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親友の恋路を応援したいギャルのアシストが下手過ぎる  作者: 焼肉一番


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8/8

リンネのシール

 さて翌日である。

 教室に行く前に山之内に捕まった。ちゃんと計画通りに事は運んだのかと。言われた通りにやりましたと言う答え以外は受け付けない様な目をしていたが、俺は正直に事の顛末を話してやった。


「はぁ?! 傘置いて自分は濡れて帰ったぁ?!」


 こいつのシナリオ通りには運ばなかったわけで……俺はまたグズだと文句を言われるだろう。だが現場の雰囲気を感じられるのは当事者だけなのでその辺を分かって欲しいものだ。


「その流れなら風邪ひいて寝込んで学校休み! ラコが共働きで夜遅くまで帰って来ないあんたの両親の代わりに看病するって展開でしょっ! 何元気に学校来てんのよっ! ラコに見つかる前に早く帰って!」


 文句は言われたが想像以上に勝手だった。


「ちょっと雨に濡れたくらいで風邪なんかひくかよ。あと俺の母親は専業主婦だっつーの。だいたいそんな急展開にラコが対応出来るわけないだろ、もうちょっとゆっくりやらせてくれよ」


「チッ、仕方ないわね。と、言う事は……きっとラコは傘のお礼を言いに来るでしょうから、言われたら笑顔で対応すんのよ? そうだわ、その際は邪魔が入らない様に人払いをしておくから安心して」


 そりゃお礼くらい言うだろうラコは。お礼を言われたら俺だって笑顔の一つくらい……あんまり表情変わらないタイプだからそれは分からないけど。あと人払いってなんだよ。ラコはそのまま俺に告白でもするのか。

 こうしちゃいられないわと、山之内はすぐに教室に走って行った。もう何目線なのか分からない応援を受け、俺もゆっくり教室を目指す。

 後方から教室へ入ると、いつもの席にすでにラコは座っていた。だが不思議な事に、他の生徒は……誰も居なかった……。

 おかしい。まだホームルームまで時間があるにしてもいつも半数以上の生徒が登校済みの時間だ。ナニコレ山之内が言ってた人払い? もしお礼を言うなら顔を見たタイミングになるだろうからやっぱりそれを予想して山之内が用意した二人きりの空間? どうやって払ってんだよ、すぐにこれだけの人を言う通りに動かせるって結構なカリスマ?

 俺は恐怖さえ感じてキョロキョロと教室を眺める。


「おはよっ……撫山くんっっ!」


 この状況にラコは何も違和感がないのか、感じる余裕もないのか、ぎこちなく俺の席を振り返って比較的大きな声で挨拶してくれた。


「おはよう」


「昨日、これ、ありがとっ……!」


 折り畳み傘は綺麗にたたまれ、柄のところにくくり付けておいた収納カバーに戻されている。比較的スムーズに話しているが昨日の晩に練習でもしたのかな。劇的に良くなってる。俺は自然と笑顔になった。


「うん、良いよ」


 だが、その笑顔はすぐに引き攣る事になる。


「でも……さ、どうして撫山くんが、リンネの傘持ってるの?」


「リンネ?」


「山之内リンネ……撫山くんの、後ろの席の……」


「……!」


 ああ、そうか。物凄く当たり前の事を聞かれているぞこれは。いつも仲良く一緒に帰ってるんだ、山之内の折り畳み傘に入った事なんかあってもおかしくない。どうする?

 俺のだと嘘を吐き通すか。どぎついピンクで俺の趣味と思われたくないがそれが一番安全な気がするな。そうだ、母親のを間違えて持って来てしまった事にでもすれば……。


「撫山くん、ピンクとか選ぶんだぁと思って、何その一面凄い好きーってなったんだけど、良く見たらここのところに……」


 あれ? 今告白されてない?


「リンネの付けたシールが貼ってあって……」


 終わった。ごまかせない。

 何だよアイツ!! そんな傘渡してくんな! だったら正直に山之内に頼まれたって言って誘った方が良かったじゃねぇか! 折り畳み傘を持ってたらポイント高いとか稼がなくて良いポイント稼ごうとして逆にピンチじゃねぇかよ!

 もう正直に言うか? だけど、じゃぁ何で自分の傘の様に振舞う必要があったんだってなるよな。山之内が気を利かせて自分の傘を差し出したと聞いたら、普通は自分の気持ちがもう周囲にバレバレで(その通りなんだが)余計なお世話を焼かれたと気付くだろう。

 山之内が困るのはどうでも良いが、それでラコが嫌な気持ちになるのは可哀想だ……。


「拾った」


 これしかない。


「え、あ……、そうなんだ?」


「うん」


「拾った傘……使ってたんだ……」


「うん」


 最悪。めちゃくちゃ印象悪い。これ遺失物横領罪。


「持ち主知ってるなら良かったぁ! これ山之内のだったのかぁー! あ! 仲良いよね! 返しておいてくれる?」


 ええい、笑顔で押し切る!!


「あっ! うん! そっか、そうだよね、持ち主が分からなければ返せないもんね!」


「そう! 困ってたんだ! 俺も!」


「うんっ! うんうんっ! 私リンネと仲良いよ! 返しておくね!」


 俺はラコの屈託のない笑顔に救われた。良かった……。どうにかなったみたいだ。ラコ的にも俺が遺失物横領罪野郎だと思いたくなかったのだろう。光のある方へあっさり誘導出来た感じだ。


「うふふっ!」


「はは、いっぱい喋ったね」


 昨日自販機のところでやったやりとりを、ラコはいっぱい喋ったと思っているそうなので、なんだか急に微笑ましくなってそう言ってしまった。まるで子供に言うみたいな言い方だったなとすぐに反省したのだが……。


「うっ、うんっ……!」


 ラコはそれでも喜んで頬を染めた。

 ラコがこんな子で助かった。だから好き。あとこれからピンクの持ち物増やそうかな。趣味じゃないけど拘りもないから。

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