たぶん味方
「そんな顔だったんだ」
「はぁ?」
思わず口に出てしまった。せっかく笑っていた山之内の顔がまた険しくなってしまう。
「顔じゃなかったら人の事どこで認知すんのよ?」
「お前に関しては足」
「は……はぁぁ?!」
そんな返しが来ると思っていなかったのでまた思わず言わなくて良い事を言ってしまった。
「足フェチかよキモ!!」
うっ……。そうか俺って足フェチだったのか。いやだからって足で決めてるワケじゃないから良いだろう勝手だろうチクショウ。
「うるさいな! と言うかラコの彼氏になる奴が俺って事は、つまりやっぱりラコは俺の事が好きって事で良いんだな?!」
もう分かってる事を言って話しを逸らす。
「そんな大事な事、あたしの口から言えるわけないし! それに……ぶっちゃけラコは、まだあたしにも正直に話してくんないし」
「何ッ?! 確信がある話しじゃないのか?」
「いやでも決まりでしょ? あの感じ!」
「正直俺もそう思ってるよ? だけど……、お前らホントに仲良いのかよ。女子って真っ先にそんな話しするんじゃないのか」
「うっ……」
何か痛いところを突いてしまったらしい。山之内は分かりやすく言葉を詰まらせた。
「仲良いよ……。仲良いけど……お互い、大事過ぎてちょっと、全部はぶつけられてないところも、ある、かな……」
お互い、と言うのが少し意外だった。コイツの性格的に何だかガツガツぶつかって行きそうだから。だってそうじゃなきゃいきなり仲良くもない俺の事授業サボらせたりする?
「そうか、、じゃ……仲良くなれると良いな」
やけにしょんぼりしてしまったので俺はそう声を掛けた。
「うるさいわね、余計なお世話よ……」
仲良くなる為に、山之内はこんな暴走をしているのだろうか。だとしたらちょっとだけ見方も変わるな。
結局五限目が終わるまで、特に会話が弾むでもなく二人で猫を撫でた。山之内が持って来ていた猫の餌をもらって、俺の手からも直接あげた。ノリコ、と呼んでいたがネーミングセンスもギャルっぽくない。たぶん黒いから海苔でも連想したんだろう。
休み時間のうちに教室に戻ると、大輔が心配そうに駆け付けて来たが詳しい事情は言わなかった。別に隠したかったってワケでもないんだけど何て言って良いのか自分でも良く分からなかったからだ。何だったんだろう? って、今でも思ってる。
「なんか自分はヤンキーじゃなくてギャルだって必死になって言ってたよ」
「は? そんだけ?」
「主に」
あとは……ラコが俺の事を好きかどうかは分からないし大事な事なのでこれは言わない。
「まぁ、心配いらないよ。たぶん味方」
自信を持って味方だとは言えないが、その日の放課後、山之内は早速味方らしい動きを見せた。いや、もしかしたらこんな動きはずっとしていたのかも知れないが俺の中で少し認識が変ったせいでそれに気付けた様だ。
「痛い! お腹が痛い! これではすぐに帰れない! 保健室行ってくる!」
授業が終わればいつもすぐにラコの机に駆け寄る山之内が席に座ったまま棒読みの台詞を読み上げている。
「大丈夫? 一緒に行くよ!」
すぐにラコが山之内に駆け寄って声を掛けるが、山之内はまだ座ったままの俺の椅子を元気に蹴り続ける。
「一人で行くから!」
お腹痛い奴の脚力じゃない。そう思って後ろを振り返るとギロリと睨まれた。どうやらアイコンタクトだ。
でもどう言う事? 帰り一緒に帰ろうって誘うのか? 急過ぎるだろうが。
「グギギギ……! 平気! 一人で行く! でもラコ帰り一人で可哀想だなぁ! 可哀想だなぁ!」
眼光で殺されそうだ。分かったよ……。
「平気だって言うから……ラコ、俺と一緒に帰らない?」
「……そんな……! リンネがこんなに苦しんでるのに放っておけないよ!」
おいおい俺酷い奴になっちゃったじゃないかよ!? コイツずっとだけどアシスト下手過ぎだろ?!
「大丈夫! いやマジで大丈夫だから!」
「でも……」
「ウンコ! ただのウンコだから! じゃーウンコしてくるねー!!」
「ま……待って、だったら私もウンコ……!」
「ラコはウンコしないから!! じゃ! またねー! ばいばいきんきらき~ん☆」
「え……?」
意味不明な言葉で締められて戸惑うラコをよそにダッと駆け出す山之内。その瞬間にこちらを振り返り、もの凄い眼光で俺を貫く。
このまま決行しろって事かよ……。
「今の、いつも言ってるの?」
「うわぁぁっ……!」
山之内がただのトイレだと分かって落ち着いた様子を見せたラコだったが、逆に改めて俺にビビる。
それにしてもうわーってやめて欲しいな。




