モヤモヤ
「な……何してんだ、ラコ……」
「あわっ……!」
後ろから話し掛けるとラコは肩をビクリと震わせる。
「う……ううん? 何か……落ちてないかなーって……あはは」
様子がおかしい。まぁ割といつもだけど。
「山之内、もう戻ってるぞ。大輔はまだ並んでたけど」
「うん……」
あれ? 知ってたっぽいリアクションだ。
あっ……、もしかして、俺が不用意に山之内の白ビキニ褒めたの聞いてたとか?
俺はサッと血の気が引いて行くのを感じた。ででででも別にただ褒めただけだしそれ以上の意味はないし聞かれても何も困る事はないぞ。
「行こう、こんな暑いとこ居たら熱中症になっちゃうよ」
もし違ったらわざわざ墓穴を掘る事になるので確かめはしない。今度迂闊な事は言わず態度で示して行こう。俺はラコ一筋だと!
その後、ようやく戻って来た大輔と軽食をとり、夏の日差しを堪能してからまた波に揺られたりもしたが、早起きしてはしゃぎまくって腹が膨れたら、さすがにみんな少し大人しくなった。
「帰りの電車混む前に撤収しようか~」
言い出したのは山之内だ。一番楽しみにしていたくせに真っ先に帰りたがるなんて意外だったが、コイツの目的はもう果たしたのかも知れない。
「もうか?!」
無理やり連れて来られた感じの大輔が誰よりも名残惜しそうだ。時刻はまだ三時を少し過ぎたくらい。
「電車座れないとか怠過ぎるし、もう十分楽しかったもんね!」
山之内が無邪気に笑うが、俺の方は見なかった。
結局、パラソルの撤収や着替えなどをのんびりやっていたら電車に乗れたのは四時だった。最寄り駅への到着は六時。高校生の夏休みにしちゃちょっと早めの解散だが、朝も早かったしこんなものだろう。
「じゃー、あんたはラコを玄関まで送って。あたしは大輔にでも送ってもらうから」
相変わらず仕切りたがりの山之内。俺に話し掛けてるのに俺を見てない。
「まだそんな暗くなってないだろ」
勝手に決められた大輔が一応の口答えをする。どうせ押し切られるのに。
「良いじゃん送ってよ!」
「わ……分かったよ」
「一緒に帰ろうよリンネ。ほとんど同じ方向なんだからさ」
「……ま、それもそうか」
何だろうモヤモヤする。どうしたんだ急に? 山之内にどう思われようとどうって事ない筈なのに。もう一度、ちゃんと話した方が良い様な気がする。
結局、反対方向の大輔は途中で別れ、まずはラコを家に送り届けると、山之内と二人になる時間が出来た。
「なぁ、今日ちょっと、電話して良いか?」
でも何を話して良いのか分からない。だからそう言ってみたのだが……。
「ダメっしょ」
それだけ言って、山之内はぷいと居なくなってしまった。
そうか、ダメか……。俺とラコが付き合ってるから? そう言うもんか? そんなの何か、おかしくないか……? 急過ぎるし、やるにしても下手くそかよ。
だからって食い下がるのもおかしな話しだ。特に言わなきゃいけない事が決まってるワケでもないのに。ただ、俺がモヤモヤするってだけで。
俺は帰ってすぐラコにメッセを送った。ラコが好きだ。ラコと付き合えた。これ以上求めるのは贅沢か。そもそも誰に何を求めてるんだ。やめよう。
でもとりあえず、次の約束はしても良いだろう。海だけとか言ってたが別に色んな所に今日のメンバーで行ったって良い筈だ。電話はダメだと言われたけど、俺は山之内にメッセを送った。
しかし、帰って来たメッセはまたも俺をモヤモヤさせた。
『夏休みはラコと二人でいっぱい楽しい思い出を作って。あたしにはもう連絡して来ないで』
なんでこうなるんだ。学校が始まったらどうせラコにべったりなくせに。
そう、ラコにべったり……それを考えればせいぜい邪魔者が居ない間にラコと思い出を作るのは正解かも知れないな。フン。
もう良い。それで納得する。納得してないけど納得する。
俺はあの時ゲットした、良く分からないキャラクターの、良く分からない表情の、使いどころ謎スタンプを山之内に送ってやった。せいぜいどう言う意味なのかちょっと考えてモヤモヤしやがれ。俺にも分からんがな!




