせて、ラミィはちびの隣に座った。
カーリージェリーは第三者という立場なので、ランスディール側の壁にもたれて静観する。
「契約は私とこのこです」
ランスディールは黒うさぎのちびのフードを下して紹介する。
「黒うさぎですか。珍しいですね」
男の事務職員は黒うさぎの獣人を見るのは初めてのようで、職業柄というのもあり黒うさぎのちびをまじまじと見る。
「ええ。数日前に魔獣に追われていたところを助けまして――」
ランスディールはラミィを連れてこの街に来た理由、白うさぎの里に向かっている途中で起きた出来事、白うさぎの里に滞在時にしていたことなどの経緯を話した。
「ですので、これは一時的なものでして」
「そうですか。しかし、一時的でも契約を交わしたなら登録は必要です」
「それはかまいません。あの、黒うさぎの里もことでなにかご存知でしょうか?」
「黒うさぎの里が魔獣に襲撃されたという話は本部から連絡がありました。ですが、詳細なことはあまり……」
「わかりました」
ランスディールが身を引くと、では契約書に記入をお願いしますと男の事務職員は書類を鞄から出す。
受け取ったランスディールは自分の名前、獣人の名前、契約した日、契約に立ち会った里の王の名前を記入する。
「ちび、ですか」
ランスディールから書類を受け取った男の事務職員は記入漏れがないか確認する。その中で、獣人の名前が容姿そのままの特徴で書かれているので、本当にこれで登録していいのかと聞く。
「まだ幼獣でして。母なる神から名前を受け取っていないそうなんです」
「それは……困りましたね。基本的には成獣が対象でして。契約の登録が終わり次第獣人は精霊獣として契約主の家族となり、契約主と一緒に軍に所属することになります」
人間は森の外で暮らし、獣人は森の中で暮らすというお互いの領域を犯さない取り決めがある。しかし、ラミィのように人と暮らすことを希望する獣人がいる。
リアンド国の法で唯一認められているのは、獣人が人と契約を結び、契約主の家族になって軍人になることだ。
獣人は別名精霊獣ともいい、地、水、火、風、光、闇のいずれかの属性をもってこの世に存在し、魔法を操れる力がある。その力を国の為に使うという約束を書類で交わせば認められる。
「ええ。はい。それは知っています」
「幼獣を軍人として扱うのは……」
男の事務職員は困った顔で黒うさぎのちびを見る。
軍に所属すると精霊獣は訓練を受ける。国から契約主とともに戦場への出撃命令がくだったとき、二人三脚で行動するからだ。
幼いとうことは、体は成長過程で未発達な部分がある。人間の子供もそうだ。とても訓練に耐えられるとは思えない。
「では、どうしたら……」
ランスディールが困った表情を男の事務職員に向ける。
お互いの眉が下がった状況になり、話が止まってしまった。
「一時的な保護でしたらすぐに対応はできるのですが、契約となると……。一度、本部のほうに確認をさせてください」
申し訳ありません、前例がありませんのでと男の事務職員は謝る。
「確認にどれくらいかかるでしょうか? その間ちびを街に入れてもよろしいですか」
「申し訳ありませんがそれについても本部に一度……」
「あの、そういう話になりますと、ちびは検問所の外で待つことになります。さすがに危険ですので許可をいただけませんか? 後、黒うさぎの里のことも含めて王都にある師団に報告もしたいのです」
宿から外へは出しませんからとランスディールは言うが、男の事務職員は謝るだけ。
結局お互いの事情の間をとり、ランスディールたちは検問所で一夜を過ごすこととなった。
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