表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友の恋路を応援したいギャルのアシストが下手過ぎる  作者: 焼肉一番


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

アンブレラ

「あっ……あっ……ななな撫山くん今日、お昼の時、ごごご……ふぉふぉふぉフォンタの……」


 なんだろう全然分かんない。ラコこんなに可愛くてギャル(俺は認めてないけど)の友達も居るのになんでこんなにコミュ障みたいな反応するの? 俺の事好き過ぎだよ。


「あーっ! ききききんきらきんは、初めて聞いたよ!!」


 耳まで真っ赤。可愛い。面白いし可愛いしやっぱり好き。これからはあいつの視線を気にする事なくがんがん行って良いんだ。

 どうやら自販機の前で挙動不審だった自分を言い訳したかったけどうまく行かなくてあわあわしているうちに直前に聞かれた俺の質問を思い出し色々ほっぽりだして先にそちらを答えたのだろう。

 うん! いける! なんとなくラコの思考が分かる! これなら俺の方が頑張ればコミュニケーションを取っていける。


「そうなんだ、あいつって……」


「ばいばいきんきんらきんっっ……!!」


「あっ……!」


 取って行けると思ったのに目の前にラコが居なければさすがに無理だ。

 追い掛けるのも違うと思い、俺はもう一度席について中の教科書やノートをかばんにしまった。いつもは置きっぱなしにしてるけどな。そうしてゆっくりカバンを持ってゆっくり教室を出る。昇降口で出くわしたら可哀想だと思ったからだ。山之内に見つかったら「追え!」って目で睨んで来そうだけど。


「傘! 持ってる?!」


 そんな事を考えていたら、騒々しい山之内の声が聞こえてまた後方から肩を掴まれた。


「は……? ウンコ行ったんじゃねぇの?」


 ま、そんなのは俺とラコを一緒に帰らせる為の嘘だったんだろうってのは分かるけど。


「そんな事より傘持ってんのって! 急に雨降りだしてラコが昇降口で困ってんのよ!」


「え、持ってないよ……」


「んっ!!」


 全部言い終わる前に、山之内は俺に折り畳み傘を押し付けた。


「んーっ!!」


 まるでどこぞの田舎の純朴少年の様で、俺は思わずそれを受け取った。すると山之内は空いた手で親指を立て、それで昇降口の方向を指した。


「んっ!!」


 だいぶ言葉が足りないがラコよりは分かりやすい。


「だけどお前は……」


「んっ!」


 今度はその親指を真上へ向けて大丈夫ジェスチャーだ。何が大丈夫なんだか。普通折り畳み傘二本も持ってないだろう。


「良い。お前が一緒に帰ってやれって」


「だからウンコ行きたいんだってば」


 本当にウンコしたいのかよ。


「それは早く行けや」


「あんたがまたグズグズしないか様子見に来たのよ! 通り雨っぽい雰囲気だしあたしは大丈夫だから早く行ってやって!」


「だけど……」


「とにかく、折り畳み傘なんて持ってる男子、まぁまぁポイント高いと思うのよね。持ってきなさいって言われてもうるせーババァとか言って突っぱねるのが思春期ってやつでしょ?」


 やべ。確かに今朝それやったわ。


「でも正直もうポイント稼がなくても大丈夫な空気感じてますけど……」


「グズグズしない! ラコはモテるんだから他の誰かが傘に入れてっちゃうよ!」


 山之内の言いなりになるのはやっぱり癪だが、確かに桜子が他の誰かと相合傘ってのはもっとイヤだな。ここは有難く山之内の傘を拝借するとしよう。

 だけどまだ問題はあるぞ。うまくやらないとラコは雨の中を逃げて行ってしまうだろう。なるべく刺激しない様に上手に誘わなければ。

 そっと昇降口の様子を見ると、ラコが諦めた様子でじっと空を眺めていた。まぁすぐに止みそうな雲なので止むまで待つかと言った表情に見える。 さてどうする。

 後方から急に話し掛けたら慌てさせそのまま逃げられるかも知れない。良し、前から登場しよう。それにはまずちょっと離れた場所から一旦昇降口を出て、大きくカーブして戻る。


「じゃあ借りるぜ山之内」


 俺はラコに気付かれないよう、昇降口の一番端から傘を広げて外へ出た。そこそこ雨は強い。

 そして大きく旋回し、ラコの正面に歩いて行く。ラコはずっと空を眺めているのでまだ俺には気付いていない。危ないな、気付いた時に距離が近過ぎるとパニックを起こす可能性が有る。


「ぴゅぴゅぴゅー♪」


 さりげない口笛。これだ。幸い俺は口笛が上手いのだ。

 前方から傘を差し、プロ並みの口笛を披露しながら現れた俺に気付いたラコは……。


「う……うわぁっ……!」


 うわーってやめて欲しいな。

 でも少しだけ落ち着いてる気がする。それに万が一逃げ出したとしても逃げ先は校舎の中。少なくとも雨に濡れる事はない。


「大丈夫大丈夫」


 まるで怯える猫に話し掛ける様に俺はそう言って近付いた。


「え……あ……う……」


 これで今日は三回目の絡みだ。さすがに少し慣れて来てる。

 でもこの調子じゃいきなり相合傘に誘うのはハードルが高いよなぁ。もう良いや。山之内にどう思われようと俺は俺のペースで、俺の感覚でやらせてもらおう。

 俺はラコの足元に傘を置き、後ずさる様にして校舎を出た。途端に雨に濡れたが、どこぞの田舎の純朴少年の様にそのまま立ち去る。


「あ……なっ、撫山くん?!」


 ラコが傘を手に取ったのが気配で分かった。これで良い。俺は雨を避ける様に、いや、ラコが追い付けない様にそのまま無言で走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ