If ”もし神からの介入が無ければ”
人によっては蛇足もいい所だと思いますが、どうぞ最後までお楽しみ下さい。
「・・・ふふふ。貴方も物好きですね。分岐し選ばれなかった運命の先を垣間見たいだなんて」
女神はあなたに向かって問いかける。
「私のこの世界を何らかの方法で観測する貴方方が何者であるのか、外界の神であるのか、はたまた超文明を生きる外界の民であるのかは正直に言ってどうでも良い。重要なのはここに干渉してきているという事実だけ」
そこまで言うと女神は本棚から一冊の本を取り出した。
「まぁ、今日は始まりし日ですもの。不問にしましょう。全ての世界はこの日に生まれ、この日を基準に廻って行く。そんなめでたい日に争うだなんて嫌ですしね」
真っ直ぐとこちらを射抜く緋色の瞳。
「・・・こほん。ではこれより語られますは最もつまらぬ可能性の行く末。それはあまりに平和で刺激に足らぬ物ではありますが、何卒最後までお楽しみ下さいませ」
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「ん~・・・ここまでにすっかな」
今まで格闘していたレポートを机の上にほっぽり、火のくべられたストーブ兼湯沸かし台の前に移動する。ぬくい。
本日は十三月の二十九日。この可笑しい暦からここが地球とはそれなりに違った惑星である事が分かるが、それはさておき新しい年を迎えるまで後二日と半日、年末である。
予定通りであれば明日、慎太郎夫妻とその子供達がこの家へ年末にかけて泊まりに来る筈。
一階の生活スペース兼研究所モドキは勿論、二階の普段使っていない客室も掃除をしておかねばなるまい。
「はぁ、面倒いけどやるっきゃないか・・・」
コハクのお小言が怖いし、何より仮にも教授という人を導く立場にあるのに子供を不衛生な場所に寝泊まりさせるのは気が引ける。
「・・・相変わらずプラスチックが恋しくなる重さだな」
俺は木材と金属でできた激重掃除機を片手に階段を登った。
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俺が掃除機を手に、出来うる限り早くプラスチックを安定して生産、加工出来るまで文明を進めなければと改めて自身に誓いを立てた翌日。
庭に植えてある植物達に魔道具によって水がかけられている様を眺めていると背後から足跡と共に元気な声が聞こえてきた。
「ハヤテおじさ~んっ!」
「おぉ、サスケ君。予定より早かったね」
「うんっ!お父様の仕事が早く終わったからその分早く来たんだっ!」
その時俺はサスケ君の手に赤い実が握られて気がついた。
よく見ると学生と共同で品種改良に取り組んでいる唐辛子であった。
「ハヤテおじさん。これ食べていい?」
「・・・ん?サスケ君辛いの得意だっけ?」
「ううん?」
どうやら果肉が厚く付いているその風貌に騙されたらしい。
「食べてみるかい?」
「ううん。これ辛いんでしょ?食べないよ」
「甘いかもよ?」
「騙されないよっ。こういう時のおじさん意地悪だし」
サスケ君は唐辛子をこちらへ渡すと興味は違う方へ移った様だった。
「じゃあおじさんは少しやる事があるからね。お父さん達の方へ行っていると良い」
「うんっ!でも後で魔術とか実験とか見せてねっ!約束だよっ!」
「分かったっ!」
サスケ君は走って行った。
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その夜、サスケ君が寝付いた頃、俺と慎太郎とコハクは卓を囲み酒を呷っていた。
「けぇどぉ、みんな、ふぅけましたーねぇ」
少し酒精が回ってきたのか真っ赤になったコハクが笑いながら言う。
「だな、学校を卒業して十年。商会に就職して、結婚して、色々あったなぁ。隼はどうよ?」
「俺の方も充実はしているよ。教授としての生活にも慣れてきたし・・・ってこの話去年もしなかったか?」
俺の言葉に頷く慎太郎。
「・・・そうなんだけどさ。なんだか今の幸せなんか簡単に吹き飛んでいってしまいそうでな。上向きな話は出来るだけ沢山聞いておきたいんだよ」
慎太郎は酒のせいか悲しげな顔をする。
「はぁ、お前、今はここに俺達しかいないから良いけどよ明日、皆が来たらそんな顔すんなよ」
「そぉーれすよぉっ!のみまひょうっ!」
「・・・いや、お前は自重しろよな」
こうして夜は更けて行く。
きっとこれから先もこんな年末が続いていくのだろう。
俺はそんな未来に想いを馳せ酒を含んだ。
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「ふふふ。この辺りで締めさせて頂きますね」
女神は本を本棚へ収める。
「だって余りに退屈なんですもの。それだったら・・・」
女神が指を振ると先程とは違う本達が舞う。
「これらの運命の方が面白いと思いますが、例えばこの”コハクが不慮の事故で死ぬ”なんて言うのなんか面白そうですが・・・もし次にまたこの始まりの日に尋ねて来てくれるならまた違うお話をお見せしましょう」
「では更なる再開を願って・・・」
あなたは女神の手を振る姿を最後に意識が遠のいて言った。
今回は”神からの介入が無かった”世界線のお話でした。
厄災討伐の功績が無いので慎太郎は貴族にならず、隼は科学を広める為教授になりました。
また来年をお楽しみに。




