18 エピローグ・プラス
本編の最終話です。
よろしくお願いします。
愛妻家、家族思いの人物として名を残した、希代の魔術師シャレルド。
――しかし。歴史に名を残す偉大な夫婦の、屋敷での実態は、普通の(?)幸福な夫婦だった。
「シャレルド様!
私の実験用の薬草を、勝手に保冷庫に入れたでしょう!
薬草に癒しの魔法をかけて効き目の変化を試したかったのに。
それも、……わざと見た目の似てる薬草と混ぜて!
おかげで昨日のスープに、間違えて使っちゃったじゃない!だから、あんなに……いっぱい……」
「スープ、旨かったよ。
あの薬草なら、また俺が森へ採集してくるからいいだろう?」
しれっと答えるシャレルド。
「だめ!あの薬草は……もういりません!
本当は知っていてわざとやったんでしょう、バレてます!
あれが、媚薬の効果になるって知ってたんでしょう!?」
「だってルシアが最近、魔術の勉強ばかりで俺にかまってくれないから、ちょっと仕込んだだけだ」
ぷいっとすねるシャレルド。
「………!もう!
あんな風に、身体がおかしくなっちゃうのは、ダメなんです!」
「俺は久しぶりに満足した。
……なぁルシア、今夜も、しよ?」
シャレルドがルシアの手を引いてその身を胸におさめた。
ついでにルシアの額にキスを落とした。
ルシアがシャレルドの胸から逃れようとジタバタする。
「だ、だめ。だって、……。
……もしかしたら、赤ちゃんが、来てくれたかもしれないって思ったから、……控えてたのに」
「え……?」
シャレルドの動きが完全に止まった。
シャレルドがルシアのお腹にそっと手を触れた。
「ま、待って、調べる。
……あ、あ、うん。……いる。
かすかだけど、ルシアの魔力じゃない魔力がここにある。赤ちゃんだ。
ルシアと、俺の、赤ちゃんがいる!
……ありがとう! ありがとう、ルシア……っ。
??でも、なんで今まで言ってくれなかったんだよ?
それ言ってくれてたら、控えたのに。⋯⋯激しいのは」
「だって……私、本当に、⋯⋯私に赤ちゃんがいるの?」
ルシアは不安げに、しかし愛おしそうに、自身のお腹にそっと手を当てた。
その目からは、すでに涙が溢れそうになっている。
「昔……仕事にならなくなるからって、この身体は、もう赤ちゃんが出来ないようにした、そういう術を施したって……そう言われたの。一生、赤ちゃんは出来ないって。
だから、何かの間違いなんじゃないかって思ったの。
私には、赤ちゃんは来てくれないはずだからって……。
でも、夢を見たくて。赤ちゃんがいるのかも、って。夢見るのが嬉しくて。
いない、って、わかるのが怖くて。
だから、言えなかったの……」
「ルシア……!」
シャレルドはルシアを、壊れ物を扱うように、けれど全力で抱きしめた。
「それは、あの焼き印の魔術の作用だ。あの魔術は、全部俺が、あの時綺麗に消し去ったから。
くそっ、俺は、いつも言葉が足りない。
……もっと早く、ルシアにちゃんと伝えていれば良かった。
不安にさせて、悲しませて本当にごめん。
それから、ありがとう。
僕らの赤ちゃんを宿してくれて」
♢♢♢
それから、半年ほど経った頃。屋敷の寝室で、ルシアにそっくりな、若葉色の瞳をした元気な女の子が産声を上げた。
愛する妻と、愛しい我が子。
守るものが増え、シャレルドは屋敷の防御結界をさらに強固に、異常なほどに編み直した。
庭に花々の咲く、ある古い屋敷。
若葉色の瞳をした赤ん坊が、両親の幸せな会話を子守唄にして、すやすやと眠っていた。
王都に近い街に、見た目は古びた屋敷がある。
そこは、知る人ぞ知る、王城の結界よりも、国境のどんな強固な魔術結界よりも、強固で複雑に編まれた結界で守られた屋敷。
かつて孤独だった魔術師と、傷ついた元娼婦の、優しく温かい人生は、これから先も末永く、幸せに続いていく。
子供達の幸せそうな声と共に。
つたない物語をお読み頂きありがとうございます。そして、長くお付きあい頂き、ありがとうございます。
これで、本編完結とさせて頂きます。
イイネ、ブックマークやお星様を頂けたら、ものすごく嬉しいです。
番外編も力をいれて、書きました。
番外編、作者のお気に入りです!
読んで頂けたら、とても嬉しいです。
この作品は、主人公達に過酷な過去を背負わせてからの恋物語です。
書きたいのに、表現に困り、悩み、時間をかけて書き上げました。
心の動きが難しかった。
5000ポイント以上頂けた『結婚式に参列に行ったら自分が結婚しました』はテンポよく楽しく書けたのですが。(こちらも読んで頂けたら嬉しいです)
読んで頂き、少しでも心に残る作品となれば、作者の喜びであります。ありがとうございました。




