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15話 おかえり

よろしくお願いします。


書き足していたら、長くなりました。

あと数話、用意してます。

夜道での告白。


その夜、シャレルドはルシアの狭いアパートに泊まった。

シャレルドはいつかのように、ルシアを抱き締めて幸せそうに、心地よさげに眠った。

ルシアの硬い狭いベッドが極上の場所であるかのように。



ルシアは街の料理店の仕事を辞め、再び街はずれに建つシャレルドの屋敷へと戻ってきた。


初めて訪れた時、お化け屋敷のような外観に驚き、生きるために強引に住み込み、シャレルドと暮らすうちに少しずつ惹かれ合い――そして、自分の過去を卑下して逃げ出した場所。


けれど今、古びた門の向こうには、庭いっぱいに咲き誇る花たちが優しく風に揺れていた。


ルシアの職場までついてきて、ルシアを出待ちをし、共に並んで帰宅したシャレルド。


敷地に入ると、シャレルドはどこか照れくさそうに口を開いた。


「……おかえり、ルシア」


「ただいま、シャレルド様。

……ふふっ、一緒に帰ってきたのに、『おかえり』って言うなんて不思議ですね」


「うん。……そう、だね」


銀髪を風に揺らし、どこかホッとしたような、けれどひどく愛おしそうな目でシャレルドはルシアを見つめた。




◇◇


その夜、二人は寝室で、これまでで最も深く、お互いの体温を確かめ合うように身体を重ねた。


シャレルドはルシアの娼婦の焼き印があった、今は傷のない綺麗な手首を、愛おしそうに何度も唇でなぞった。


「まっさらなルシア。……俺だけの、ルシアだ」


その言葉を聞いた瞬間、ルシアの瞳から、涙が溢れ出た。


「な、なんで泣くんだ!?」


涙を溢すルシアを見て、シャレルドはまたしてもオロオロと慌てふためく。


「嬉しくて、涙が出たんです。シャレルド様が、あまりにも愛おしくて……。

今、自分がこんなに幸せなのが、夢みたいで」


「……俺の方こそ、幸せだ。ルシアがここにいてくれて、本当に幸せだ」


シャレルドは優しくルシアの頬を撫で、何度も唇を重ねた。


「愛している、ルシア。

君が受けた数年間の日々を、俺の魔術の力でも『無かったこと』にはできない。

ルシアの受けた苦しみも、零した涙も、すべて君の歴史だ。

……だけど、俺はその傷も含めて、それを乗り越えようとするルシアの強さのすべてを、心から愛している」


シャレルドはルシアの若葉色の目を真っ直ぐに見つめ、大きな手で彼女の頬を包み込んだ。


「もし、ルシアが親友に裏切られず、人さらいに遭わなければ……ルシアは今頃、あの村で、村長の妻として、俺の存在すら知らずにいただろう。

……だけど、ルシアが生き抜いて、俺の元へ来てくれたから、俺はルシアに会えた。

俺は今、ルシアにたくさんの幸福をもらっているんだ。

辛かったけど、ルシアの過去のすべてが、俺たちの今に繋がっている」


シャレルドの、どこまでも優しい言葉が、ルシアの胸の奥に深く深く染み渡っていく。


数年間、ずっと自分を「汚れた存在」だと呪ってきた。

あの日がなければ、と何度も過去を恨んだ。


けれど、あの苦しみの日々を必死に生きてきたから、今、世界で一番自分を愛してくれる人と出会えた。

その愛する人が今、こうして優しく自分を抱きしめてくれている。


(ああ……私、あの辛い日々も含めて、今の私でいいんだ。今の私を、シャレルド様はこんなにも愛してくれている。あの日々を生きたからこそ、私はシャレルド様に出会えたんだ……)


ルシアの目から、また温かい涙が溢れ落ちた。

それは過去を悲しむ涙ではなく、自分の人生のすべてを肯定できた、救われた魂の涙だった。シャレルドはルシアの涙に、そっと唇を寄せた。


「ルシアの涙も、笑顔も、この身体も……全部、俺のものだ」



◇◇◇


翌日、二人は屋敷の、白い花々が満開に咲き誇る庭で、誰を呼ぶでもなく「二人きりの結婚の誓い」を交わした。


「これを君に。

俺の、かなりの魔力と誓いを込めてある。

ルシアを守る指輪だ。一度嵌めたら、抜けなくなる」


シャレルドがルシアの細い薬指に、そっと指輪を嵌めた。


それは、一見するとシンプルな細い白金の指輪だった。

しかしその指輪は、王宮魔術師としての彼の膨大な魔力と、ルシアへの「愛と執着」が、強固に編み込まれた、世界に一つだけの最強の守護指輪だった。


「悪意を持つ人間は、ルシアの半径5メートル内には絶対に近づけない。

万が一、物理的な攻撃や魔法攻撃を受けたとしても、そのすべてが10倍の威力になってソイツに跳ね返る仕様にしてある。

もちろん、ルシアの居場所は常に俺に分かるし、周囲の映像も俺の魔方陣からいつでも見られる。

何かあればこれを座標にして、俺が即座に空間転移して駆けつける」


一通り説明し終えると、シャレルドは少し不安そうに視線を彷徨わせた。


「……ちょっと、重い、かな?」


ルシアの反応を心配するシャレルドに、ルシアははにかんだ笑顔を返した。


「いいえ、とっても嬉しいです。

私はこれからずっと、シャレルド様に守られるんですね」


ルシアがその重すぎる愛を嬉しそうに受け入れると、シャレルドの顔がぱっと明るくなる。

二人が静かに、愛おしさを込めて口づけを交わしたその時――。


パチパチパチ、と。庭の入り口から、どこか不躾で、けれど楽しげな拍手の音が聞こえてきた。



お読み頂きありがとうございます。


捕捉。

突然、職場を辞めると言ったルシアに。

オーナーの息子は引き留めたんだけど。

店の外でルシアを待つシャレルドの姿を見て、諦めました。

失恋して、とても落ち込んでいたそうです。




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