25話 白うさぎの里に戻ってきた ②
話が一区切りしたところで、ランスディールは街へ戻るため帰り支度をはじめた。
そしてまた黒うさぎのちびが空気を読んで、ランスディールに抱き着いた。
ランスディールが連れてはいけないと言うと、何故かラミィから避難を受けた。
『ランス噓つき!』
(え?)
非難される心当たりがないランスディールはなんで、と言い返す。
『一緒にいるって約束した!』
ラミィはなぜわからないと言いたげに、金色の角を強く光らせた。
「あれは、ここに来るからっていう……」
『困ったときは全部、ランスがやる!』
ラミィはなぜわからないと怒って、再び金色の角を強く光らせた。
(え? 困ったとき? ……もしかして)
ランスディールは目を見開いた。とても嫌な予感がした。
「ラミィ。ちびになんて言ったの?」
ランスディールはできればそうであってあってほしくないと願った。
『む? 困ったときときは全部ランスがやる! ランス賢いから問題ない! 一緒にいればいいって言った!』
「あ――……」
ランスディールは顔を上げて、大樹のその先にある青空を見つめて脱力した。
ここでランスディールは、ラミィから黒うさぎのちびの問題を全て丸投げされていたのだと知った。
(いつそうなった⁉)
ランスディールは今度は手を額にあてた。必死に記憶をさかのぼる。
『守ってくれる? 一緒にいていいかって聞いてる』
(あのときだ)
ラミィから聞かれて、ランスディールは気安く了承した。
あのとき黒うさぎのちびはずっと一人で逃げていた。だからもう一人は嫌だとあのときラミィに言ったのだろう。
誰かを仲介しての会話はこういう可能性があるから困るし、大変なのだ。
『ランスディールよ、どうしたのじゃ?』
状況が飲み込めない女王ヴィヴィが金色の角を光らせた。
「今、原因と犯人を見つけました」
ランスディールはじろりとラミィを見る。
ラミィはなんでそんな目で見られないといけないのかわからず、眉をひそめる。
「ラミィ。言葉はちゃんと正確に伝えないとだめだよ」
『ちゃんと言った!』
言ってない、とランスディールは即座に突っ込みたかったが、もう今更だ。
はあ、と深いため息をこぼす。
「言葉の行き違いがあったようです」
ランスディールが詳細に説明すると、女王ヴィヴィは同情的な目を向けた。
『そうであったか』
「ちびに連れて行くのは難しいと説明していただけませんか。獣人は狙われやすいのです。幼獣ならなおさら危険です」
ランスディールから言い出した事なら責任をもつべきだが、今回はラミィの言い方の問題。
今なら女王ヴィヴィがいる。
なんとかならないかと期待してランスディールが真剣な表情で言うと、女王ヴィヴィも同感だと頷いた。
女王ヴィヴィは金色の角を光らせて、黒うさぎのちびに説明する。
やりとりが何回か続き、黒うさぎのちびは漆黒の角を切なげに光らせた。
朝日に照られた夜空を連想させる青い瞳が潤んでいる。
『……ランスディールよ。ちびがちゃんということは聞くと言っておる。人の国で必要な勉強もちゃんと覚えると』
ランスディールと一緒にいたい、黒うさぎのちびはそれを強く主張していると女王ヴィヴィは念話でランスディールだけに送る。
「そういう問題ではありません。実は私は騎士団を退団して旅を始めました。安全な環境で育てられないのです」
ランスディールは難しいと首を横にふる。
ラミィは人の国で暮らし始めたとき、訳あってエーデルロワーナの家で、ランスディールの母親と共に生活していた。護衛もついていたので安全面が違う。
『やめたのか?』
「はい。人間関係に問題があったわけではありません。自分探しといいますか、旅がしたくて」
『アークスと同じか。いや、あやつは父親と喧嘩したから出てきたと言っておったな』
「女王ヴィヴィ。私はラミィのように直接意思の疎通ができません。私の代わりに説得していだだけませんか?」
ランスディールが懇願するように頼むと、女王ヴィヴィが再度、黒うさぎのちびへ念話を送る。
『だめじゃ。言葉だけで説得するのはもう無理じゃ。ここは一度、人の国に連れていって自分が人の国で生活できるかちびに体験させてはくれぬか。そのほうがよい』
数回のやりとりがあった後、女王ヴィヴィはお手上げじゃと金色の角を光らせ、首を横にふった。
「説得させるために期間限定で連れていく、ということですね?」
ランスディールは解決策としての話をしていると言質をとりたかった。
この件が解決した後、黒うさぎのちびに考え直してほしいからだ。
女王ヴィヴィがうむと頷く。
『鞄の持ち主はちびが茂みから見た冒険者たちかもしれん。もし、そうじゃったらちびは目撃者じゃ。そういう理由からにしても、いたほうがよかろう』
「そうですね。わかりました」
ランスディールは言質が取れたので身を引いた。
『のう、ランスディールよ。ちびと契約できぬか? 先ほどの件にしろ、直接意思の疎通ができたほうがいいと思うのじゃ』
「え? そんな理由で契約していいのですか? 契約は伴侶のように一生ともに生きていくと誓い合ったときにするものだと教えらましたが」
女王ヴィヴィの提案にランスディールは驚いた。
『そういう考えが正しいのじゃが、人の国は色々なことが起きる。意思の疎通ができなければ、誰かに助けを求めることもできぬ。万が一のことがあったとき、助けが呼べないのは危険じゃ。ランスディールならちびを悪いようにはしないと信じておる』
「ありがとうございます」
そこまで信用してくれるのは嬉しい。
ランスディールは黒うさぎのちびを必ず無事におかえししますと女王ヴィヴィに約束する。
「あの、場所はどこで?」
ランスディールが聞くと、女王ヴィヴィはそこでできると絨毯の近くの草地を指した。
ラミィがランスディールのことを賢いと言っている場面がありますが、ここでの賢いはラミィが自分と比べて言っています。
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