白ビキニ
そして、俺達はそこそこの成績で期末試験をクリアし、計画通りに夏休みに突入。早々に海への計画を実行したのだった。山之内が本当に一発で期末試験をクリアするとは思っていなかったので、この計画に並々ならぬ想いがあったと伺える。
この街はローカル線で二時間もすれば海水浴場がある。山も川も、雰囲気の良い神社なんかもある。派手な遊園地やテーマパークはないが、そこそこの水族館はある。小遣いさえどうにか出来れば遊ぶ場所には困らない。
だけど去年は一応受験生だったし、海へ行くのは二年振りだ。電車の窓に海が見えて来る瞬間と言うのはインドア派の俺でもちょっと気分が上がる。
「わぁぁーー! 見えて来たぁぁー!!」
俺なんかよりよっぽど気分が上がってるのがいるがな。
「危ないよリンネ、みだりに電車の窓から手や顔を出さないで下さいって書いてあるよ」
「正面にしか出してないよ」
「みだりって右と左って意味じゃないよ」
「えっ! そうなの?」
「ぎゃははは! お前良く期末補習にならなかったな!」
「そんな事より俺はみだりを右と左だって勘違いしてるってすぐ気付いたラコに感動してる」
道中も賑やかに、俺達は白い砂浜に降り立った。
「じゃーあたし達は着替えて来るから、パラソルお願いねー」
ああ、なるほど、こう言う力仕事があるわけか。大輔が一緒で良かった。
俺達は海の家でパラソルをレンタルし、適当なところへ設置した。朝早く出たのでまだ人は少ない。まぁまぁの場所に立てられただろう。
「お待たせー」
設置した拠点を満足気に眺めていると二人が戻って来た。そうだ、ラコの水着姿が見れるのだっ!
はやる気持ちを抑えてゆっくり振り返るとそこには……眩しい白ビキニ! そこからスラリと伸びた足は……おいおいなんて事だ悪くない! 悪くないぞ! だけど……!
「何でお前が白ビキニなんだよっっ!!!」
「あたしがどんな水着選ぼうと自由でしょうがっ!」
「ぐぅっ……!」
確かにその通りだ。悪くないと思ってしまった自分が悔しいんだ。ラコの水着姿よりも正直上がってしまった。
もちろんラコの水着姿も眩しかった。落ち着いたブルーで、ビスチェビキニと言うらしいが、ブラの部分がウエスト辺りまである。で、下は同じ色のボーダーだ。物凄く可愛い! どう考えてもラコが優勝なのに、山之内の水着姿も分かりやすい魅力に溢れていた。今どきとか分からない男には分かりやすい白ビキニは暴力なのだ……。
「……リンネ、昔からすごくスタイル良いから、ちょっと恥ずかしい」
「はぁーっ?! 何言ってんのラコ! そんな豊満な乳しててさ! どんだけあたしにコンプレックス与えたと思ってるのっ!」
「太ってる様に見えるし……良い事ないよっ……」
「じゃー寄越せぇぇー!!!」
どうやらお互いにない物ねだりらしい。
「おい、これ、どっちを見たら良いんだ?」
「……分からん」
パラソルと一緒に遊べそうな物も借りて来た。デカめの浮き輪やビーチボール、ビーチフロートでぷかぷか浮かぶだけでも楽しそうだ。
「よっしゃ行くぞ」
青い空青い海青い水着に白ビキニ。俺達は夏を謳歌した。
何でもそつなくこなすラコだが球技だけはどう言うワケかセンスがゼロだ。運動神経は良いのでボールには追い付くが、その位置で何故? と言うくらい空振りしまくる。空振って恥ずかしそうにする顔や、ボールが顔面に直撃して情けないクシャ顔になるのも含め楽しい。
いつも怠そうな山之内の方が器用にボールを返せるが何せやる気が続かない。ちょっと遠くに飛ばすと「無理」と諦めて飛ばしたこちらのせいにされるので良いボールを返さないとと走らされる事になる。
しかし、山之内でなくとも、砂浜や波打ち際でそう運動を続けられる筈もなく、早々に浮き輪やビーチフロートに乗って波を揺蕩う。
来年も再来年もこんな夏で良い。そう思うくらいには楽しかった。
「大輔、約束の焼きそば奢ってあげるから行こ」
「忘れてなかったんだ!」
ちょっと休憩しようとパラソルに戻ると、山之内の言葉に大輔が尻尾を振って喜んだ。
「俺も腹減ったしみんなで行こうぜ」
「みんなの分も適当に買って来るから二人はここに居て!」
「え、自分で選……」
「ここに居て!」
久しぶりに見る山之内の例の眼光。この眼をする時は大抵ろくでもないのだが……。
ちらりとラコを見ると明らかに様子がおかしい。
俺は鈍感じゃないので分かる! これはいよいよ! あの時の返事が聞けるのではないだろうか!!
「ゴホンッ、そうか? じゃーよろしく頼む」
「お腹出たら恥ずかしいだろうから少なめにしとくね~」
そんなギャルの事情に付き合わされるのはたまったもんではないが今はどうでも良い。
「はい、お任せします。何でも良いです」




