If"もしコハクが死んだなら"
皆さんは年末を如何お過ごしでしょうか。
蛇足シリーズ更新です。
「・・・まさか本当に再開してしまうなんて」
女神の緋色の瞳が真っ直ぐあなたを射抜く。
「あれからお互い少なくない時間が過ぎたと言うのにまたこうして会いに来たのは律儀なのか、はたまた酔狂なのか」
女神は本棚から本を取り出す。
「とは言え、こうしてまた来た事は事実。ならば私は語りましょう」
「此度語られますは悲恋の行く末。本来祝福される筈だった二人を引き裂く、甘美な失意の物語。是非最後までごゆるりとお聞きいただきますよう」
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「コハク、くれぐれも気をつけてな」
「えぇ、まぁ単に祖父母の様子を見に行くだけですから直ぐに会えますよ」
そう言って馬車へ乗り込んで行くコハク。
厄災が現れ世間もヒリつく中で、今の内に会っておきたいと祖父母から手紙が届いたらしい。
二週間の旅、"魔道具仕掛けの改変"がやってくるまでにはこのアレクガランへ戻ってくる事が出来るだろう。
俺は笑顔で親子を送りだした。
この後の後悔を知らずに。
「速報!速報だよぉっ!」
ふと外へ出ると新聞社が号外を配っていた。
何となく受け取り俺は愕然とする。
後悔すらしたかもしれない。
気づけば周りは泣き崩れる者や、自らの運命を悲観する者で溢れていた。
ここから東に向かった街、そしてコハクの祖父母の住む街が陥落したのだ。
窓から外を眺めると様々な人達があくせくと襲来に向けて準備を進めていた。
当たり前だ。訪れると予定されていたよりも遥かに早い襲来、急ピッチでやらなければあとは殺されるのを待つだけになってしまう。
かく言う俺は部屋から抜け出せずにいた。
「・・・」
隼もコハクもいなくなってしまった。
一人おいていかれてしまった。
この手に魔力の剣を生み出す。
俺の心も壊れないこの剣の様であれば良かった。
寝台に寝そべりゆっくりと目を閉じる。
何にもやる気を見いだせない。
窓から漏れる日光ですら鬱陶しい。
いっそ死んでしまおうか。
俺は眠りに落ちた。
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私は彼の住むという部屋の前に立った。
(流石に気不味い?)
まぁ。それなりに。
(なるほど。まぁ、確かに言われてやったとは言え自分が原因の事で沈んだ人を励ませっていうのは流石にね)
扉に鍵はかかってないようだった。
部屋に入ると横になった彼は眼球だけをこちらへ向け呟く。
「・・・なんで来た。どっかに行ってくれ」
「・・・」
私は呆気に取られてしまった。
つい前回のように斬りかかられると思っていたからだ。
(正直ここまで弱ってるとはね)
うん。
けど、励まさなければならないのに言葉が出てこなかった。
今まで誰かに励まされたとこなぞあったろうか。
人の励まし方なんて一つしか知らない。
私は隙をついて彼の唇を奪った。
当然彼は私を引き離そうとするが、彼に暗示をかけてされるがままにする。
私に身を委ねてと。
茶色みがかった黒髪に、少しのっぺりとした顔、黒い瞳。
同郷の証だ。
腹上死してからこの手の行為はしたくないと切に思っていたが、結局これだよりになってしまう自分にも嫌気がさす。
彼の口に舌を入れる。
最初は抵抗した彼も諦めたのか少し反応してくれるようになった。
彼の上半身を指でなぞる。
程よく筋肉ののった良い体だ。
服を脱がし、その肌を舐める。
お互いの体は正直だった。
高かった陽が沈み、また昇る。
彼は定期的に私を求めるようになった。
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「行ってらっしゃい」
未だ噛み跡の残るエスの見送りで外に出る。
今日は魔道具仕掛けの改変が来るとされる日だ。
全てそいつが悪いのだ。
隼が死んだのも。コハクが死んだのも。
一切の容赦はしない。
殺した後も切り分けて晒してやる。
悪辣と言われようと非道と罵られようと。
この世にい出た事を後悔させてやる。
そうして俺と厄災は対峙し、厄災は水晶で身を覆った。
今日も俺は恨みを込めて水晶を殴る。
子供にも恵まれて、長女は10歳になった。
それなりに幸せも感じるが、この恨みだけは決して晴れない。
殺しても死体をどれだけ殴っても晴れない恨みの吐き出す先を俺は知らない。
だから明日も明後日も殴り続ける。
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「・・・どうでしたか?中々愉快な運命だったでしょう?」
女神は本を棚へ戻した。
「おや、浮かばれないご様子」
私とは感性が中々合わないようで、と女神はため息をつく。
「次のこの日にあなたが来るとは限りませんが・・・そうですね。次はもう少し退屈な話を致しましょう。それでは、また」
その言葉を最後にあなたの意識は離れていく。
ここで皆さんにこのシリーズの続編を更新出来てない事を謝罪させていただきたいです。
作者は今別作品の執筆に熱を上げており、個人的にはそちらを優先したい気持ちがあります。
その執筆が一段落してから続編の更新について考えさせていただきたいです。




