「好きです。付き合って下さい」
ふいに二人きりになる。ラコの心拍数が上がっているのが手に取るように分かる。どうしよう、告白なら俺がもうしたけど、なんかどさくさに紛れた感じだし、そうだ、ここは俺からもう一度言うのが良いだろう! ラコにだけ緊張させてはいけない。
「改めて言っても良い?」
「えっ……」
濡れた髪そのままに、こちらを見るラコ。いつもキチンと規定通り制服を着ているラコが、可愛い水着で髪を濡らして隣りに座ってる。ちゃんと言わなきゃ、男が廃る。
大丈夫だ。この前の時と違ってラコの方も準備が出来ている。目を見て、想いを伝える、俺は出来る男だ。
「好きです。付き合って下さい」
分かっていたと思う。ラコも、何を言われるのか。それでもそう言った瞬間、ラコの瞳に熱が籠った。
もしかしたら逃げ出しちゃうかも、と、失礼な事を考えたがラコも目を離さずに言ってくれた。
「はい」
肯定の二文字を。
やった。長かった様な、短かった様な、俺とラコは晴れて、恋人同士となった。また新しいラコとの関係が始まったんだ。
「……」
「……」
ヤバい。ここから先は用意してなかった。
お互いに猛烈に意識してしまって……、何も言葉が出て来ない! 早く二人に帰って来て欲しいと思うのはヘタレ過ぎるだろう……!
「本当に、私で、良いんだよね……?」
「え」
沈黙を破ってくれたのは意外にもラコで、言葉の意味が良く分からなかったけど、俺は頷いた。俺から告白してるのに、ラコは何か不安なんだろうか。
「良かった……。これから宜しくお願いします」
「ここここちらこそ」
ああ、マズい。アイツら帰ってきたら一発で何かあったと分かるぞ。だって絶対俺達の周りの空気ピンクだろ! 早く帰って来て欲しいけど来て欲しくない!
「遅いから、ちょっと見て来る!!」
俺以上にラコの方が我慢出来なかった様で、そう言って立ち上がると止める間もなく走り出してしまった。今まで話し掛けただけで逃げていた事を考えれば、この状況で追い掛けるのはラコのキャパを溢れさせてしまうだろう。俺キャパを。俺もラコキャパが危なかったので追わなかった。少しずつ増やして行こう。
「あれ? 何で一人なの?」
そう言ってビーチマットを踏んだのは白ビキニから出た長い脚。手には焼きそばのパックが四つ。
どうやらラコとはすれ違ってしまった様だな。
「そっちこそ何で一人なんだ?」
「フランクフルトの列が長かったから置いて来ちゃった」
大輔が一人で並んでると言う事か。コイツ本当にラコ以外の人間に対して雑だな。
「ラコはお前らの様子を見に行くって走って……」
「ちょっと……! ラコ一人にしてナンパされたらどうすんのよっ?! 探して来る」
「バカ、俺が行く」
焼そばを持ったまま走り出しそうだった山之内を止めて立ち上がる。だって無事合流出来たとして山之内とラコの二人組の方が余計危ない気がする。
「あと……あの……」
まぁ、さすがに一番に報告するか。
「ふぅ~ん?」
まだ何も言っていないが、察しが良い。と、言うより、やはりこの二人きりのタイミングは山之内が狙って作ったんだろう。ラコに返事をする様にと促して。
細かい話しは不要の様だ。
「言っとくけど、俺から改めて言ったんだからな」
「偉いじゃん」
褒められたくて言ったみたいだが……実際俺は褒められたかったらしい。山之内にそう言われてとても満足だ。
「……白ビキニ、良いじゃん」
「はっ?!」
満足した俺は何か褒め返さないと悪い様な気がしたのか、特に意を決して言ったわけではなくそう口をついた。
「ななななな何言ってんのよラコに言いなさいよ!!!!」
「ラコは白ビキニじゃないだろう」
「そうじゃなくって……!」
「分かってる! もう言わねぇよ!」
間違えたなと、すぐに自分で分かった。もう言わない。彼女が出来た直後に何を言ってんだ俺は。
「ラコ探して来るから、ややこしくなるしもうお前は動くなよ?」
「……うん……」
返事が遅かったせいか、ラコからの好意を確信していたせいか、思ったよりも俺は浮かれていないな。想像よりもってだけで、十分嬉しくてその辺の人にラコを彼女だと紹介しまくりたいくらいには浮かれているけど予想の範囲内だ。
……で、海の家のある方まで歩いたが見当たらなくて、キョロキョロと探しながらパラソルまで戻って行ったらラコは割と近くの砂浜に蹲ってた。




